第90回 : ベートーヴェンは凄い「全交響曲連続演奏会」(東京文化会館大ホール)

2005年、あけましておめでとうございます。皆さま、どのようなお正月をお過ごしでしょうか? 今年の拙HPは、2004年大晦日の午後3時30分から元日0時50分までかかって行なわれたコンサートについて簡単にご報告することから始めましょう。

実は、同じ試みが2003年の大晦日にもありました。ただこの時は、そのコンサートについて知るのが遅れて、私はけっきょく行かずじまいでした。その年の指揮者は大友直人、金聖響、岩城宏之のお三方、オーケストラは東京交響楽団と東京シティフィルハーモニー管弦楽団が受けもったと記録されています。指揮を分担した岩城さんは、楽屋で出番を待つのがいたたまれない感じがして、次は全部を一人で振ってやろうとお考えになったそうです。

そして2004年は岩城さんお一人が指揮をされ、N響メンバーたちによるオーケストラが始めから終わりまで通して演奏することになりました。こんなコンサートがあると知ってしまった以上、今度こそ行こうと心に決めたのでした。ところで大晦日の東京は12月29日に次いで雪が降りました。多くの皆さんが、この雪をものともせず、このコンサートに参集してきました。私は開演直前、自分の席につき会場内をぐるっと見渡したのですが、恐らく9割近い座席が埋まっているように思えました。第1部の開始が午後3時30分。CSで生放送が入っていた関係か、ほぼ定刻どおり演奏が開始されましたが、次のような6部構成で進んでいきました。

【第一部】
交響曲第1番 ハ長調 作品21 (1800)
交響曲第2番 ニ長調 作品36 (1802)
【第2部】
交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」(1804)
【第3部】
交響曲第4番 変ロ長調 作品60 (1806)
交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」(1808)
【第4部】
交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」(1808)
交響曲第7番 イ長調 作品92 (1813)
【第5部】
交響曲第8番 作品93 (1812)
【第6部】
交響曲第9番 ニ短調 作品124 「合唱付き」(1824)
(ソプラノ:釜洞祐子 アルト:黒木美保里 テノール:小林一男 バリトン:福島明也 合唱:晋友会合唱団)
管弦楽:N響メンバー達による管絃楽団/指揮:岩城宏之


第1番では冒頭の部分でフンワリした気分に誘われて自然にこの交響曲に導かれていきましたし、第2番の第2楽章は美しいと感じながら聴き入りました。4階センターの私の席から聴いても、このオーケストラが出す弦楽器の中低音部の音は実にのびやかに響いてきました。「英雄」では第3楽章のスケルツォなど弦楽器群のスタッカートが迫力をもってリズムを刻んでいきました。このように挙げていくとキリがないほどなのですが、特筆すべきは9時間20分にも及ぶコンサートで、演奏に小さな破綻をきたしたり、雑になったりする箇所がなかったことです。これには驚き、感動しました(マラソンコンサートというので、正直に言うと、どこかでそうした箇所があったとしても不思議はないと思っていたのですが「下種の勘ぐり」以外の何ものでもありませんでした)。こうして1曲1曲じっくりと聴き込むことができました。そのせいか(?)、各部が終わるごとに空腹を覚えたというのが正直なところ。コンサート直前の軽食を含めると4回食べ物を補給しました(笑)。会場を見渡しても、途中で帰る人たちがいないように感じられました。有名な「英雄」「運命」「田園」「第7番」「第9」などは曲が終わると、それは大きな拍手に包まれました(特に「第9」!)し、ステージと会場はなんとも形容しがたい一体感に包まれていたように思います。第9の第2楽章の途中で年が改まり、終演は元日の0時45分ころになりましたので疲れなかったと言えば嘘になりますが、むしろすべてを聴き終わって得た充実感は、ちょっとした疲労など問題にならないほど大きなものでした。というわけで、これまでに経験したことのない新年の迎え方をしました。
(2005年1月4日)


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