第51回 : コルンゴルトのオペラ《死の都》(すみだトリフォニーホール)
9月15日、新日本フィルハーモニー交響楽団第325回定期演奏会に行き、コルンゴルトのオペラ《死の都》を聴いてきました。わざわざ東京初演とアナウンスされていましたが、そこまでこだわって表現する必要があるのかなあ、なんて感じました。ちなみに1996年、井上道義指揮の京都市交響楽団によって日本初演がなされたそうです。今回の公演では、オーケストラの後方に仮設の舞台を設け、そこの上手には、小道具(マリーの肖像画、リュートなど)も配置されていました。こうしてオーケストラの後ろから歌うことになる歌手たちには、PA(マイク)が使われていました。叫び続けてほしくないという、指揮者の意向によるものです。では、この辺でキャストとスタッフのご紹介を。
マリー、マリエッタ 中丸三千繪 ポール ルドヴィト・ルドゥハ フランク、フリッツ 井原秀人 ブリギッタ 永井和子 ジュリエット 半田美和子 ルシエンヌ 杉野麻美 ガストン、ヴィクトリン 村上敏明 アルバート伯 井ノ上了吏 合唱 栗友会合唱団(合唱指揮:栗山文昭) 児童合唱 TOKYO FM少年合唱団
(合唱指導:太刀川悦代、米屋恵子)照明 足立恒 舞台監督 幸泉浩司 指揮・演出・訳詞字幕 井上道義
舞台はブリュージュ。物語は、妻マリーに先立たれたポールが亡妻と瓜二つのマリエッタと出会い、マリーが復活したかのような感覚にとらわれています。ちょうどこの地を訪れたポールの友人フランクが死者は蘇らないと諭してもダメです。大切な人を失った人が立ち直れないでいる「対象喪失」がテーマとなっていて、第2幕と第3幕の後半までは、ポールがマリエッタとかかわり殺してしまうという「夢」の中のできごとが描かれています。現実に戻ったポールは、さいごにブリュージュを去る決意をして幕となります。
このオペラは1920年、作曲者が23歳の時に書かれました。とてもロマンティックな作品で、中丸三千繪さんのマリエッタ(とマリア)、永井和子さんのブリギッタ、また井原秀人さんのフリッツ(とフランク)など申し分なく楽しめましたが、ただ一人ポールを歌ったルドゥハだけは声が充分に届いてきませんでした。声量が乏しいのかとも思いましたが、ひょっとするとPAにうまく声が乗らなかったかもしれないと教えてくれる人があり、そうか、と思い始めています。ルドゥハは出番が一番多く、また曲を手中に収めて歌っているように見受けられただけに残念でした。
コルンゴルトは後年ナチを逃れてアメリカに渡り、映画音楽の分野で活躍しましたが、若い時代にこうしたオペラを書いていたのを知り、充実した気持ちで帰ってきました。
【2001年9月19日】
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