セントアイヴス 
 & ペンザンス
こぼれ話

セントアイヴス その1:こうして私は、Bay Viewにたどり着いた
  4度目のイギリス旅行のとき、ペンザンスとセントアイヴスに行ってみようと思った。ロンドンから5時間半。ひとり旅でもあり、宿は、事前に予約しておきたい。でも、頼みの綱の「地球の歩き方」には推薦宿のリストがない。そこで、「マザーグースころんだ〜ヨーロッパイラスト紀行Bロンドンとイギリスの田舎町の著者たちが泊まったという、ペンザンスのBay Viewというゲストハウスに当たってみることにした。電話番号の記載がなかったので、ロンドンに着いてから、まずヴィクトリアにあるtourist informationで電話番号案内の番号を聞き、そこに電話をかけて、Bay Viewの番号を教えてもらった。「Bay Viewです」「あの、予約したいんですけど、シャワー付きのシングルルームは空いていますか?」「悪いけど、うちはダブルルームしかないのよ」。ここをのがしたら、宿の当てがない、と思った私は、「ダブルルームはいくらですか?」と聞いてみた。「26ポンドよ」「じゃぁ、ダブルの料金を払いますから、泊めてもらえませんか?」。すると、しばしの沈黙ののち、「いいわ。13ポンドで泊めてあげる」という答えが返ってきたのである。やったー!! たぶん、春で、シーズンオフだったからであろう。
 そして、2泊分の予約をして、どうやって行けばいいのかを尋ねた。「あなたはロンドンにいるのね? じゃぁ、St. Erthで電車を乗り換えて」「え? 乗り換えって、そこはペンザンスでしょ?」「いいえ。うちはセントアイヴスよ」「本当ですか? 私は、ペンザンスのBay Viewを予約するつもりだったんです」「じゃぁ、どうするの? やめる?」「うーん。ちょっと考えてみます」。
 いったん、電話を切ってから、慌てて、さっきの電話番号案内にかけ直した。そして、「ペンザンスにあるBay Viewの番号を教えてほしいんですけど」と尋ねると、ものすごい早口で答えが返ってきた。書き取ることができなかったので、「すみませんが、もっとゆっくり言ってもらえませんか?」と頼むと、電話の主は、「あなたはさっきも電話してきたでしょ?」と言う。「えぇ、そうです。でも、さっきのはセントアイヴスにあるBay Viewだったんです。私が知りたいのはペンザンスのBay Viewなんですけど」「あの地方に、Bay Viewっていうのはあそこしかないよ」「ほんと?」「うん」。ということは、ゲストハウスをやめちゃったのかなぁ・・? それとも、電話がないのかしら? いずれにせよ、ロンドンにいながらにして、ペンザンスにあるBay Viewに予約を入れるのは無理そうだった。交通の便を考えて、宿はペンザンスに、と思ったけど、セントアイヴスのほうが美しい町のようだし、さっきの所にお願いしようかなぁ・・。こうして、私は、ペンザンスではなく、セントアイヴスのBay Viewに泊まることになったのであった。
(写真は、Bay Viewのリビング。窓からはセントアイヴスの海が見える)

