第28回 : 現代日本オーケストラ名曲の夕べ(東京文化会館大ホール)

2000年4月24日(月)、日本オーケストラ連盟設立10周年を記念するコンサートがありました。演奏はオール・ジャパン・シンフォニー・オーケストラという、連盟加盟のオーケストラ・メンバーによる特別編成オーケストラでした。

プログラムは、
  岩代太郎  世界の一番遠い土地へ(ソプラノ・サクソフォーン=福本信一郎、指揮=小泉和裕)
  西村朗    光の雅歌(指揮=小泉和裕)
  吉松隆    トロンボーン協奏曲「オリオン・マシーン」(トロンボーン=箱山芳樹、指揮=渡邊一正)
  湯浅譲二  ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン=戸田弥生、指揮=渡邊一正)
  三善晃    オーケストラのための焉歌・波摘み(指揮=秋山和慶)
という5曲。いずれも1990年代に初演されたものから選んだプログラムです。

私は、5曲とも初めて聴きました。しかし、たとえば吉松作品は、初演のときに風邪をひいて聴けなったり、湯浅作品も何度か聴くチャンスを逃したりしました。ですからこの2曲は、やっと聴く機会を「つかまえた!」といった感じでしたし、ほかの作品も比較的新しいものばかりで、楽しみにこの日を待っていました。

開演は午後6時30分。通常のオーケストラのコンサートとしては少々早めかな、という印象をもちましたが、5曲の演奏をこなすとなると止むを得ません。当日は、吉松隆さんが聞き手となって、各曲の演奏の前に、作曲者に5〜6分のインタビューをするかたちをとりました。曲によって、ステージのセッティングを変えなくてはなりませんから、これは良いアイディアだったと思います。

ソプラノ・サクソフォーンとオーケストラの響きに身を任せて、気持ちよく聴いた岩代作品(気持ちよくなりすぎて、途中で少し眠ってしまいましたm(__)m )。きらきら光る、その感じがオーケストラの響きから想像できた西村作品。当夜のプログラムは、順調に滑り出しました。

休憩を挟んで吉松作品。さきほど書いた経緯がありますから、トークの時からじっくり聞きました。作曲者によると、どんな曲にしようか考えながら、ふと空を見上げるとオリオン座が目に入ったといいます。その外枠を「箱」に、内側にある3つの帯状の星を「山」と見立てて「あっ、箱山さん」と思ったそうです(私は、思わす「マジか?」とつぶやいていました)。で、<ベテルギウス><ベラトリクス><サイフ><リゲル>など、オリオン座の星たちに付けられた名前が、曲の各部に付けられたようなのです。独奏トロンボーンが他の楽器と絡んで、随所でパート・ソロをとるところなどもあり、聴いていて面白かったですよ。それと途中、独奏者がステージの上を歩きながら演奏し、あろうことか指揮者のお尻に楽器のベルを向け、スライドをずらしながら「プ〜」。こうした仕掛けもあり、協奏曲を聴きながら、聴衆が笑ってしまうという趣向まで凝らされていました(「プ〜」ですが、私もずーーーっと昔、部活でトロンボーンをやってましたけど、こういうことは余りしませんでしたね。だって、友達なくしますから・・・)。いわゆるクラシック音楽といえども、堅苦しく重々しいばかり作品ばかりではないんだぞ、という好例!!

意外だったのは湯浅作品の演奏。この曲は武満徹さんの追悼として書かれた曲ですが、独奏もオーケストラも、ちょっと雑といっては悪いのですが、しっくりこない演奏という印象をもってしまいました。別の機会に、また聴きなおしたいです・・・

さいごの三善作品は、1944年8月に沖縄の疎開児童を乗せた対馬丸という船が遭難し、載っていた12歳の子どもたちが全員亡くなった、悲惨な出来事をとりあげ、子どもたちを呑み込む海の描写が続いたあと、最期を迎えた児童たちの耳に届いたであろう子守唄で曲が閉じられる、そういう作品でした。1944年に亡くなった子どもたちと三善晃さんとは同い年だということです。感銘深い作品でした。

こうして日本人作品のみのプログラムで一晩のコンサートを組んだ、日本オーケストラ連盟の記念コンサートでしたが、会場には次のような掲示がありました。
それは、日本音楽著作権協会が使用料の大幅値上げをしようとしていることへの反対表明でした。有名なところでは、ストラヴィンスキーの「春の祭典」「「火の鳥」「ペトルーシュカ」、シベリウスの「フィンランディア」「ヴァイオリン協奏曲」、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」「ノーヴェンバー・ステップス」など、日本音楽著作権協会が管理している楽曲は、たくさんあります。その使用料が大幅に値上げされると、オーケストラが20世紀の音楽や同時代の音楽をプログラムに取り入れていくことが困難になり、ひいては音楽文化の衰退につながるというわけです。
今回初めて、「大幅値上げ」のことを知ったばかりですので、これ以上突っ込んで書くことは控えますが、気になる文章でした。
【2000年4月26日記】


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