第40回 : 児玉桃ピアノリサイタル(東京オペラシティ コンサートホール)

春分の日に当たる2001年3月20日(火)14:00から、児玉桃ピアノリサイタルがありました。プログラムは

   ドビュッシー:子供の領分
      T.グラドゥス・アド・パルナッスム博士 − U.像の子守歌 −V.人形のセレナード
      W.雪はおどる − X.小さな羊飼い − Y.ゴリウォッグのケーク・ウォーク

   ドビュッシー:スケッチ帳より
   ドビュッシー:仮面
   ドビュッシー:版画
      T.塔 − U.グラナダの夕暮れ − V.雨の庭
   ドビュッシー:喜びの島
   ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
   ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》
      プロムナード − T.こびと − U.古城 − V.チュイルリー − W.ビドロ
      X.殻をつけたひなどりのバレエ − Y.サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
      Z.リモージュの市場 − [.カタコンブ―古代ローマの墓
      \.鶏の足の上の小屋 − ].キエフの大門


と、前半はドビュッシーでまとめ、後半の目玉は《展覧会の絵》が置かれていました。このプログラムを見て、私は聴きに行こうか、それともやめようかと迷いました。ドビュッシーとムソルグスキーがマッチするものかどうか少しばかり疑問でしたし、どうせなら、ドビュッシーとラヴェル、フォーレあたりで構成したフランスもののプロならいいのに、なんて思ったものですから。でも、行って、満足して帰ってきました。

まず《展覧会の絵》の感想から始めましょう。<プロムナード>の出だしから、明るく、やや軽めの音で、はっきりとそして気持ち速めかなと思えるテンポ(アシュケナージのCDが記憶にあったもので・・・)で、演奏は始まりました。一曲一曲の性格を弾き分けているのは当然ながら、全体を通じて、明るくやや軽めの音を聴くことができました。また、主旋律のみを強調して演奏するのではなくて、絡んでくる声部を時に強調して聴かせていました。そんなわけで、聴き手の側でも最後まで息を抜くことができない、スリリングな演奏を楽しみました。

前半のドビュッシーは、《子供の領分》だけが1909年の作品で、あとはすべて1903年と1904年の作品です。そこに特別な意味が付加されているかどうかは、私にはわかりません。《版画》のように異国への思いがこめられた作品も演奏されましたが、《仮面(マスク)》や《喜びの島》のように、18世紀フランスの画家ヴァト―などが描いた野外での「雅びな宴」(フェット・ギャラント)を彷彿とさせる作品も演奏されました。たとえば《喜びの島》は、ヴァト―の代表作とされる「シテール島の船出」をもとにした作品だというのです。私は、従来こうした解説を「ふーん」という感じで読み飛ばしていたようです。今回は、関連サイトを探してみましたので、よろしければ開けてご覧になってください。

Web Gallery of Art
手順:@Quick Index をクリック ⇒ AWをクリック ⇒ BWATTEAUをクリック ⇒ CWATTEAU, Antoineをクリック ⇒ DThe Embarkation for Cythera (←これです!)をクリック

今回の演奏をもとに、《喜びの島》が、愛の女神アフロディテゆかりの地シテール島に集う男女を題材にした曲だったんだ、と認識を新たにすることができました。これまでは、どこか不思議な曲だな、という印象があったので、一歩ドビュッシーに近づけたかなという気になります。

ドビュッシーの演奏でも、明るくやや軽めの音が聴き取れましたが、加えて柔らかな響きも。50分弱、ドビュッシーのピアノ曲に浸って、来た甲斐があった(少しオーバーでしょうか?)と実感しました。

余談を少し書かせてください。別の箇所で触れた奥田稔著『やさしい花粉症の自己管理』(医薬ジャーナル社 2000年)の、「民間療法」という項で、著者は、民間療法の効果について概ね疑わしいというスタンスを取り、試さない方が安全、と結んでいます。しかし、いくつの項目には<多少効果のある可能性あり>とする印が付けられているのですが、クラシック音楽で心を鎮める、というのもその一つに含まれます。実は、この意味もあってこのリサイタルに行こうと決めました(汗)。極度に症状がひどくない方は、試してみるのもいいかもしれません。かくいう私は、コンサート中でもマスクを外さない(くしゃみの防止のつもり)、演奏の開始前にポケットティッシュからペーパーを2、3枚あらかじめ抜いてポケットにしまうか手にもつかする(音の防止のためです)、などを心がけています。ご参考までに・・・。
【2001年3月22日】


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