各地域、同時代並行の世界史
人類の再会物語
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14.だれが政治家になっても同じことか

多くの先進国で政治的無関心がひろがっています。「だれが政治家になっても変わらない」といったあきらめのようなムードです。

大衆のこの意識が政治的なスキとなって独裁者を生みかねないという危惧の声もあります。

また一方で、政治的な関心が高い社会がよい社会なのかという問題提起もあります。このような政治的無関心の潮流にはどのような歴史的背景があるのでしょう。

少ない選択肢

現代の政治には選択肢はそれほど多くありうません。世界恐慌以来、先進国では「市場の自由な競争により経済は発展する」という19世紀からの考え方の限界が明らかになり、政府には絶えざる投資によって需要を掘り起こすこと求められるようになりました。

そのための手段としてふたつの政策が考えられました。一つは公共事業を発注して企業に投資し、その結果社会全体の購買力を大きくする方法。

もう一つは大衆の生活を援助して購買力を高め、その結果企業の投資が増やすという方法です。

第二次世界大戦、米ソの冷戦と戦争が続いたので、軍需生産のため企業優先の政策が多くとられました。

だれが政治家になっても変わらないという意識にはこのような歴史的背景があります。

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高度消費社会の出現

米ソの冷戦が長く続いた間に、科学技術に飛躍的な発展がありました。西側の国々ではこれにより経済成長がつづき、国民の生活水準が大きく向上しました。

この結果、西側の国々では産業構造が大きく変化し、サービス業を中心とする第三次産業が主要産業となりました。

もはや製造業を中心とする第二次産業より、第三次産業を活性化するために大衆の購買力を増やした方が、経済政策としては効果があることが明らかになってきました。こうして西側の先進国では高度消費社会が実現したのでした。

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冷戦後の世界の変化

西側のこのような状況は東側の国々にも伝わり、米ソの冷戦の結果はだれの眼にも明らかになりました。やがて東側の政治体制は崩壊し、広大な市場が出現しました。

東側の国々では経済は衰退していましたが、水準の高い労働力は豊富で投資市場としての潜在的な価値は十分ありました。

また、これまでの経済成長を支えてきた軍事部門の需要が減ると資本は過剰気味になり、少しでも利潤が多い投資先をもとめて世界中をかけ回るようになりました。

インターネットをはじめとするインフォメーション・テクノロジーの進歩がこの動きに拍車をかけました。

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無力化する政治

西側の政治は一方的に勝ち続けたように映りますがそこには大きな落とし穴がありました。

政府の公共的な投資によって経済は成長しましたが、そのために財政赤字が累積し、その額は限界に達しつつあります。

また、国境を超えて投資される過剰資金はどの国の管理を受けることなく世界中をかけめぐり、投機により石油や食糧が高騰する事態になりました。

このような事態で政治はますます無力化する傾向が明らかになってきました。

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グローバリゼーション

財政赤字に苦しむ先進国では、財政により経済成長をささえるこれまでの政策を見直し、経済は市場の自由な競争にゆだねた方が効率的であるとする考えが、ふたたび支持を集めるようになりました。

このような潮流により1980年代以後規制が緩和され、公共事業の縮小が進められ、市場の競争による社会の効率的な成長が求められるようになりました。

その典型が携帯電話の普及に象徴される電信電話事業の民営化政策です。

この動きは、冷戦の終結、インフォメーション・テクノロジーの発展などの動きと一体になって、先進国では経済的な格差が拡大する現象を引きおこしました。

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問われる政治と経済の関係

市場の自由な競争によって効率的な投資をうながして豊かな社会を実現するのか、政治によって経済活動を制限してでも安定した国民生活を保障する道を選ぶのか、政治と経済の関係が現在問い直されています。

しかし、この問はあれかこれかの選択の問題ではありません。問われているのは問の前提です。

なぜ政治と経済が対立的に問われているのかということです。

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