徹底活用「オンライン読書」の挑戦 
津野海太郎 二木麻里 編
晶文社(2000  206p
.)
ISBN 4-7949-6450-1  ¥1800(+抜)
読書週間だったからというわけではないのですが、読書に関する本を1冊読みました。紙の本をカバンに入れて、主に通勤電車の中で読みました(喫茶店で読んだときもありましたけど)。読み終わるまでに、もっと時間がかかるに違いないと予想していたのですが、そうではありませんでした。例によって目次からご紹介しましょう。

■目次■


プロローグ オンラインテキストの海から見える読書の未来   津野海太郎×二木麻里 10
1 オンライン読書の挑戦 29
オンラインテキスト最前線
プロジェクト・グーテンベルク 30/青空文庫 46/京都大学電子図書館 54
日本文学テキスト
菊池真一研究室 60/日本文学等テキストファイル 62/渋谷栄一研究室 64/古典総合研究所 66/書籍デジタル化委員会 67/芭蕉データベース 67/宮沢賢治童話館 68/大伴家友の世界 69/名古屋大学松岡光治研究室 69/上田信道の児童文学ホームページ 70/奈落の井戸 70/信州大学日本文学ホームページ 71/従吾所好 71/アナーキー・いん・にっぽん 72/AERA SOSEKI 72/泉鏡花を読む 73/プロジェクト杉田玄白 73/バルバロイ! 74/聖書通読表 74/東西落語特選 75/データベース「世界と日本」 75
現代日本オリジナルテキスト
日本SF作家クラブ 76/小松左京ホームページ 77/村上朝日堂 78/本とコンピュータ 79/カフェ・クレオール 80/ポリモーファス・スペイス 81/アリアドネ 82/インスクリプト 83/ほら貝 84/ひつじ書房 84/ほぼ日刊イトイ新聞 85/清水哲男『増殖する俳句歳時記』 85/大森望のSFページ 86/大原まり子の『アクアプラネット』 86/奥本大三郎の虫眼鏡サイト 87/小林恭二 猫鮫の隠された生活 87/宮崎学ホームページ 88/WATCH SEIKO 88/吉本隆明の世界 89/筒井康隆ホームページ 89/作家 秦恒平の文学と生活 90/志郎康ホームページ 90/Web新潮 91/晶文社ワンダーランド 91
海外テキスト
インターネット・パブリック・ライブラリー 92/ペルセウス・プロジェクト 94/オンラインブックス・ページ 96/アテナ 97/イングリッシュサーバー 98/ABU 98/リベル・リベル 99/プロジェクト・ルネベルイ 99/ビブリオチェカ 100/バートルビー・コム 100/セルバンテス 101/バード 101
日本のオンライン図書館
図書館情報大学 102/慶應義塾大学HUMIプロジェクト 104/奈良女子大学附属図書館 106/国文学研究資料館 108/東京学芸大学附属図書館 110/九州大学附属図書館 112/東京情報大学綜合情報センター 113/国立国会図書館 114/東京大学史料編纂所 115/筑波大学電子図書館 115
海外のオンライン図書館
アメリカ議会図書館 116/カリフォルニア大学バークレー校 122/フランス国立図書館 126/ドイツ国立図書館 129/ヴァージニア大学図書館電子センター 132/バイエルン州立図書館デジタル図書館 134/英国図書館 135/オックスフォード・テキストアーカイブ 136/ビーレフェルト大学図書館 137/ナント大学電子出版センター138/ケンブリッジ大学図書館 139
日本のオンライン美術館・博物館
京都国立博物館 140/東京大学附属図書館 142/奈良国立博物館 144/早稲田大学演劇博物館 145/東京国立博物館 146/静嘉堂文庫 147/国立西洋美術館 147
海外のオンライン美術館・博物館――オンラインのみの美術館系
ウェブミュージアム・パリ 148/ウェブギャラリー・オヴ・アート 150/ラビリンス 152/アートサーブ 153
海外のオンライン美術館・博物館――現実の美術館系
メトロポリタン美術館 154/エルミタージュ美術館 156/ルーヴル美術館 158/ウフィツィ美術館 159/スミソニアン博物館 160/サンフランシスコ美術館 161/オルセー美術館 161/シアトル美術館 162/グッゲンハイム美術館 162/ドイツ博物館 163/英国国立アートライブラリー 163
【コラム】ホームページを縦書きで読む方法 164
2 オンラインテキストサイトの歩き方 169
ネット報道を負う  二木麻里 170
本についてインターネットで調べると、寄り道しないではいられない  河上進 177
女の子はコンピュータがお好き?  栩木玲子 184
インターネット日記中毒者の独白  大森望 190
<身体>の夢想――インターネット  二木麻里 197
サイト索引 206

■内容その他■
扱われているテーマがオンライン読書だったりすると、本書を読んでいる最中にも、やがて紙の本は姿を消してしまうのではないかと、ふと考えてしまうことがありました。でも、それはたぶんそうではなく、読書する時の媒体としてオンラインが読書に食い込んできて、これまで思いもよらなかったような読書のあり方が提示されてくるようです。たとえばリンクを使ったクロスレファレンス。クリックひとつで他のページにとび、読んでいた本文に関連することがらがわかります。紙の本では、しおりを2箇所に挟んで本文と注を行ったり来たり。似たようなものだと思うかもしれませんが、やはりその威力はリンクにかなわないでしょう(リンクの方が自由自在ですから。ただし、リンクが幾重にも貼られていると、自分はもともとどこを読んでたんだっけ、などということもありそうですが)。

本書を読むとき、私はぜひプロローグの「オンラインテキストの海から見える読書の未来」を味わっていただきたいと思います。津野海太郎さんと二木麻里さんの対談なのですが、たとえば日本の状況について憂慮している箇所があります。
二木 インターネットでリソースを確保しつつ、それを公開しないという精神が私はいまだによく分かりません。
                   (略)
津野 たとえば韓国や中国では、いざ電子図書館をつくろうとなると、まず既存のテキストをデジタル化を優先するんだけど、日本の場合はなかなかそっちには踏み込まないんですね。
                   (略)
二木 デジタルアーカイヴと言いますか、図書館のテクスト化についてきちんとした計画が見えてこない。特にEテクストで身近なものといえば、人文系のテクストだと思うのですけれど、学者の方たちによるとあの領域がいちばん抵抗が大きいというのです。
                              (18〜19ページ)
この箇所以外にも、随所に知とインターネット、インターネットと読書に関するやりとりが見受けられ、それらはとても興味深い内容をもっています。サイト紹介を読む前に押さえておきたいところです。

つづくサイト紹介は、読みやすい文章とサイトのページを写真で掲載し、読者の理解を助けています。目次からもわかるでしょうが、文学のテクスト、オンライン図書館、オンライン美術館・博物館と幅は広いです。私自身、オンライン読書の経験は浅いので「徹底活用」することはできませんが、まずは「挑戦」をしてみたい気持ちが膨らみました。

【2002年11月8日】


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