Beyond the Border from Here 展 <1>


左:ギャラリー木葉下エントランス   右:子供達のワークショップでの作品

 4月頃、ギャラリー木葉下のオーナー・ローマス孝美さんから電話がかかって き た。
「浅房山を中心にしたグループ展をやるんだけど参加しませんか?」
何でも、私がローマスさんに贈った神山アーティストインレジデンスの報告書を見て開催を決意したのだそうだ。
二つ返事で「OK!」

 4月30日に展覧会に関するシンポジウム「無形の美」を開くので参加してくださいとのこと。
シンポジウムは小泉先生(茨城大)志田先生(日立郷土博物館館長)などのレクチャーがあり、参加作家と地元の方達との顔合わせ会も兼ねているようだった。 地元の農家の方は、「ギャラリーの前の谷が産廃で埋め立てられ、谷の下の方ではダイオキシンがでている疑いがある・・・その水は櫻川を通って千波湖 へ・・・」といったことを熱く語っていた。
 ギャラリーの前を通り、浅房山まで続く道は、その昔征夷大将軍・坂上田村麻呂が通った古道で、周辺からは縄文土器がザックザック出てくるような歴史のあ る場所なのに、本当に嘆かわしいことだ。ローマスさんはそんな土地に眼を向けてもらう意味も込めて、この展覧会を企画したようだ。
 シンポジウムの後はバーベキューで腹ごしらえ。当然酒がすすむ・・・その後、みんなで浅房山に登り、展示場所などを確認。山頂で酒を飲みかなりいい気 分。さらに戻ってきて酒を飲み、けっきょくその日は帰れずギャラリーに泊まり、翌早朝東京へ帰ってきた。
10 月1日
今回の展覧会には、ギャラリー内に絵画、 書、写真を展示し、ギャラリー周辺から浅房山までの野外に彫刻やインスタレーションが展示される。
私は絵画3点と「野ざらし」の木葉下バージョンを展示することにした。今日は「野ざらし」の制作 だ。今回の「野ざらし」は、ギャラリーから浅房山山頂まで歩き、その足跡にカイワレの種を蒔く。というもの だ。
 前日からギャラリーに泊まり込み、日の出とともに起き制作開始。
予想通り、途中の道は草ぼうぼうで制作にならない。鳥居から山頂までの参道を先に制作することにした。
参道はかなりの急斜面、石段は鳥居の下にしか ない・・・石段の下あたりから、足跡を付け種まき開始。雨で流れないように周りの土を少しかけてやる。堅くて足跡が付かないところは鎌で足跡を掘り種を蒔 く。一歩一歩種を蒔きながら進んで行く。これは思ったより重労働だ・・・水の流れ跡がある道の中心部分は種が流されてしまいそうなので避け、やや脇を ずーっと上っていく。腰袋に入れた種がなくなると、鳥居のところへ戻って一休み。また上っては一休み。曲げっぱなしの腰が張る。これが本当にたったの60 メートルなのだろうか?ミレーの「種を蒔く人」が幻のように脳裏をよぎる・・・やっと山頂にたどり着いたのは12時近く。山頂ではローマスさん達がオープ ニングの山頂ライブの準備をしていた。最後に山頂のほこらの後ろに倒れ込み、人型をつけ種を蒔いた。しばらく口もききたくないほど疲れた。14時からは ギャラリーで展示の打ち合わせがあるので下山。今日はもう何もしたくない・・・というよりできない。ギャラリーからの道は仕事が休みの3日に行うことにし た。

←鳥居のすぐ下に心ない人がゴ ミを捨ててい く。
ギャラリーから土を台車で持ってきたのだが、このゴミの近くに台車を置 いておいたら、土の袋はそのままに台車だけ盗まれてしまった。まったく神の面前でひ どいことをする人がいるものだ。この罰当たりめ!

10 月3日
 一昨日の筋肉痛が残るなか、東京から車を飛ばし、朝8時ぐらいにギャラリーに着く。ETCを付けたので高速が通勤割引で安くなり快適だ。(民主党が政権 取ったらただにするそうだが・・・)
 ギャラリーに着くとローマス孝美さんはお疲れのようで、旦那さんのジョンさんがコーヒーを入れてくれた。早速種と土をリュックに詰め制作へ出発。
 一昨日よりは草も刈られ歩きやすくなって いる。軽トラの轍の間、道の真ん中に草が生えていて、所々草がとぎれている。草の上は蒔いてもしょうがない。草のとぎれたところに足形を付け種を蒔く。そうすると山頂まで緑のラインがつながったようにな らないか?ということで草のないところを重点的に仕事を進める。道の真ん中なら軽トラに踏まれることも少ないだろう。砂利などで堅いところ は鎌も利かず、足跡の付かないところもある。かと思うとぬかるんでいるところもある。概して湿気の多いところはヤブ蚊がすごい。一昨日の反省から虫除けス プレーを持参したのだが、汗で流れてしまうのかあまり効き目がない。終始蚊との格闘である。しばらく進んで行くと道脇の藪の中からゴソゴソと大きな黒いイ ノシシが出てきた。のそのそと私の前を歩き、リュックからカメラを取り出そうとしている間にまた藪の中へ消えていった。
 3、4歩進んでは足形に種を蒔く。とりあえず鳥居のところまで種を蒔き終わり、上から土をかぶせながら山を下りる。完成してギャラリーに戻ってきたのは 午後5時頃。充実感でいっぱいである。よくやったと自分でも思う。たぶん10年後こんな仕事はできないだろうなあ・・・
 後は芽が出てくれることを祈るのみである。


10 月6日
 絵画の搬入、展示。作品は3点。この夏、新しく借りたアトリエで制作した新作2点(150号ぐらい)と、4年前の木葉下での個展に展示した作品1点 (300号)。旧作を共同で借りている上九一色村の倉庫に取りに行かなければならない。朝4時に起きて、ニッポンレンタカーでトラックを借り。まずアトリ エの作品を積み込み、中央高速で上九一色へ向かう。しとしとと雨が降っている。何かいやな予感・・・慎重に車を運転する。
 朝7時ぐらいに倉庫に到着。入り口近くに車を寄せ、絵を積み込む。ここまでは順調だ。さあ水戸インターまで行くぞ!とエンジンをふかすが車が前に出な い・・・何が起こったか分からない・・・車周りをのぞいてみると、左の後輪が土に埋まって空回りしている・・・唖然・・・タイヤの前を掘ってみたり、板を つっこんでみたり悪戦苦闘するがどうにもならない。あたりには人っ子一人いない。ニッポンレンタカーに連絡し、牽引してもらうことになる。1時間ほどして 牽引する4WD車と作業員が到着。ロープでつなぎ引っ張るとあっけなく脱出した。これは保険の対象外だそうで料金19000円也。(い、痛い・・・)
 気を取り直して、木葉下へ向けて出発。途中自分がドロドロなのに気がつき、道の駅で着替えた。雨具を着ていて助かった。
 
 中央高速から首都高速、常磐道と乗り継ぎ、3時間半ぐらいでギャラリーに到着。一服してから展示作業に取りかかる。作業は簡単だ。ギャラリーの柱にフッ クとなる木片を木ねじで固定し絵を掛けるだけだ。小1時間ほどで作業は終了した。

 作業後、ちょっとカイワレを見に行った。今朝までの雨のおかげか、しっかり芽を出していた。上から下りてきたローマスさん達が「上の方もきれいに生えて いた」とのことで一安心。オープニングが楽しみだ。
beyond<2>→

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