第34回 : ブリテンの『真夏の夜の夢』(オーチャードホール)

暑い日が続いて参ってしまいますが、そんななか二期会がブリテンのオペラ『真夏の夜の夢』を取り上げました。2000年8月4日(金)、5日(土)、6日(日)の3日間でしたが、私は5日(土)の公演を見に行きました。原作はもちろんシェイクスピア。台本も、シェイクスピアのオリジナルから抜いてきたんだそうです。
ちなみに次のサイトには、シェイクスピアの全作品(英語)が電子テキストで読めるようになっています。
The complete works by William Shakespeare (http://www.shakespeare.sk/)

まず、スタッフとキャストのご紹介から始めましょう。

指揮 若杉弘
演出 加藤直
オベロン 三橋千鶴 シーシアス 大澤健
タイタニア 松薗まゆみ ヒポリタ 戸邊祐子
ライサンダー 井ノ上了吏 ボトム 小鉄和弘
ハーミア 小畑朱美 パック 内田紳一郎
ディミトリウス 青戸知
ヘレナ 澤畑恵美
合唱 二期会合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー室内管弦楽団

舞台は、とてもシンプルなそれでした。舞台手前の中央から上手にかけて、まぁるい台が据えられています。その奥に、その時の状況に応じて月が出たりなくなったり。光線もシンボライズされて単純化されていました。
もう一つ特徴的なことは、舞台からオーケストラピットにかけて、土星の輪かドーナツの輪を半分に切ったような通路が用意されていました。これも有効に使われていましたね。

このオペラは、どたばたがあって最後はハッピーエンドという筋書きです。
場所はアテネおよびその近郊の森。アテネの大公シーシアスとその婚約者ヒポリタの婚礼が迫っていて、職人たちが祝いの田舎芝居を披露しようとあれこれ思案しています。ハイソサイティの市民に属するライサンダー(男)とハーミア(女)はラブラブの関係にあります。ところがディミトリウス(男)がハーミアに横恋慕。ヘレナ(女)はディミトリウスにぞっこんです。ここに登場するのが、妖精の世界の王様オベロンと王女タイタニアです。この二人(というんでしょうか??)は、夫婦喧嘩をして仲たがいしています。
オベロンは、いたずら好きの妖精パックに命じ、タイタニアに惚れ薬をふりかけ、とんでもないものに惚れさせ一泡吹かせようともくろみます(そのあと仲直りしようという魂胆はみえみえです)。それはいいのですが、もともと仲が良かったディミトリウスとヘレナを相思相愛の関係に戻そうとして、パックに薬をふりかけるよう命じます。
ところが、顔もわからずにそれらしき男を捜していたパックは、なんとライサンダーに薬をかけてしまいます。そのライサンダーは、おかげでヘレナに惚れこみ事態は複雑なことに。そうと分ったときに、オベロンはまじないをかけて、ディミトリウスがヘレナを愛するようにしてやります。

第2幕。この4人の掛け合いが展開される箇所は、大いに楽しめました。急に二人の男たちから言い寄られるようになったヘレナは、二人の男たちが組んで、自分をからかっているのだと思い込みます。さらに、ハーミアまでもグルになっていると思って喧嘩をします。ハーミアも負けていません。このあたりのやりとりが、なんとも可笑しくてたまりませんでした。

ところで、この公演は当初、日本語で行なわれる予定でしたが5月になって原語(=英語)で字幕つきと、上演形態が変更になりました。歌われた英語ですが、私の英語力が不足していて、よくわからないところが多いのが残念でした。同じブリテンの作品で『ヴェニスに死す』を東京室内歌劇場が上演したときは、英語がもう少し伝わってきたように思いましたが、まあ、作品も違うことですし、しかたありません。

それにしても、妖精を登場させるというのは卓抜したアイディアですね。以前、この本を読んだときに、私はパックを若くていたずら好きな妖精というイメージでとらえました。今回のパックは好印象をもちましたが、でもやや中年のイメージはぬぐえませんでした(ちょっと残念)。
もう一つ、これらのことが起こった一晩の出来事を「夢」として処理してしまうのも、洒落ています。

ハッピーエンドの場面は、アテネの大公が婚礼をとりおこなうのと同時に、2組のカップル(ライサンダーとハーミア、それにディミトリウスとヘレナ)も婚礼を挙げるというものです。もちろん、これ以前にオベロンとタイタニアは、とっくに仲直りしています。
いたずら好きの妖精は3組のカップルの仲を、ワン・パックにして修復してあげたようです・・・。

全篇を通してきれいな音楽で満ち溢れていて、暑い季節であることも、一時忘れさせてくれました。いつかまた見たいオペラです。
【2000年8月6日記】


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