今月の本

2002年9月

『容疑者の夜行列車』
多和田 葉子
青土社・1600円
<感想>ユーラシア大陸を夜行列車で移動する主人公の「あなた」は、旅の途中で
必ず怪しげなトラブルにまきこまれてしまう。夜行列車という閉じられた移動空間の
中に入り込むと、なんでもない日常生活を送っていた人でもその非日常性からか、
いつの間にか「容疑者」になってしまう。
(もっと詳しくはここ)
『ロマンス』
エド・マクベイン 井上一夫訳
ハヤカワ文庫・940円
<感想>ヒットしそうもなない芝居の主演女優が殺された。87分署のスティーブ・
キャレラとバート・クリングが組んで、劇団関係者を中心に捜査を開始するが劇作家
と演出家の確執、女優同士の妬み、興行収入の割り振り方などなどが明らかになっ
ていく。バートクリングと恋人の女医シャーリン・クックがとてもいい。
『ジャズ』
トニー・モリスン
早川書房・1800円
<感想>作者はアメリカの黒人作家としてはじめてノーベル文学賞を受賞した。
1920年代のシティが舞台。主人公は夫婦と少女の3人。それぞれが心に傷を
おっている。三角関係からはじまり、愛し方がわからないために起こる悲劇と和解
までの心象風景が、ジャズのリズムのって展開していく。



2002年8月

『晴子情歌』
高村 薫
新潮社
<感想>大正生まれの母が生きてきた時代と戦後生まれの息子の生きている現代
とが交錯したり同化したりしながら東京、青森、北海道での生活や人々が鮮やかに
描かれている。(もっと詳しくはここ)
『早春』
藤沢 周平
文春文庫
<感想>推理小説も、評論もちょっとなーという気分の時は藤沢周平に限る。この
表題は作家唯一の現代小説で、たいしておもしろくはないがほっとするし、他の2編
も江戸役人ものでいつもの落ち着いた清らかな文体で、心が洗われる。
『新折々のうた6』
大岡 信
岩波新書
<感想>古今の歌は声を出さないでそっと心情をかみしめながら読みたいと思って
いる。しかし悲しむべきかな大岡信さんの手助けがないと、何もわからないのである。

今年の夏のうた  「石も木も眼(まなこ)に光るあつさかな」 向井去来

2000年9月ー10月

『三文役者の死ー正伝 殿山泰司』
進藤兼人
岩波現代文庫
<感想>近代映協の進藤兼人作品と役者のすごさがこの本でわかった。
人が結びつくのは友情や愛などというものだけではないのだ。
『アフリカを食べる』『アフリカで寝る』
松本仁一
朝日文庫
<感想>まだ行ってないアフリカだが、食べ物は多分イモ虫の唐揚げ以外は
大丈夫だろう。寝るのも多分大丈夫。知らないところはおもしろそうである。
『敵手』
ディック・フランシス 菊池光 訳
ハヤカワ文庫
<感想>シリーズ35作目。ファンだから無条件に買ってしまう。ましてやシッドハレー
三度目の登場である。もう彼とは性格や育ちもすべてわかっている友人気分である。
悪い奴は叩きのめせ。
『家族の名誉』
ロバート・B・パーカー 奥村章子訳
<感想>屈強なスペンサーでなく、タフな女性探偵サニー・ランドル登場。ボストンの
街から救い出した少女との生活を通して、彼女の主張と性格がよくわかった。こんな
女のまわりにはいい男がたくさん登場するのだ。

2000年8月


週刊誌、月刊誌少々。ガイドブック、地図パラパラ読み。
暑くてウダウダしているうちに8月は終わってしまったのだ。

 

2000年7月


『回想 日本の放浪芸』
市川捷護
平凡社新書
<感想>小沢昭一的こころはすべての芸能の世界に通
ずることがわかった。わたしもこんな仕事がしたい・・・。

『信州すみずみ紀行』
高田宏
中公文庫
<感想>信濃人は難しい人が多いが、いつか信州で暮らした
いと思っている。この本でさらにその思いを深くした。夏も冬も
いい。北アルプス穂高連峰はさらにいい。おお信州よ・・・。

『クラシック名盤ほめ殺し』
鈴木淳史
洋泉社
<感想>この作者は何者だ?。私の好きなブラームスもこの
作者の手にかかるとほめられているのか、けなされているのか
わからない。どっちでもいいけれど・・・。

『配色基礎講座』
視覚デザイン研究所編
<感想>7日間でマスターするとサブタイトルがついているが、
まだマスターしていない。ホームページのデザインをもう少し
なんとかしたいとおもっているのだが・・・。

 

2000年6月


『イージーマネー』
ジェニー・サイラー 安藤由起子訳
ハヤカワ文庫
<感想>女性推理作家はくどいので、あまり読まないが、
これはアメリカ縦断とフロリダが舞台。さらにベトナムの影。

『カリブの鎮魂歌』
ブリジット・オベール 藤本優子訳
ハヤカワ文庫
<感想>これも女性推理作家、カリブ海の自然の猛威と
性悪美女の動きがとてもよくマッチ。

『美の扉』
川村記念美術館
<感想>美術館の図録が電車のなかで読める。A5サイズ
にピカソやマチス、ステラが語る。

『フェルマーの最終定理』
サイモン・シン 青木薫訳
新潮社
<感想>数学の美学がここにあるのだがよくわからない。

 

 

2000年5月


『身辺図像学入門』
岡 泰正
朝日選書
<感想>世の中の絵柄にはすべて背景があるのだ。

『家はあれども帰るを得ず』
関川夏央
文春文庫
<感想>まずタイトルがいい。漱石を語るのもいい。

『破産しない国イタリア』
内田洋子
平凡社新書
<感想>イタリア人の生き方の一端が見えた。儒教と
カトリックは排他にある?

『追悼の達人』
嵐山光三郎
新潮社
<感想>作家はひっそりとは死ねない。

 

2000年4月


『いのち』
柳田邦男
講談社文庫
<感想>こういう医師ならなってもよかった。

『極大射程』
スティーブン・ハンター
佐藤和彦訳
新潮文庫
<感想>こういうガンマンならなってもよかった。

『能は生きている』
林望
集英社文庫

<感想>こういう人に教えてもらうと、能は眠くない。

『異形の王権』
網野善彦
平凡社ライブラリ
<感想>中世の絵巻から社会が見える。

 

2000年3月


『展望の山旅』
藤本一美 田代博 編著
実業の日本社
<感想>これがあれば電車からでも山の名前がわかる

のだ。

『倫理21』
柄谷行人
平凡社
<感想>久々にハードな本。持続力がないのは責任感の
欠如か?

 

2000年2月


多忙につき週刊誌とか月刊誌くらいしか読んでない。

 

2000年1月


『ブルー・ハイウェイ 上下ー内なるアメリカへの旅ー』
ウィリアム・リースト・ヒート・ムーン
真野明裕訳
河出書房新社
<感想>アメリカは広い。とてつもなく広い

『日本美術史』
監修 辻惟雄
美術出版社
<感想>江戸中後期以降だなおもしろいのは

『さよならファイマンさん』
パリティ編集委員会」
丸善

<感想>こういう人は本当に頭がすごい

『地を這う虫』
高村薫
文春文庫
<感想>わたしの不得手な業界

今月の本