第77回 : 新交響楽団第184回演奏会(東京芸術劇場大ホール)

去る1月18日(日)表記のコンサートに行きました。この日のプログラムは

安部幸明 交響曲第1番
ラヴェル ラ・ヴァルス
フランク 交響曲
小松一彦指揮/新交響楽団

でした。さいきんアマチュア・オーケストラというとオーケストラ・ニッポニカを取り上げることが多くなっていましたが、新交響楽団も日本人作曲家の作品をプログラムの中に1曲ほど入れる機会が多いようですね。主観的な見方になりますが、プロのオーケストラが日本人作曲家を取り上げるときは、どうしても一部の人気のある作曲家に偏りがちになっているような気がしてなりません。それにひきかえオーケストラ・ニッポニカも今回の新交響楽団も、過去に作曲られたものから、放っておけば演奏されずに忘れられてしまうかもしれない作品を探してきてプログラムに取り上げるのですから、その意義は大きいと思います。

安部幸明さんの《交響曲第1番》が演奏されることは、なにげなくインターネットを検索しているときに情報を見つけました。その後、お知らせくださる方があって、なんでも日本では45年ぶりの蘇演となるそうで、でかける前からどのような作品なのか楽しみにしていました。初演は1957年に東京交響楽団によって行なわれ、アレグロ・コン・ブリオ−アダージェット−プレストという3楽章からできています。平明なリズムと明るい響きが全篇を貫いていました。もって回ったところがまったくない音楽なのです。そのこと自体がすでに作品の個性になっていると思いました。いい演奏で、きっとこの日の演奏も録音されているでしょうから、近い将来CD化などされることを期待したいものです。

つづくラヴェルの《ラ・ヴァルス》もフランクの《交響曲》も、ともに充分に楽しめました。前者はラヴェル自身の文章からすると、ウィンナ・ワルツへの敬意を表した作品ということになりますが、もうちょっとシニカルな側面をもっているように思われ、序奏につづいて展開された7つのエピソード(ワルツ)は、音のぶつかり合いや、やや強調されたルバートなどとともに、ラヴェルにとっての「死の舞踏」かと思わせるような演奏でした(指揮者の狙いも、そのへんにあるのかな、と思って聴いていましたが適切な感想かかどうか・・・)。後者は休憩をはさんで演奏されましたが、堂々として、時には「祈り」を感じさせる一瞬もありました。

この日のコンサートはこれで終わりかというと違いました。なかなか渋いプログラムだったわけですが、それだけにアンコールはよく知られたレハールのワルツ《金と銀》が演奏されたのです。いま、よく知られたと書きましたが、意外と実演に接する機会は少ないのではな
いでしょうか(私は実演では初めてでした)。とても洒落たプログラミングで、大いに満足して帰ってきました。
【2004年1月22日】


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