音楽界戦後50年の歩み 〜 事件史と音楽家列伝 〜 中曽根 松衛 編著 芸術現代社(2001 334p.) ISBN 4-87463-155-X ¥2500(+抜) |
■目次■
序文 戦後50年、生きた楽壇史 飯野 尹 1 はじめに 5 ■音楽界戦後の事件史■ 『戦犯論争』をめぐって 〜 山根銀二 vs 山田耕筰 〜 13 新制音楽大学の問題点 〜 邦楽科廃止論争 〜 20 「サンデー毎日」事件 〜 「音楽家クラブ」「日本演奏連盟」の結成 26 音楽教育の革新 〜 芸大と桐朋音大の方向 〜 32 交響楽運動、戦後の歴史 〜 ある楽団長の死 〜 40 ■戦後音楽家列伝■ 作曲家 山田耕筰 46 信時 潔 53 守田正義 58 吉田隆子 64 塚谷晃弘 71 芥川也寸志 77 塚原哲夫 85 矢代秋雄 93 武満徹 100 指揮者 山田一雄 107 渡邉暁雄 112 北川剛 119 石丸寛 126 声楽家 柳兼子 134 浅野千鶴子 140 奥田良三 144 下八川圭祐 151 伊藤武夫 155 四家文子 160 関種子 165 ピアニスト 井口基成 170 井口秋子 178 安川加壽子 184 チェリスト、ヴァイオリニスト、ギタリスト 井上頼豊 190 巖本真理 197 小原正安 203 筝奏者 宮城道雄 212 舞踊家 石井漠 219 ピアノ調律師 原田力男 226 音楽評論家 大田黒元雄 234 野村光一 240 堀内敬三 246 山根銀二 253 武川寛海 260 宮澤縦一 268 大木正興 275 ヴァイオリン指導者 鈴木鎭一 283 実業家、音楽後援者 大倉喜七郎 293 徳川頼貞 299 大原總一郎 304 音楽ジャーナリスト 村松道彌 311 檜山陸郎 318 作詞家 加藤省吾 326 解説 戦後の楽壇史としての人物列伝 石田一志 332 あとがき 334
■内容その他■
「はじめに」を読むと、著者が音楽ジャーナリズムに関りはじめたのは、戦時中ということになります。じっさい、本文を読んでいると、何箇所かそうした記述に出会います。半世紀以上この世界で仕事を続けてこられた著者は、その間、折に触れてさまざまな音楽関係者に会い、話を聞いたり多くの示唆を得ることができたといいます。人物列伝の方は、そうした人々の中から43人(今日ではすべて故人)をとりあげ、かつて『音楽現代』誌に連載したものを1冊の本にまとめたのですね。
本書は、戦後におきた音楽界における事件史の部と戦後音楽家列伝の部からなっています。そうには違いないのですが、やはり本書の特徴はさまざまな音楽家や音楽関係者43人の列伝です。一人一人については短めの記述ですが、これだけの人数がまとまると、読んでいて意外と発見も多いものです。ここに取り上げられた43人は、戦後の音楽界に寄与した人たちとして登場してくるのですが、戦後になってから活動した人のほか、昭和の戦前・戦中期から活躍していた人々も30人ほど入っているでしょう。私自身の本書に対する関心は、むしろこうした戦前・戦中から活躍していた人々について知ることができる点にあったのです。
というのは、拙HPの「昭和戦中期の音楽雑誌を読む」に登場する多くの人物について、私自身がきちんと把握できているかというと、とんでもない、知らない人がどれだけ多いことか(自慢にはなりませんけど・・・)。本書は、そうした知識不足を補ううえでおおいに参考になりました。
一人一人についての記述は先ほども書いたとおり短めです。ということは、当然、物足りなさを感じることもあるわけですが、その点は、こうした人物列伝に過剰な期待を寄せるよりは、いろいろな文献を機会をみては読んでいくことにしたいと思います。ともあれ、手元に置いて利用するのに便利な図書だと思います。
【2003年1月16日】
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