第44回 : 高橋アキ plays 武満徹(カザルスホール)

東芝EMIのEASTWORLDレーベルから「Aki TAKAHASHI plays TAKEMITSU(高橋アキ plays 武満徹)」というCDが出ました(TOCE-55237 2800円)。その「「CD発売記念コンサート」として、去る5月1日(火)、標記のコンサートがありました。武満のピアノ曲を一晩まとめて聴いたことなんてないなと思い、行ってきました。プログラムは、

@ロマンス(1948/49)  A2つのレント(1950)  B遮られない休息(1952-59)  Cピアノ・ディスタンス(1961)  Dフォー・アウェイ(1973)  E閉じた眼〜滝口修造の追憶に〜(1979)   F雨の樹素描(1982)  G閉じた眼U(1989)  Hリタニ〜マイケル・ヴァイナーの追憶に〜(1950/89)  I雨の樹素描U〜オリヴィエ・ッメシアンの追憶に〜(1992)  Jことものためのピアノ小品[T.微風 U.雲](1979/80)  Kさようなら(1954)[秋山邦晴・詞、武満徹・作曲、ピアノ・ソロ編曲・西村朗(委嘱初演/2001)]  Lゴールデン・スランバー(1969)[ハイパービートルズより、武満徹・編曲(1992) ]

ほぼ年代順に武満作品が並べられています。Jは、NHK教育テレビの『ピアノのおけいこ』という番組のために委嘱された作品。Kはピアノ曲ではない武満作品を編曲してもらった委嘱作品(今回が初演)。Lはビートルズの作品を武満が編曲したものです。アンコールには、誰の編曲だったかメモしないで帰ってきてしまいましたが、《死んだ男の残したものは》(もちろん、武満作品です!)で、これがまた絶品。じっくりと聴き入ってしまいました。

今回「えっ!!」と思ったのは、Aの《2つのレント》。この作品の楽譜は失われたものとばかり思っていましたが、再発見されたのですね。知りませんでした。1950年12月7日の「新作曲派協会第7回作品発表会」で初演された時には、山根銀二が「音楽以前」と切って捨てたことで有名でした。マイケル・ヴァイナーの追憶として書かれた《リタニ》は、《2つのレント》の原譜がなくなっていたので、当時残っていた若干のスケッチをもとに、記憶の糸をたぐりよせながら再作曲された作品だ、と読んだことがありました(ちなみに、私はこちらしか聴いたことがありませんでした)。今回、冒頭で触れたCDにも両方の作品が収められていますから、ゆっくりと聴き比べることができるようになりました。

武満のピアノ作品を堪能できた今回のコンサートでしたが、連休の谷間でなかったらもっと人が集まったろうに、という点だけが惜しいと思いました。
【2001年5月5日】


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