セントアイヴス その2:はじめてのストライキに遭遇
  当初、セントアイヴスには2泊のつもりでいた。ところが、2日目の朝、朝食を食べにダイニングに降りていってみると、B&Bのオーナーのルーシーさんが開口一番にこう言った。「あなた。明日、帰るって言ってたけど、無理みたいよ。明日はストライキがあるから電車は動かないわよ。だから、今日帰るか、あさって帰るか、決めてちょうだいね」。えぇー、本当?! すっかり私はパニクってしまった。昨日の午後、着いたばかりでほとんど観光なぞしていない。ペンザンスは見てないし、セント・マイケルズ・マウントにも行っていない。3泊するしかないかー、といったんは思ったものの、すでに、あさってのケンブリッジ行きのバスのチケットを買っていたのを思い出した。キャンセルできないだろうなぁ・・。それに、明日の晩から、ロンドンのB&Bも予約入れちゃってるしなー。そこで、下に降りていって、「やはり、今日、帰ることにします」と告げると、ルーシーさんが、「あら、だって、全然、観光していないんじゃないの? それでいいわけ?」と突っ込んできた。このルーシーさん、たばこはスパスパ吸うし、口調もつっけんどんで、けっこう凄みがあるのだった。「そうですよねぇ・・。あはは・・。やっぱ3泊することにします」。すると、ルーシーさんは、「でしょ? セントアイヴスの町を1日で見て帰ろうなんて、そんなこと、できるわけないわ・・」とでも言っているような、満足げな微笑を浮かべたのであった。
 まずはロンドンのB&Bにキャンセルの電話を入れ、ダメもとで、駅前にあった観光案内所で、あさってのコーチのチケットを振り替えてもらえるかどうか聞いてみたところ、できますよ、とのこと。1.50ポンド、手数料をとられたけど、12.50ポンドのチケットが無駄にならずにホッ。B&Bのキャンセルやら、電車とバスのチケットの振り替えやらで、てんてこまいで、結局、2日目は、セント・マイケルズ・マウントにもランズエンドにも行けず仕舞い。でもさ、こういう経験をすると、だんだん、なんとかなるさーって気分になってくるから不思議なものです。 
 そして、4日目の朝は、1日、予定が延びたこともあって、朝早くにロンドンに出発することにした。どうやら朝食は食べていけそうなかったので、ルーシーさんに、「明日は朝早いので、朝食はいりません」と言ったところ、無愛想に、「で、何時に発つの?」と聞いてきた。ちょっとビビリながら、時間を伝えた私だったが、翌朝、ルーシーさんは、早朝だったにもかかわらず早起きをしてくれて、朝食をつくってくれたのだった。ありがとー!! そして、小雨が降っているからと、だんなさまに駅まで送ってくれるようにと頼んでくれた。ルーシーさん、凄みがあるだなんて、思ってしまってすみません。本当は、とっても優しい方だったんですねぇ・・。
 ちなみに、イギリスの電車は、日によって、時間帯によって、値段がかなり違う。ストライキがあったおかげで、私は、金曜日ではなく土曜日にロンドンに戻ることになったので、セントアイヴスの駅員さんが、「土曜日戻りなら、料金が安くなるから、パディントンに戻ったら、お金を戻してもらいなさい」、と、アドバイスしてくれた。ちょっとラッキー! 現金で返してくれるのかと思いきや、パディントンに着いて聞いてみると、差額は、1か月後ぐらいに指定した住所宛てに送付してくれるのだという。「でも、私、日本に住んでいるんですけど・・」「大丈夫。その代わり、インターナショナル・マネーになるけどね」。このときの差額は6ポンド。結局、忘れたころになって小切手が送られてきたのはいいが、日本で換金するとなると、ほとんど手数料でもっていかれてしまった。戻ってきたのは500円ぐらいだったかな・・。でも、イギリスの駅員さんが律儀で正直者であることは、しっかりと私の記憶に残ったのである。

セントアイヴス その3:コインランドリーで出会った男の子
 初めてセントアイヴスを旅したときは、約3週間のイギリスひとり旅。まさか、3週間分の下着を持ち歩くわけにはいかないので、コインランドリーを利用することにした。洗濯が終わるのを待ちながら、本を読んでいたところ、思いもかけず、隣から、たどたどしい口調で話しかけられた。「ね、何を読んでいるの?」。見ると、乳母車に乗った、とってもかわいい男の子がいる。「マミーはお洗濯をしてるんだ」。そして、「知らないだろうけど・・」と自慢げに、お尻の下に手を入れて、「ここに僕の車があるんだよ」と言いながら、赤いミニカーを取り出した。いやぁ、もう、あまりにかわいかったもんで、お母様にお願いして、写真を撮らせていただきました。ね、ね、かわいいでしょ? 
 かれこれ10年ぐらい前のことだから、彼も今は、かっこいいティーンエイジャーになっていることでしょう。あっ、万が一、このサイトでこの写真をみつけたとしても、肖像権の侵害だぁ、なんて、言わないでちょうだいねー。

ペンザンス:「文房具なら、W.H.スミスのとこに行くといい」
 初めてひとり旅をしたとき、撮った写真をすぐ絵葉書サイズに焼いては挿入式アルバムに整理していた。忘れないうちに、コメントを書き込みたいと思い立ち、油性マジックを買おうと思ったが、はてさて、文房具屋さんはどこにあるのか・・? そこで、道を歩いていたおじさんに、「文房具はどこで買えますか?」と聞いてみた。「あぁ、それなら、W.H.スミスのところにいくといいよ。坂を下りたところの右側だから」と言う。W.H.スミス?! 「よく聞き取れなかったので、もう一度お願いします」「W.H.スミスさ」「W.H.スミス?」「そう、W.H.スミス!」。そんなぁ・・。店の主人の名前を言われても困るよぉ・・。「あの、すみませんが、店の名前を教えてくれませんか?」。彼は、私の質問を聞くや否や、急に大声で笑い出した。「はっはっはー。あのね、W.H.スミスというのは店の名前だよ」。
 そう、イギリスを旅したことがあれば、ご存じの方も多いだろう。W.H.スミスというのは、イギリス各地でよくみかける、文房具や本を売っているお店の名前だったのだ。今思うと、あっはっはー、なのだが、あのときは、「?」が3つぐらい、頭のなかで踊っていたのです。

(2003.1.19)
English

セントアイヴス

ペンザンス


 トップへ

イギリスへ行こう!