第102回:東京佼成ウインドオーケストラ第86回定期演奏会(紀尾井ホール)

去る10月9日(日)午後2時より標記のコンサートがありました。東京佼成ウインドオーケストラでは、少し前から<Master Works>というシリーズを定期演奏会に組み込んで、今回はその4回目。フル編成のウィンドオーケストラではなく、もっと小編成の作品を紹介していました。そのプログラムは

ヘンデル:王宮の花火の音楽()
K.A.ハルトマン:交響曲第5番《協奏交響曲》(日本初演)
R.シュトラウス:ソナチネ第2番《楽しい仕事場》


ダグラス・ボストッック(指揮) 東京佼成ウインドオーケストラ

というものでした。

久しぶりに吹奏楽を聴きに行った私の目当ては、ハルトマンの交響曲でした。カール・アマデウス・ハルトマン(Karl Amadeus Hartmann 1905-1963)。今年生誕100年を迎えた作曲家ですが、私は辛うじてヴァイオリンと弦楽オーケストラのための《葬送協奏曲 》という作品で、この作曲家の名前をインプットしていたのでした。それが数年前から名前を見る機会が増えてきました。

ドイツ人であるハルトマンはナチが政権を取った1933年以降、以前にも増して人道的なものを題材とした作品を書いた(たとえば、先の《葬送協奏曲》も‘反ファシズム’という副題をもっていました)ので、その政権下では音楽界から身を退かざるをえない状況に追い込まれたり、作品もドイツ国内では演奏されなかったといいます。交響曲は8曲書いたのですが、完成したのはいずれも戦後。作品完成までに複雑な経緯をもったものもあります。今回取りあげられた第5番は1949年の作で、管楽とチェロとコントラバスという編成でした。全体は急緩急の3楽章からできていますが、第2楽章はストラヴィンスキーの《春の祭典》の冒頭に似せてあるメロディが奏でられてゆきました。第3楽章のロンドはトランペットをはじめ、トロンボーンなど多くの楽器の聴きどころが用意されていました。

そういえば、今年ドイツから来たオーケストラのひとつがハルトマンの《交響曲第1番》を演奏しました。楽しみにしていたのですが、都合で行けずじまい。日本のオーケストラでハルトマンを取りあげたところはあったのでしょうか。東京佼成ウインドオーケストラがハルトマンを取りあげてくれた価値は高いと思います。

R.シュトラウスの《ソナチネ》は1945年に完成した作品で、編成は木管と金管楽器をあわせて20名弱だったでしょうか。しかし、そのタイトルからは想像もできないほど長い作品で、40分ほどかかりました。特に4つある楽章のうち、両端楽章にかかる時間が長いのです。全体を通してクラリネットの活躍が目立ち、それを楽しみながら聴いていました。先のハルトマンと合わせて、第三帝国を生きた二人の作曲家の作品を並べて聴けたのは、いい体験になりました。

冒頭に演奏されたのはヘンデルの《王宮の花火の音楽》でしたが、これも比較的小編成にアレンジされたもので、演奏者たちは起立して演奏していました。なにも余計なことを考えずに聴き入った演奏でした。

東京佼成ウィンドオーケストラのこのシリーズ、今後も注目していきたいと思いました。
【2005年10月17日】


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