V:「生きづらさ」について
女と男と家族と物語
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(25) エロいってどんなことですか

「好きだ」とか「美形」だとかいう他に「エロい」という感性も確実に私たちをつき強く動かす要素です。「エロい」ってどんなことなのでしょう。

恋人以外にの人に惹かれる魅力

互いに親しくなり、相手の人柄を分かるようになった二人なのに、他の「美形」の人に魅力を感じてしまうのはなぜでしょう。

知り合った頃は手が触れただけでも興奮したのに、結婚して何年もすると何も感じなくなるのは何故でしょう。

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生殖・家族・表現・エロス

生物が本来持つ生殖活動としての「自然の性」、それが家族という形に「制度化された性」、生殖から切り離された「表現としての性」、特定の人間関係や身体から抽象化された「イメージとしての性」。

人間の「性」は自然から離れて、抽象的なものへと発展してきました。「イメージとしての性」とはどんなものなのでしょう。

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会ったこともない人の魅力とは

話に聞いただけ、遠くから見ただけ、レコードで聞いただけ、テレビで見ただけ、そんな人をどうしようもなく好きになってしまうことがあるのは何故でしょう。それは具体的な人物を対象とする「好き」という感情とどうのように違うのでしょう。

その違いは明瞭です。未知の存在は「白紙の画用紙」だからです。その人について何も知らない多くの人にっとって、勝手に物語を描く余地が残されているからです。

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エロティシズムは社会が生み出す

誰もがそれに感じる性的な魅力とはエロティシズムのことです。多くの人にとって魅力的な存在だと信じられている異性を秘かに自分の性的な対象として意識した時、興奮を禁じ得なくなります。

それは高価な物ならありがたいと感じてしまう心理に共通する危うい心の状態です。「性」の問題が扱いにくいのはそのためでもあるのです。

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商品の使用価値と交換価値

優れたデザインの靴が目の前にあったとします。履き心地がよく、人の目をひく靴を履いて歩けばどんなに快適か、これは商品の使用価値です。商品の色や形・材質など具体的なことがらが関心の対象になります。この靴の値段はいくらか、人気があるだろうか、ここでは商品の交換価値が関心の対象になっています。

使用とか交換とかの表現はなじまないかもしれませんが、この商品の二面性は「性」にも言えないでしょうか。

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具体的な異性と抽象的な異性

知り合い親しくなった異性、結婚して生活を共にする配偶者、これらは具体的な異性です。

ドラマの中の俳優、みんなの憧れの的の「美形」の人物、これは抽象的な異性です。

抽象的な存在であるはずの俳優や「美形」の人物が、あたかも現実的な性的対象かのような感覚にともなって現れるとき、私たちはそれにエロティシズムを感じています。知り合ったばかりの異性にも同じような感覚を覚えます。

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エロティシズムは花火

人びとの憧れの的、どうせ手に入らない「高嶺の花」、これらは多くの人びとにはあたかも禁じられた存在に等しい印象を与えますから、より一層憧れは強くなります。

しかし、万が一それが自分にとって現実的な存在になったとき、おそらく憧れの人はただの男や女に過ぎなくなることでしょう。それは昼間の花火のようなものです。花火は夜空に限ります。

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エロティシズムの誘惑は人間の宿命

発情期を失い、生殖以外の理由で性行動をするようになった人類にとって、「性」は文化になりました。そのため、抽象的な性欲を持つようになりました。ここにエロティシズムの世界が成立しています。そう考えると、エロティシズムの誘惑に苦しむのは人間の宿命と言うことができます。問題はそれとのつきあい方です。


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