第55回 : ベルリン国立歌劇場公演≪神々の黄昏≫(NHKホール)

ベルリン国立歌劇場が来日して、≪ニーベルングの指環≫四部作を上演しています。

こういう機会があれば見たいとは思ったのですが、諸般の事情を考慮して、全部見るのは無理と判断。で、どれか選んで観ようかと考えているうちに日が経ち、けっきょく諦めてしまいました。ここまでは昨年の話です。今年に入って、偶然≪神々の黄昏≫のチケットを譲っていただくチャンスに恵まれ「それならば」と去る2月4日(日)、観に行きました。

主なキャストとスタッフは

演出 ハリー・クプファー 指揮 ダニエル・バレンボイム
ジークフリート クリスティアン・フランツ グンター アンドレアス・シュミット
アルベリヒ ギュンター・フォン・カンネン ハーゲン ドゥッチョ・ダル・モンテ
ブリュンヒルデ デボラ・ポラスキ グートルーネ カローラ・ヘーン
ヴァルトラウテ ワルトラウト・マイヤー
合唱 ベルリン国立歌劇場合唱団
管弦楽 ベルリン・シュターツカペレ

といった面々でした。

なにせ午後4時過ぎに始まって終演が午後10時過ぎです。40分と45分という2回の休憩は必要不可欠なものでした。それでも見終わってしまえば、全篇の長さは気にならない(心地よい「疲労」は残りましたが)のですから不思議です。そして歌手陣には聴き惚れながら舞台を見ることができましたし、オーケストラも自然な音楽の流れと厚みのある響きで、充分に堪能できました。実は数年前、この歌劇場が来日したときに≪ヴァルキューレ≫を上演したことがあり観たのですが、正直言って、オーケストラには少しがっかりした覚えがあったので気になっていたのです。杞憂で良かった!!

≪ニーベルングの指環≫最終章にあたる≪神々の黄昏≫では、ジークフリートはブリュンヒルデに見送られてラインの旅に出ます。しかし彼はハーゲンの策略で忘れ薬を飲まされる、そのジークフリートが変装してブリュンヒルデの居所に現われ指環を奪った挙句、彼女をグンターのもとへ届けます。グンターとブリュンヒルデ、ジークフリートとグートルーネという二組のカップルが誕生しますが、ブリュンヒルデはジークフリートの裏切りを許しません! ジークフリートは落命し、ブリュンヒルデはラインの指環が災いのもとと悟る。彼女の自己犠牲と炎に包まれるワルハラ城を見ながら幕となります。

演出は、こうしたあらすじを極く自然に見せてくれました。たとえば、現代社会とオーバーラップさせてみせるような演出でもするのかなといった予想は見事に外れましたけれど、突飛なところもなければ、わかりにくいところもありませんでした。もちろん装置や美術など、伝統的なものから踏み出して現代的なセンスが光る要素もありましたから、もう少し毒気やひねりを感じさせるような演出であってほしかった、というのが私の感想です。

四部作のうち一作品だけ観るというのは、やや中途半端かもしれませんが、ツィクルスに行こうとすると、土日だけでなく平日も含まれてきますから、勤め人の身には厳しい面があります。気になる一作品とかニ作品を選んで観に行くのも、いいものだと悟りました。
【2002年2月7日】


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