第31回 : わが心のボヘミア 〜 紀尾井アンサンブル Vol.3 〜(紀尾井ホール)

きょう(2000年6月24日)足を運んだコンサートは、澤和樹さんのプロデュースによるもので、ドヴォルザークの弦楽器の室内楽が集められていました。まず、今夕のプログラムからご覧ください。

ドヴォルザーク  弦楽三重奏曲 ハ長調 op.74
           
ヴァイオリン:玉井菜採、山本はづき ヴィオラ:澤和樹
ドヴォルザーク  弦楽五重奏曲 第3番 変ホ長調 op.97
           
ヴァイオリン:小川有紀子、米谷彩子 ヴィオラ:篠崎友美、中村智香子 チェロ:林俊昭
ドヴォルザーク  弦楽五重奏曲 第2番 ト長調 op.77
           
ヴァイオリン:澤和樹、鎌田泉 ヴィオラ:馬渕昌子 チェロ:林俊昭 コントラバス:河原泰則

あの超有名な「アメリカ」は含まれていませんね。会場の入りは、1階や2階のセンター席でもけっこう空席が見出せますし、私が座った2階のサイド席などは、左右どちらも10人以内・・・。やはり地味なプログラミングとみられるからに違いありません。

1曲目は、1887年の作品で友人の2人のヴァイオリニストのために書き、ドヴォルザーク自身がヴィオラを受け持って同年、プラハで初演されたそうです。ふと思ったのですが、この作品で澤さんがヴィオラを受け持たれたのは、ドヴォルザークへの澤さんの共感の現れかもしれないと感じ取ったのですが、考えすぎでしょうか? 3人のアンサンブルとはいえ、気持ちよく楽器が鳴り響き、第1ヴァイオリンを中心とした「歌」が印象的でした。2曲目は、渡米した翌年の1893年に書かれた作品で、1894年に初演されました。プログラムの解説によれば、アメリカ・インディアンの音楽語法と母国のチェコ音楽とを見事に融合させた、とあります。ここでも「歌」が印象に残りますが、1曲目や3曲目と比べても確かに違いのある旋律があちこちにちりばめられていました。ヴィオラの活躍が目立ちましたね。休憩後の3曲目は、1875年の作品です。これも編成にひとくせ(?)あります。1楽章の冒頭は、チェロとコントラバスのユニゾンで始まります。驚くというよりは、やっぱりという感じでしたけれど(笑)。それはともかく、この曲は、旋律の魅力では2曲目に一歩譲るかなと思うのですが、演奏は響きが厚くて聴き応えがありました。

いずれの演奏も、作品に対する共感がこもったものに思われました。当然のことながら、すべての演奏に大きな拍手が送られました。話は横道にそれますが、1年半ほど前に、ある弦楽四重奏団がドヴォルザークの普段演奏されない作品から一つの楽章を取り上げてアンコールで弾きました。ゆっくりとしたその曲は、涙が出そうなほど、哀愁に満ちたものでした。私は、聴けてよかったという満足感と知らなかったという後悔(まあ、ちょっと大げさですけど)が入り混じった気持ちを味わったわけです。この作曲家には、このまま眠らせておいてはもったいないような作品が、きっとまだまだあるに違いないと思うようになり、今回のコンサートを知ったときには、よし行ってみようと思いました。そして充実した時間を過ごして帰宅。ぜひ、続編を期待したいと思います。

さいごに余談を。きょう、会場内ではチェコのガラス作家の作品が2階エントランスで展示され、またボヘミアングラスの即売が1回で開催されていました。さらに、これも特別なことなのでしょうが、チェコの有名なビール、ピルスナー・ウルケルが喫茶コーナーで販売されていたのです!! 気付くのが遅れて、飲み損ねました。これだけが、きょう残念に思ったことでした(トホホ)。
【2000年6月24日記】


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