バカのための読書術
小谷野 敦
筑摩書房(ちくま新書) 2001  189p.
■目次■
目次
序章 バカは「歴史」を学ぶべし p.7-12
第1章 「難解本」とのつきあい方 p.13-36
第2章 私の「知的生活の方法」 p.37-61
第3章 入門書の探し方 p.63-92
第4章 書評を信用しないこと p.93-113
第5章 歴史をどう学ぶか p.115-145
第6章 「文学」は無理に勉強しなくていい p.147-174
終章 「意見」によって「事実」を捩じ曲げてはならない p.175-180
バカには難しいかもしれないあとがき p.181-189
■内容 その他のメモ■
『バカのための読書術』。書店で見つけたとき、ムカッと来る気持ちと、「うん、自分向きの本かな?」という妙に素直な気持ちが交差する、そんな刺激的なタイトルの本でした。この本を書いたのは、
小谷野 敦(こやの・あつし) 1962年茨城県生まれ。東京大学文学部英文化卒。同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了。1990−92年、カナダに留学。学術博士(超域文化科学)。現在、明治大学講師。文芸批評、演劇、歴史、ジェンダー論などフィールドは幅広く・・・(後略)。
カバーにこんな内容のことが出ていました。またまた複雑な気持ちになりました(笑)。まあ、騙されたと思って読んでみるのも悪くない、という軽い気持ちで680円+5%の税金を払い、購入しました。以下につづく私の文章では、著者・小谷野氏の表現に従って「バカ」という言葉が多用されることと思いますが、今回は笑って許してくださいm(__)m

さて、早速ですが、読者として想定されている「バカとは何か?」です。「いちおう学校を終えてしまって、しかしただのベストセラー小説を読んで生きるような人生に不満で、けれど難解な哲学書を読んでもわからないという、というような人たちだ」そうです(p.9)。哲学だけでなく、数学も入ると書いてあります。私は、まさしくこの手の人間でしたので、ひとまずホッとして次のステップに進みました。

で、バカは何を学問の中核として読んだらいいか、です。マス・メディアに登場する大勢の知識人や評論家は、政治や宗教、心理学等々それこそ多くの分野について発言をしますね。へえー、すごいなあ、と思わされることも多々ありますが、充分な裏づけも示さずにまことしやかにモノを言うこともあるわけです。ですから、バカは「歴史」を学問の中軸に据えて読書をしろ、と小谷野氏は言います(ただし、本書は、歴史書の読み方を指南するものではありませんよ)。「事実」「主張」を分けて読み、「主張」(=意見)が「事実」に基づいたものかどうかをきちんと見極めていくことを大切にしよう、というわけです。幸い、歴史は蓄積がモノを言うから、歳をとることを恐れなくても済むといいます。私は、なーるほど、と納得でした。

「読書術」を扱った本ですから、難解書とどう付き合うか、知的生活の方法、入門書の探し方、書評を信用してよいか、歴史をどう学ぶか、等々についても書かれています。過去に出た読書術の本の中から、渡部昇一の『知的生活の方法』と呉智英の『読書家の新技術』をあちこちで検証しながら、読書術についての小谷野ワールドを築こうとしているのです。たとえば、難解本で<読んでもわからない、でも読まなければいけないような気がする>などという時には、小谷野氏は<読まないこと>を薦めている。ほかにも読むべきものがあるからで、時間の無駄だ、とズバリ直言。そういえば、私も若い頃、電車の中でアリストテレスの『政治学』を読んだのですが、目にした文字が、頭を急行で通過して、窓の外にどんどんリアルタイムで流れ出ていったことを思い出してしまいました。この時は、いつかまた挑戦しようなどという気持ちすらもてなかった。やはり、そのあと難解本に手を出さなくて正解だったのかもしれませんね。知的生活の一端をご紹介するならば、新聞のスクラップをとりましょう。切抜きの対象は記事に限ることなく、たとえば広告にかわいいと思った女性が載っていたら切り取っておいてもいい、というのです。目からうろこが落ちました。

「読んではいけない本」ブックガイド、なんて項目まであって、面白く読めました\(^o^)/
【2001年3月9日】


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