第32回 : Prospect 2000-2002 第1回
250年の時を超えて(紀尾井ホール)
2000年7月12日(水)、紀尾井ホールに行きました。はじめに、当夜のプログラムと演奏者からご紹介します。
J.S.バッハ 「音楽の捧げもの」BWV.1079より”6声のリチェルカーレ”
(中川俊郎= ピアノ)
クルシェネック 9つの独奏楽器のたねの交響的音楽
op.11
(アール・レスピラン 高関健=指揮)
金子仁美 「グリゼイの墓」 〜室内オーケストラのための
〜
(アール・レスピラン 高関健
− 指揮)
西村朗 オーボエ協奏曲「迦楼羅(かるら)」(2000)
(トーマス・インデアミューレ
= オーボエ アール・レスピラン 高関健=指揮)
ウェーベルン 9つの楽器のための協奏曲
op.24
(アール・レスピラン 高関健=指揮)
J.S.バッハ/ウェーベルン 「音楽の捧げもの」BWV.1079より”6声のリチェルカーレ”
(アール・レスピラン 高関健=指揮)
今年から、大阪のいずみホール、名古屋のしらかわホール、それに紀尾井ホールの3ホールが新しい共同プロジェクトを始めました。今回のコンサートに則して言えば、まず3ホール共同で、金子さんと西村さんに新作を委嘱します。そして、3つのホールで、金子さんと西村さんの新作を含むプログラムを組みます。大阪と東京とでは、これら2作品以外は異なる作品を演奏するようです。さらに、演奏団体と指揮者もそれぞれのホールで違うのだそうです。こうして、同じ新作がほぼ同時期に、異なる会場(土地)で異なる演奏者によって演奏されるわけですが、私は、こうした試みを誰が思いついたのだろう、と感心してしまいました。
バッハが取り上げられているのは、言うまでもありません、今年が没後250年にあたる記念の年だからですね。実はクルシェネックも1900年生まれなので、生誕100年にあたるのです。この2人の作品も取り上げられ、それにウェーベルン。しかも、クルシェネックとウェーベルンは、9つの楽器のための作品です。興味深いプログラムです。
金子仁美さんの作品は、文章で言えば、何かテーマがあってそれについて書くのではなく、文それ自体にどう取り組んだらよいかと追求する、いわば方法のメカニズムの探求だといいます。作品の冒頭部分など、弦楽器が弓の背を使ったのか、それとも駒の内側を弾いたのか、私の席からはわかりませんでしたけれど、通常の弦の響きではなくて、スーというような響きがしたものでした。それに続く管楽器も、各楽器の音色を出すのではなくて息を吹き込む音を出すというような工夫がこらされていて、やがて、違う工夫が展開されていきました。
西村朗さんの作品は、オーボエ独奏の音型やトリル、さらにはゆったりとしたヴィブラートに至るまで、意味をもって聴こえてきます。バックの室内オケも同様で、奈良・興福寺にあるという、この鳥人の像を漠然とイメージしながら聴くことができました。この日、一番惹かれたのは、この曲でした。
このプロジェクト、今年が第1回ですが、来年、再来年と楽しみです。
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