各地域、同時代並行の世界史
人類の再会物語
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4.鯨を食べるのがなぜ残酷なのか

鯨を食べる食習慣をひどく嫌う人たちが、日本などが行う捕鯨を非難し続けています。現在は資源の保護を理由に捕鯨が禁止されています。しかし、調査のための捕鯨すら「残酷」とされて廃止が主張されています。

牛を食べ、食用のウサギやサルの脳が市場にならぶ世界各地の食習慣は残酷ではないのでしょうか。このことをどう考えたらいいのでしょう。そもそも、文化の違いの原因である人種、民族などの違いはどのようにできたのでしょう。

メラニン色素が肌の色を決める

人種は肌の色など身体的な特徴でわかります。日照の強いアフリカで進化をとげた人類は肌の下に黒いメラニン色素を増やし、紫外線により組織が破壊されることを防いでいました。

しかし、アフリカから緯度の高い北方に移住した人びとにはこれは大きな問題となりました。北の地ではただでも不足しがちな太陽光線がメラニン色素によってカットされてしまうのです。

カルシウムの吸収を助けるビタミンDは日光をあびることによってつくられます。そのため長い自然淘汰の過程でメラニン色素の厚さが調節され、高緯度地帯では白色、中緯度地帯の黄色、低緯度地帯の黒色と肌の色の異なる人種が形成されました。

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地域により生き方や言葉が違う

同じアジア人でも顔立ちの違いで何となく異なる人びとだとわかるグループがあります。たとえば日本人には朝鮮人や中国人とは区別がつかない人が多くいますが、タイやミャンマーなどの人とは識別しやすくなります。彼らは日本人とは異なったグループだとはっきりわかります。

これらのグループは語彙に共通の部分を多くもつことから語族などと分類されています。語族で表される集団は基本語彙を共通にすることから、人種が形成されたのち、人びとがさらに小地域に分かれ住んでそれぞれの地域の生活文化を確立する以前に形成されたものだと考えられます。

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絶滅した大型動物

人類がアフリカから全世界に広がっていく過程で、最後の氷河期がおとづれました。人類は世界各地でこの氷河期をのりこえました。環境の変化に十分適応するだけの文化をすでに整えていたのです。

最後の氷河期が終わりをむかえ、地球は温暖な気候の時代に向いはじめました。マンモスなどの大型動物が各地で絶滅したのはちょうどそのころでした。

それが温暖化のためなのか、優れた文化を手に入れた人類が食べ尽くしたのか、原因ははっきりしていませんが、時代ははっきり新しい局面にはいっていきました。

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5000年続いた温暖な時代

1万年前ころから世界は温暖な時代に入りました。氷が融けて海水面が上昇し、世界各地は互いに孤立していきました。そのためそれぞれの土地の自然環境を活かした生活文化が発達し、自然に関する人びとの知識も増えていきました。

野生の植物を品種の改良をして農耕をはじめた地域、魚や木の実に恵まれた地域、家畜を飼って穀物の実りの不足を補った地域。優れた生活文化が生みだされれば生みだされるほど、人びとは土地に根づいていきました。こうして人びとの居住する範囲も広がり、民族の原形となる集団が形成されていきました。

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寒冷化の時代がはじまった

5000年前ころから今度は気候は寒冷化の傾向を示しはじめました。現在は環境汚染による温暖化が問題になっていますが、5000年前から地球の気候は寒冷化の傾向にあります。短い温暖な時代を何度かはさみながら、寒冷化の波が何度も襲いました。

温暖な時代には人びとの居住範囲は広がりますが、寒くなれば各地で乾燥化もすすみ、人びとは活路を求めて低地へ、南へと移動します。この過程で生活文化が異なった人びとが接触し、さまざまな歴史が展開されました。世界史は移動する人類の旅の歴史でもあります。

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文明は異なる人びとの交流センター

異質な人びとが出会うとき、そこには支配−被支配の関係が生じたり、新しい文化が伝わったりします。それらの交流は戦争であったり、都市での交易であったりします。

こうして生まれた都市を中心に文明が栄え文明圏が形成されました。やがてそこに新しい文化がつくられ、異質の文化は日常的に交流するようになり、その範囲も広がりました。文化圏が形成されました。

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文化圏を支えた宗教の役割

この過程で宗教が重要なはたらきをしました。人種や民族の違いを超えて普及した宗教ですから、その教えや世界観は堅固なものとなりました。文化圏が広がり、それを支える人びとが多くなればなるほど、その文化圏の世界観は永遠不変なものとみなされがちでした。

文化圏をこえて人びとが個人レヴェルで交流するようになった現在では、文化の違いは時として深刻な対立や問題を生じさせています。たとえばフランスの学校ではイスラム教徒の女子生徒がスカーフを校内で着用することが禁じられ、問題になっています。世界史はいま新しい段階に入りつつあると言っていいでしょう。

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