第95回:brass ensemble BLOW 2nd Live(東京文化会館小ホール)

梅雨入りして間もない6月11日(土)、標記の金管アンサンブルのコンサートに行ってきました。ちょうど昨年の今ごろ、さいしょのライヴを開いてから1年ほどが経過していました。そういえば、このアンサンブルのHP( http://members.jcom.home.ne.jp/ottorino1/blow/ )もスタートしていますよ。


当日のプログラムは

1.M.アーノルド  金管五重奏曲(1961)
2.J.S.バッハ   ヴァイオリン協奏曲BWV.1041
3.西澤健一     金管五重奏曲(委嘱作品/初演)(2005)
4.J.ガーディナー 主題と変奏 作品7(1951)
5.E.クレスポ    アメリカ組曲 No.1(1977)


というものでした。そして1.から3.までが前半。この編成のオリジナル曲として有名なアーノルドの作品から始まりましたが、このこと自体ちょっと珍しいプログラミングのようですね。ライヴに対する意気込みが感じられるのですが、鳴り出した音楽を聴いたとたんに、つい無意識に昨年と比較してしまいました。アンサンブルの充実度がグンとアップしているように感じられましたが、この感想は、当夜を通じて抱き続けたものでした。次のバッハは、プログラムには「協奏曲ト短調」と書いてありました。しかし、オリジナルはヴァイオリン協奏曲第1番BWV.1041イ短調で、それを移調してアレンジしたものです。昨年演奏されたヴィヴァルディの<春>(《四季》より)もそうでしたが、伸びやかで少しロマンティックなバロック音楽が楽しめました。さて、先のHPにはリサイタルのたびに日本人の若手作曲家に新作の作曲を委嘱していくと宣言してあるのです。おそらく、ご自分たちが日本の金管五重奏団であることを意識なさって、将来、委嘱した作品のなかから繰り返し演奏されるレパートリーが生まれることを願ってのプログラミングに違いありません。とても有意義な、心憎い試みですね。今回登場した西澤さんの作品は、会場からは好印象をもたれたようにお見受けしました(私も含めて)。

休憩後の1曲目は実は金管五重奏ではなく、トランペット(2)、ホルン、トロンボーンという四重奏のために書かれた作品でした。冒頭トロンボーンが登場し、それにほかの楽器が絡んでいきます。そして、いくつかの変奏が展開されていくのですが、独特の味わいを感じることができました。当夜のさいごを飾ったクレスポの《アメリカ組曲 No.1》は中南米の音素材を用いた作品で、聴いている側も肩ひじ張らずに、それでいて奏者たちに要求されている名人芸をもあわせて楽しめる作品でした。アンコールはミュージカル《マイ・フェア・レディ》より<きみ住む街で>。

当夜の演奏を通して何よりも印象に残ったのは、充分に練られた演奏表現が作品の隅々まで行き渡っていたことです。ですから、音楽を楽しめたという気になれました。そうした高いレベルにあることを前提に言えば、それでも無傷の演奏が実現できたわけではありませんでしたし、その傷が音楽の流れをそがなかったかというとちょっと微妙な箇所もありました。昨年と今年の1年でご自分たちの課題を整理されて、パワーアップされてきたのですから、来年はさらに一歩先を目指していかれるのだろうと想像しています。楽しみです。
【2005年6月13日】


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