各地域、同時代並行の世界史
人類の再会物語
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15.地球温暖化の問題で世界は協力できるか

地球温暖化をめぐる環境問題の対策は政治と経済の連立方程式を解かなければ解決しない問題のようです。

先進国は経済成長の結果生じた地球温暖化の対策を国際的な協力によって実現しようとしますが、途上国は原因をつくった国の責任だとして、自国の経済成長を優先させます。

この対立には政治と経済という対立が環境問題というかたちをとって現れています。このことを考えてみます。

ふたつの立場

世界には、北と南という地理的な立地と先進国と途上国という歴史的立場があります。

世界の国々はそれぞれこの立場の違いを背負って地球温暖化をめぐる国際会議に出席しています。

このふたつの立場の違いを埋めるストーリーがみつからなければ、地球温暖化の問題は解けません。それはどのように可能なのでしょう。キーワードは何でしょう。

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北と南の立場

南と北の立場の違いは、人類がアフリカから世界へとひろがり、それぞれの地域に適応した地域文化を形成する過程で形成されました。

赤道に近い地域では雨が多く農業に適した土壌には恵まれませんでした。また、乾燥した草原に適した馬の飼育もなく、地域間の交流の少ない地域では鉄器の普及もみられませんでした。

このような立地条件の違いから、アフリカ大陸やアメリカ大陸ではユーラシア大陸とは異なった歴史が展開されました。

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交流センターとしての文明

南の地域とは異なった北のユーラシア大陸では地域間の交流も盛んで、多様な文明が生まれました。

栽培植物に恵まれた地域では人口も多く、馬や鉄など生産力を支える技術も発達して複雑な社会組織が形成されました。

また、東西に幅広く、中央に走るヒマラヤ山脈によって多様な風土をもつ地域が古代文化の地をセンターとして互いに文化を交流させ、地域間の交流も盛んにおこなわれ、交流の範囲も広がっていきました。

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世界史は人類の再会物語

このように世界史はアフリカから世界にひろがっていった人類の再会物語として考えることができます。

そしていまから約500年前から世界中が互いにつながり、人類の再会物語はその最終章に入りかけていました。

しかし、ヨーロッパの文明を主人公とする人類の再会物語の最終章には、略奪と強制のエピソードが充ち満ちていました。

その過程で富がヨーロッパの一部の人びとに集中するようになり、そこから身分的な制約から解放され自由な生き方を可能にする近代社会のシステムが生まれてきたのです。

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繁栄は地域間の相互関係から生まれた

国民国家と市場経済という双子の兄弟のような近代社会のシステムは、またたく間に世界中を呑みこんでいきました。

その過程で、北と南の立場の違いが巧みに利用され、南は北の繁栄の犠牲になっていきました。

世界史の初期に生まれた南と北の立場は途上国と先進国という歴史的な立場となって私たちの前にふたたび現れたのです。そしていま人類は地球温暖化という難問を突きつけられているのです。

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三つの立場

途上国という言葉には「いまだに先進国になれない国」というニュアンスがあります。そこには「すべての国は先進国になる、すべての文化は近代国家をめざして経済成長しなければならない」ということが前提にされています。

しかし、「近代化」は歴史の変化を理解するための概念であり、人の生き方や価値観を表す言葉ではありません。

したがって、世界には先進地域と途上地域とさらに近代社会を望まない地域の三つの概念がなければなりません。

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立場の違いは give and take から

先進国は途上国をつくり出すことにより成立しました。先進国と途上国の関係は相互的な関係にあります。

ですから、先進国は地球温暖化の対策の技術的な支援と経済的な援助を途上国に贈与するしかありません。

世界史をふりかえればそれは当然の結論です。北が寒冷化の時代には多くの人びとは南へ移動しました。

厳しい自然環境の北に豊かな物産を提供したのも南でした。人類は歴史において相互依存、相互扶助の関係にあったのです。

この当然の結論が世界の人びとに浸透しないのは、私たちが国家という枠組みでしか世界を見ることができないためです。

それは人を精神と肉体を分けるように、世界を政治と経済を分けて考える固定観念のためです。いま、ありのままに世界を見ることが求められています。

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