第109回: ブラスアンサンブル《ブロウ》Vol.3 (東京文化会館小ホール)

6月17日(土)の夜、標記のブラス・アンサンブルを聴いてきました。まずは当夜のプログラムからご紹介します。

J.S.バッハ  トッカータとフーガ ニ短調
E.クレスポ  スピリチュアル・ワルツ
戸田多佳子  遊戯 X (2006年度委嘱作品)
             atomosphere I (チベット-日本-韓国)
             atomosphere II (ジャワ)
             atomosphere III (バリ)

          〜 休憩 〜
M.デイヴィス ゴザム
P.デリヴェラ  4つの小品
             1.ワパンゴ
             2.ダンス
             3.キューバ
             4.ソフィア


このアンサンブルでは、例年、「超」有名なバロック時代の作品を聴かせてくれますが、今年はあの《トッカータとフーガ ニ短調》。ブラス・アンサンブル用のアレンジとして楽しめます。ただ、これだけ有名な作品になると、時おり起こるちょっとした不ぞろいでも気になったりするもの。それにしても、ブラス・アンサンブルにバロック時代の作品というのは、やはり似合いますね。これからも、いい作品を取り上げてほしいものです。クレスポの作品は、自身が主宰するジャーマン・ブラスのために書かれたものだそうで、モダンでしゃれた響きの音楽が楽しめました。戸田作品では、奏者の皆さんに緊張感が漂ったように感じましたが、もしかしたら私の気のせいかもしれません。とはいえ、リズムなどを正確に合わせるのに努力がいる曲のようで、いい感じに仕上がっていたとは思うのですが、もしも演奏の回数が重ねられていくならば、もっと作品から出てくる趣きなどを感じながら聴けるだろうと思いました。毎年、日本人の新作を委嘱していこうという姿勢も立派です。

休憩後のデイヴィスの作品は、5人の奏者が気持ちよく音を出せる作品とお見受けしました。聴いている私にとっても、心地よく感じながら聴ける曲でした。さいごのデリヴェラの作品は、作曲者自身によって金管五重奏にリアレンジされたものだそうです。上に記した4曲からなりますが、どの曲も表情豊かな演奏が高度なレベルで要求されているようで、時どき不安定になる瞬間があったように思いますけれど、好感のもてる演奏でした。

このアンサンブルのコンサートが始まってから3回、連続して聴いていますが、毎年確実にレベルアップしているように感じます。今年とくに感じたことは、5つの楽器の響きのバランスがとても良くなっているように思えたこと(やや具体的にいえば、昨年まではホルンがややおとなしく感じたものでしたが、今年はそうは思いませんでした。また、第2トランペットの演奏にキラリと光る瞬間が何度かあったようにも思いました)と、このグループとしての経験が少しずつ蓄積されてきて、演奏の乱れなどがいままでよりも少なくなっていたように思いました。つまりその分、演奏に安定度が増したといえるような気がしながら聴いていました。

このグループは主宰者・藤田乙比古さんのホームページを拝読すると、けっこう練習を重ねていらっしゃるグループのようです。演奏の回数がもっと多ければ、それに比例して、さらに自信と落ち着きが加速度的に加わる可能性もあると思うのですが、忙しい皆さんが集まっての活動のようですから、年に1回のコンサートがやっとなのかもしれません。いろいろな事情を斟酌しないで言わせていただくならば、もう少し演奏の場が増えるといいように思います(ひきつづき事情を斟酌しないで言わせていただくならば、演奏の場は何も東京に限ることはないように思えます)。

毎年、梅雨に入るとコンサートを開催するブロウですが、その鬱陶しさを吹き飛ばしてくれます。来年も、また聴きにいきたいと思っていますが、いまからこんなことを言っていると鬼に笑われるかもしれません・・・。

【2006年6月19日】


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