各地域、同時代並行の世界史
人類の再会物語
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7.信者の多い宗教と少ない宗教がなぜあるのか

世界宗教と言われる仏教やキリスト教やイスラム教は世界中で多くの人たちによって信仰されています。一方、特定の地域や少数の人々しか信仰しない宗教もあります。宗教によって信者の数がこのように異なっているのはなぜでしょう。世界宗教はどうして民族を超えて信仰されるようになったのでしょう

思想の巨人が続々現れた

前600年ごろよりユーラシア大陸の各地でさまざまな思想や宗教がつくられれはじめました。これらの思想はその後それぞれの地域で古典として伝えられ、現在にいたるまで大きな影響力をもち続けています。

中国では儒教や道教に発展していく諸思想、インドでは仏教などの宗教の原点となるインド哲学、西アジアではのちにキリスト教やイスラム教に大きな影響を与えたユダヤ教やゾロアスター教、ギリシアではギリシア哲学。これらの思想には大きな共通点がありました。

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神話的世界観の限界

それまで人びとはそれぞれの地域で伝えられてきた神話や呪術などにもとづいて自然界の現象や世の中の動きを説明していました。

前600世紀ころになると人びとは従来の伝統的な思想では納得しなくなりました。特に、商業が盛んになり地域をこえて人が交流するようになると、地域固有の古い宗教や思想では人びとは満足できなくなったのでした。神話的な世界観をこえる新し思想が求められていました。

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伝統社会の秩序の崩壊

この時代、ユーラシア大陸の各地では鉄器が普及し、各地で農業生産が盛んになりました。新しく土地を開墾する人びとも現れ、血縁関係を中心とした従来の社会秩序が急速に崩れつつありました。

家族の助け合いより実力を重んじる社会の風潮に危機感を感じた人びとからは、血縁関係を重視した伝統的な社会の秩序を記録し復活させたいという機運も生まれました。このようにして文字に記録されてこなかったこれまでの社会の人間関係のあり方が、思想として表現されるようになったのでした。

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鉄と馬の力

思想の巨人たちが各地で同じころに活躍した背景には、前1000年以後ユーラシア大陸の各地で急速に普及しはじめた製鉄技術の威力がありました。これにより生産力が増大し、大きな社会変動がはじまっていたのでした。

さらに中央アジアからは騎馬技術を開発した遊牧民族が台頭し、それまでにない規模の大きな集団が形成されるようになりました。情報も物も人も地域をこえて広く交流する時代がはじまっていました。

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新しい国家のかたち

交易の拠点となった都市には莫大な富が集中するようになりました。それをネットワークごと支配すれば巨大な権力がえられます。鉄と馬によって強力な軍隊をつくり地域をこえた帝国をめざす動きが各地に現れ、互いに覇権を争うようになりました。

このような時代に地中海と東アジアでは力をつけて台頭してきた新興の小農民を組織して強力な軍隊をつくあげ、それを古代帝国にまで成長させた勢力が現れます。ローマと漢です。この古代帝国は強力な軍事力で周辺地域を支配し古代文化が繁栄しました。

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大土地所有者の台頭

古代帝国には大きな矛盾がありました。帝国が大きくなればなるほど戦争が多くなりますが、古代帝国の強さを支えてきた中堅農民にはそれは負担になりました。戦争の財源も兵力も彼らが支えていたからです。

さらに、古代帝国が富めば財力を蓄え力をつける人びとも現れます。彼らは大土地所有者となって中堅農民の経営基盤を脅かしていきました。こうして古代帝国は自壊していきました。

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国家を超えた
信仰のかたち

古代帝国は世界史に二つの大きな影響を残しました。

一つは古代帝国の支配下にあった人びとに共通の文化が形成され、民族を超えた思想が生まれたことです。たとえばローマ帝国の支配に苦しむ人びとにキリスト教が広まったことはその典型的な例です。

もう一つは古代帝国の古代文化が周辺の諸民族にもひろがり、ユーラシア大陸の東西に巨大な文化圏が形成されたことです。

このようにして、古代都市文明は民族を超えた古代文化として発展していきました。やがて世界に普及することになる宗教も古代文化の一部として広まっていったのでした。

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