第50回 : Just Composed 2001 in Yokohama(横浜みなとみらいホール大ホール)

8月31日、横浜みなとみらいホールへ初めて行きました。4年前に横浜美術館を訪れた際、桜木町に来ていますので、だいたいの方向はわかりますが、途中で「みなとみらい21 総合案内所」で念のため質問し、なんとか無事たどり着きました。ホールでサンドイッチでも食べて開演前に少し内部を眺めよう、な〜んて思っていたのですが、なんとサンドイッチを置いてなかったのですよ(マジでビックリ!)。現代音楽では、どうせ客は少ないだろうと見込んでのことか、普段からまったく置いていないのか、ちょっとわかりませんけれど。というわけで、コーヒーを飲んで、空腹を抱えながらコンサートを聴く羽目になりました・・・(トホホ)。

今年で発足10周年を迎えた横浜市文化振興財団は、過去にも室内楽作品の作曲委嘱を行なってきたそうです。それが今年はオーケストラ作品を委嘱してコンサートを開いたのですから、いい話です。では「Just Composed 2001 in Yokohama」のプログラムからご紹介。
   ョルジ・リゲティ : 13人の奏者のための室内協奏曲 (1969-70)
   武智由香 : Au loin de L'Horizon ― pour orchestre(2001)[委嘱作品・世界初演]

      
ピアノ : 中川賢一  チェレスタ : 佐藤かおる  ハープ : 堀野稚菜、田口裕子
   
サルヴァトーレ・シャリーノ : レチタチーヴォ・オスクーロ(1999)[日本初演]
      
ピアノ : 村山卓洋
   
李圭鳳 : 管弦楽のための「讃歌」(2001)[委嘱作品・世界初演]

   
演奏:神奈川フィルハーモニー管弦楽団  大野和士(指揮)
作曲者・作品について、演奏者や選定委員のプロフィールなどについては、私が触れるまでもありません。次のHPをご案内しましょう。
    「Just Composed 2001 in Yokohama」
コンサート当日に配布されたプログラムと同じ解説文が読めるばかりか、現代音楽講座のようなコンテンツもありますので、一度クリックしてみると面白いですよ(かくいう私も、この文章を書こうと思って発見しました!)。

さて、私自身の感想は後半に演奏された2曲から始めましょう。ピアノ協奏曲のかたちをとったシャリーノの作品を聴いているとき、オーケストラのどこかから不思議な音が聞こえてきました。見ると、アルト・フルート奏者が楽器の本体からマウスピースだけ外して音を出しているのです。この音が違和感なく曲に溶け込んでいて、しかも、吹き込んだ音と吸い込んだ音に聞こえてなりませんでした。大編成のこの作品の演奏が終わって舞台転換の時間ができました。指揮者・大野和士さんが指揮棒をマイクに持ち替えて、話をしてくださいましたが、さきほどの「音」にも触れて、やはりマウスピースに息を吹き込んだり吸ったりしていたのがハッキリしました。「吸って出す音」というのも聴いているとわかるものなんですね。あ、それよりもシャリーノという作曲家は、自作のオペラの中で、こうした音(フルートのマウスピースに息を吹き込んだり吸ったりする)を、ちょうど心臓の音が緊張で高まっていくような場面で使っているそうです。しかも、シャリーノだけでなく、現代の作曲家には、特殊奏法を駆使してさまざまな情念とか精神的な動きを出そうとする「性癖」「性向」が認められるということです。この日の最大の収穫は、ノイズといえども、使われ方によっては感情の動きすら感じさせるほど音楽的なインパクトを残すことを再認識させられたことでした。それは、次の李作品でも同じことでした。

李圭鳳の《管弦楽のための讃歌》は、より良い世界への作曲者の願いや期待を調和させようとした試みだといいますから、ちょっと抽象的ではあります。が、韓国の音楽を音楽的な主要要素としたとプログラムに説明されています。そして、先ほどの大野さんの話を証明するかのように、特殊奏法が多用されている作品でした(客席から聴いているだけでは分からないような奏法もあるようですけど・・・)。ふつうの楽器の音と特殊奏法によるノイズとが一体になっていて、しかもそれが違和感なく聴こえてきました。自然や生命の息吹などが朧気ながら連想できる作品で、将来また演奏される機会があれば聴いてみたいです。

武智由香さんの新作は、ステージの上にはオーケストラとピアノ、チェレスタ、2台のハープが、また会場の数箇所にはトランペットとトロンボーン奏者たちが配置されていました。全体は3部に分かれているとのことですが、ゆったりと流れる時間を体験させてくれました。第2部ではピアノ、チェレスタ、2台のハープが活躍して、彩り豊かな響きになって心地よかったです。

指揮者が大野和士さん(今後、海外での活躍が増え、日本で聴ける機会が激減するだろうといわれています)だということもあって出かけたのですが、私は、神奈川フィルハーモニー管弦楽団を聴くのが実は初めて。オーケストラは爽やかな音で、好印象をもちました。
【2001年9月1日】


トップページへ
通いコン・・・サートへ
前のページへ
次のページへ