各地域、同時代並行の世界史
人類の再会物語
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9.大きい国や小さい国があるのはなぜか

国際政治のニュースはわからないことだらけです。たとえば、国連総会ではインドとベルギーは同じ一国として数えられて一票しか投ずることはできません。

人口も面積も経済規模も異なる国が同じ一国とかぞえられるのはなぜなのでしょう。国家とは何なのでしょう。

国の決め方はヨーロッパではじまった

在の国際社会での国の決め方はヨーロッパではじまりました。それには歴史的背景があります。

ヨーロッパではキリスト教のもとにもう一度ローマ帝国を再建し、地中海や世界を取り戻すという「ローマ帝国再建物語」がありました。

この物語が16世紀、皇帝の地位にあったハプスブルク家によって実現しそうになりました。これに反対したのがイギリスとフランスとルター等の反教会勢力でした。この争いはヨーロッパ中をまきこんで約150年続きました。

そして、1648年ドイツのウェストファリアというところで、「ローマ帝国再建物語」を放棄することが決まりました。このとき国家を最高権力として相互に承認し合う国際社会の習慣が確立されました。

スイスとオランダの独立が承認されたのもこの時のことでした。

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国際法は三つある

片腕を懐にいれた坂本龍馬の像は有名です。あの懐にはピストルではなく万国法が入っているという話を聞いたことがありますが、世界貿易での活躍を夢見た坂本龍馬らしい逸話です。

あの万国法はヨーロッパ人がヨーロッパの秩序を維持するためにつくったものです。それをヨーロッパ人は世界の人びとに強制しました。

そのころの世界にはヨーロッパ国際法の他に少なくとも「東アジア国際法」と「イスラム国際法」がありました。

中国を中心に漢字文化によってつながった東アジア世界と、イスラム法の秩序が現在も生き続けている西アジアを中心とするイスラム社会ネットワークです。

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富国強兵と国際法

17世紀から19世紀にかけてヨーロッパでは国王たちが領土の奪い合いをくり返して、強い国づくりを目指していました。この争いの過程で小国の独立が承認されたり、諸地域が統合され大国が生まれたりしました。

これらは時々の力関係や強国の駆け引きによって決められていきました。このような歴史を経て確立されたヨーロッパ国際法が世界へとひろがっていったのです。

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砲艦外交と不平等条約

大航海時代、世界へ出ていったころのヨーロッパはキリスト教徒以外の国は対等とみなしていませんでした。世界中の人びとはキリスト教の布教の対象でした。

そのようなヨーロッパに門戸を閉ざした国々には大砲を積んだ軍艦を差し向け、開国を迫りました。開国を認めれば、非文明国を理由に不平等条約を結ばせ、不利な状態で国際社会に引き込んでいきました。

地域によってはヨーロッパの列強の力関係で勝手に国境線が引かれました。こうして世界はヨーロッパの「万国法」の秩序に位置づけられていきました。

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欧米諸国は中国とイスラムが苦手

中国人はいまでも中華思想にもとづく「東アジア世界の盟主」の意識を棄てていません。

中国政府も国際社会で優位な立場をとるためにヨーロッパの国際秩序を認めているふりをしていますが、中国の近隣諸国に対してはいまだに中華帝国の意識を持ち続けているかのようです。

イスラム諸国も「イスラム法」と「ヨーロッパ国際法」を巧みに使い分けて国際社会で主導権をとろうとしています。ですから、欧米諸国はこれらの伝統ある国々のダブル・スタンダードともいうべき二重腰に手を焼き続けています。

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ヨーロッパ共同体は新しい動き

自分たちがつくったヨーロッパ国際法を世界中に押しつけたヨーロッパがヨーロッパ共同体として国境を低くしようという動きを進めてきています。いまではヨーロッパの人びとは国境を越えて職場を見つけ、買い物に出かけています。

一方、ヨーロッパの秩序を押しつけられたアジアやアフリカでは、地域の歴史を無視して引かれた国境線によりさまざまな民族対立が起きています。近現代史の皮肉な現実です。

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経済と政治の枠組み

現在、世界の経済は地球規模で動いています。物も人も情報も個人レヴェルで世界中がつながっています。

このような状況で新しい問題も起きています。環境、資源、投機的な投資、核兵器の拡散、テロ。いずれも一国では対応できない問題ばかりです。

しかし、これらの問題に対応するため国際会議で新しいことが話し合われても、実行に移すときは国ごとに条約が批准されなければなりません。

経済の枠組みと政治の枠組みに大きなギャップが目立ってきています。しばらく政治と経済、国家と市場について考えてみます。

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