第76回 : 太田由美子ピアノリサイタル(津田ホール)

ここ数日、シマノフスキのCDを少しずつ聴いています。そのきっかけを作ってくれたのは、12月6日(土)の午後に開かれた標記のリサイタルでした。プログラムは、

カロル・シマノフスキ
T.9つの前奏曲 作品1より(第1、3、5、6、7番)
U.ポーランド民謡による変奏曲 作品10
V.ヴァルス・ロマンティーク
W.2つのマズルカ 作品62
X.「仮面劇(マスク)」作品34
   1)シェヘラザーデ/2)道化のタントリス/3)ドン・ファンのセレナーデ

ピアノ:太田由美子

というオール・シマノフスキ・プログラムで「珍しいな」と思って出かけたのですが、それもそのはず、日本シマノフスキ協会の第21回例会にあたる演奏会だったのです。

このリサイタルで演奏された作品は1曲1曲は(比較的)短いものがずらりと並び、しかもそれぞれが楽しめました。私は、シマノフスキというと、これまでに《アレトゥーザの泉》《ロクサーナの歌》《交響曲第3番 夜の歌》など、いくつかしか聴いたことがありませんでしたから、ちょっとしたカルチャー・ショックを受けました。

《9つの前奏曲》から選んで演奏された5曲をとっても、ノクターン風の1番、シンコペーションをともなう(らしい)旋律をもった第3番、速度の速い第5番、半音階的な動きが聴かれた第6番、叙情的な第7番といずれも性格が異なります。さいごに演奏された《仮面(マスク)》は、千夜一夜物語、トリスタン伝説(パロディー・カリカチュア版だそうですけど)、ドン・ファン、といずれも物語に取材した作品でした。《アレトゥーザの泉》でシマノフスキに親しんできた身とすればピアノ曲にも類似した発想で書かれた作品があったんだ、とびっくりしたりもしました。ちょっと意外だったのは、メロディも和声もわかりやすく印象に残りやすい曲があまりなかったこと(さきほど挙げた《ロクサーナの歌》−−オペラ《ロジェ王》よりヴァイオリン
とピアノ用に編曲されたもの−−などそのきわだった例だったのですが)。楽しんで聴けたのは、独奏者によるところが大きかったと考えています。というのも作品を熟知された演奏のようにお見受けしたからです。

で帰宅してから、少しずつ買い込んで、いままで聴いていなかったシマノフスキのCDから2曲の弦楽四重奏曲やマズルカ集などを聴き始めたところです。もちろん、《神話》も聴いてみました。《アレトゥーザの泉》に限らず《ナルキッソス》も《ドリュアデスとパン》も魅力に満ちた作品だと思います。そういえば、ピアノ曲の《ヴァルス・ロマンティーク》をCDで聴きなおして、最初の2音を私は会場で聴き逃していたことに気付いたりもしました(汗)。私にとって興味をもてる作曲家が一人増えたリサイタルでした。
【2003年12月12日】


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