第62回 : 都響スペシャル「日本音楽の探訪」シリーズ第1回(東京芸術劇場)

9月4日(水)、池袋の東京芸術劇場で標記のコンサートがありました。東京都交響楽団では、従来、毎年1月の定期演奏会で日本人作曲家の個展(再演中心)を行なってきました。毎月の定期演奏会はAプロとBプロの2回あり、それぞれに異なる作曲家を取り上げてきましたが、それがなくなり、このシリーズが新たに誕生したようです。で、第1回のプログラムは、
 別宮 貞雄  管弦楽のための《二つの祈り》(1956)
 田中 利光  サドロ・コンチェルト(1990)[日本初演]
 外山 雄三  ラプソディ(1960)
 伊福部 昭  日本狂詩曲(1935年)
 三善 晃  童声合唱と管弦楽のための《響紋》(1984)
ペーター・サドロ(マリンバ)[2]  東京放送児童合唱団[5]
東京都交響楽団  沼尻竜典(指揮) 
というもので、前半2曲、休憩後3曲が演奏されました。

前半の2曲は初めて聴きました。その一つ《サドロ・コンチェルト》は、そのタイトルがミュンヘン・フィルのティムパニ奏者でマリンバ奏者でもあるペーター・サドロからとられていました。そしてサドロの名前の音名「es(S)-a(a)-d(d)-as(lo)」がモチーフとして使われるなどしていました。2つの楽章からできていますが、オーケストラの打楽器奏者たちとの掛け合いもあって、楽しめました。第2楽章では独奏マリンバ、オーケストラの打楽器奏者(2人)のやりとりに弦楽器も絡んで音を出していましたが、こういう時は、ステージを見ていないと弦楽器の音の動きなどは容易に追いきれません。ナマで聴いて良かったと思う瞬間です。ミュンヘン・フィルでは、すでに5回も演奏されているというこの曲、また聴けるといいのですが。この日一番長い演奏時間を要した曲で、25分ほどかかりました。

最後に演奏された《響紋》は、たしか15年以上前にNHK交響楽団定期で聴いた覚えがあります。とはいえ、その時1回聴いただけですから、忘れかけていました。こうして時間を置いてでも良いから、2度、3度と違う演奏に接するのは大切なことですね。曲の冒頭、童声合唱がゆったりと《かごめ》(の断片だそうです)を歌い始めます、すると間もなく弦楽器が、あたかもそこに刀で切りつけるかのような鋭い音を発します(こちらもハッとさせられますね)。その後、合唱が《かごめ》を歌いながら半音ずつ上昇していきます。ゆったりとした歌い方に変わりはありませんが、冒頭よりも豊かになったオーケストラの音楽と対峙して存在をアピールするかのようです。力のこもった演奏でした。

休憩時間を挟んで最初に演奏された《ラプソディ》と伊福部昭の《日本幻想曲》は、同じ指揮者とオーケストラによる演奏で、昨年ナクソス・レーベルから「日本管弦楽名曲集」がリリースされましたから、聴き覚えのある方もいらっしゃるでしょう。自信に満ちた演奏を楽しみました。《二つの祈り》も都響は別の指揮者と録音を出しているのですね。新しいシリーズが成果を収めることを期待したいと思います。
【2002年9月5日】


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