各地域、同時代並行の世界史
人類の再会物語
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11.大量生産で安くすると、全部が売れるのか

多く生産すれば単価が安くなり儲けは多くなります。単純な計算ですが、実際には大量生産すれば在庫が増えて損をするのではないでしょうか。

資本主義経済には頭で考える以上に複雑な仕組みが隠されているような気がします。産業革命期のイギリスを例に考えてみます 。

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資本主義経済のパッケージ

資本主義社会は一つのパッケージとして動いています。一連の流れが動き出すにはまず資本が必要です。土地なども含みますがだいたいお金です。

この資金で生産設備や原料を準備し、従業員を採用し、いよいよ生産活動がはじまります。

生産物は市場に出荷され、売上代金は出資者に配当されたり、貯蓄されたり、ふたたび生産に投資されたりします。

これらのどのステップに支障がでても一連の流れはストップしてしてしまいますから、一企業をこえた社会的な管理が必要になります。

実際イギリスではどのようにしてこれらの条件が整えられたのでしょう。順番にみていきます。

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はじめの資本はどうしたか

まず資本です。イギリスのビジネス熱には長い歴史背景があります。北海に面しながらメキシコ湾からの暖流にさらされたイギリスは、雨も多く柔らかい牧草に恵まれ、早くから羊毛の産地でした。

そのためイギリスの農村には早い段階でお金が流れ込んできました。

大航海時代では毛織物がヨーロッパの貴重な輸出品でしたから、イギリスには資金が調達しやすい環境が早くからありました。

こうした資金を集めて遠洋航海にでるビジネスも盛んになりました。さらにイギリスは奴隷貿易でも巨利をえることになりました。

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原料はどこからもってきたか

17世紀から18世紀にかけてイギリスはライバルのスペイン、オランダ、フランスを幾度もの戦争でやぶり、インド洋や大西洋での制海権を着実に確立していきました。

1763年の条約でインドや北米での利権をえたイギリスは、容易にインドから綿花を調達したり、アメリカの農場で栽培された綿花を買うことができる環境を整えていきました。

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労働者はどこにいたか

労働者はどうしたのでしょうか。16世紀から17世紀にかけてイギリスでは農場を囲い込んで、牧羊地に換える囲い込み運動が盛んに行われました。

18世紀には生産性の高い新しい農法を取り入れるために囲い込みが進められました。

その結果、農村から土地を奪われた農民が農村で労働者になったり、都市にながれて浮浪者になったりしました。やがて彼らが産業革命を支える労働者になっていきました。

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工場はどうしてたてられたか

牧羊が盛んになると農村にも工場がつくられました。それまでは自宅で副業として手仕事をしていた農民たちが工場に集められ、分業で生産活動をするようになりました。

この工場制手工業(マニュファクチュアー)に機械や蒸気機関が取り入れられて産業革命が始まりました。

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機械はどうして導入されたか

インドから輸入された綿織物は人気商品となり伝統の毛織物産業を圧迫しました。そのため、毛織物業者は議会を動かしてインドの綿布の輸入を禁止します。

これに対してアメリカの農場で生産された綿花を輸入し、イギリス製の綿織物がつくられるようになりました。不足する綿布を生産するため織機が改良されました。

今度は原料の綿糸が不足し紡績機が改良されました。さらに動力が水力から蒸気機関に換わり、機械による生産が本格的に始まりました。

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生産された綿織物は
だれが買ったか

そもそも産業革命は綿布の品不足からおきましたから、イギリスにもヨーロッパにも需要は十分ありました。

しかし、機械化により増産されるようになると、新しい市場が必要になりました。

インドの植民地化を進めていたイギリスはインドの農村の綿織物産業を破壊し、インドはイギリスの綿織物の輸入国になっていきました。

このころのからイギリスは中国にも日本にも貿易を求めるようになりました。「世界の工場」と呼ばれたイギリスがロンドンで第一回万国博覧会を開催した1951年ころのことです。

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儲かったお金はどうしたか

イギリスでは18世紀には議会政治が始まっていました。それを推進したのは農場経営で資力を付けつつあった地主階級でした。

国王も議会を無視して課税することができなくなっていたイギリスでは、財産権が守られていましたから外国からも資金が集まり、投資がさかんに行われていました。

この資金でイギリスの産業は急速に成長していきました。

このように資本主義経済のためのパッケージがすべてそろった希有な条件で資本主義経済がはじまり、ガンのようにイギリスから世界にひろがっていきました。

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