第27回 : R.シュトラウスの「サロメ」(新国立劇場 オペラ劇場)

昨年の8月、東フィルがオペラ・コンチェルタンテ・シリーズで「サロメ」を取り上げた時に、聴きに行きました。面白かったです。この4月11日(火)〜17日(月)にかけて、新国立劇場で待望の「サロメ」の公演があり、私は初日(11日)に足を運びました。

まずは、初日の主なキャストから。
指揮: 若杉弘  演出: アウグスト・エヴァーディング
キャスト: シンシア・マークリス(サロメ) ヨーゼフ・ホプファーヴィーザー(ヘロデ) ネリ-・ボシュコワ(ヘロディアス) 福島明也(ヨハナーン) 成田勝美(ナラボート) 
管弦楽: 新星日本交響楽団

開演5分前に3階正面(端のほう)の席に着席。オケ・ピットを見るとコントラバスが8人、目に入ってきて、充実したオーケストラの響きを期待しました。そうこうするうち、会場が一度真っ暗闇になり、ほどなく、舞台にボワ〜ッと照明が当たりました。オペラのスタートです。

ドラマがやや進行すると、サロメの登場となります。サロメは、舞台中央の手前にある古井戸の中にいる、予言者ヨハナーンに興味を示し、ナラボートに予言者と会わせるよう迫ります。ナラボートはサロメに気があるだけに、断りきれなくなります。そしてヨハナーンの登場。サロメは執拗にヨハナーンに迫りますが、頑としてヨハナーンはこれを受けつけず、やがて古井戸の中に戻ります。このあたりが、見所の一つ。でも、ナラボートとヨハナーンに対するサロメの歌唱が、少し固い感じを受けました。ヨハナーンは、歌も演技も立派だったと思います。

ヘロデ王とヘロディアス王妃が館から外へ出てきます。王妃と連れ立っていても、ヘロデはサロメに色目を使います。ヘロデは、サロメに踊りを薦め、望みどおりの報酬を与えると約束します。ここで、有名な「7枚のヴェールのサロメの踊り」。腕時計を見たわけではありませんが、10分近く、サロメ役のシンシア・マークリスの熱演が続きました。サロメはヴェールを少しずつ身体から外していきます。私も、その踊りには目がくぎ付けになりました。そして、踊りの最後には・・・、ヴェールは、すべてなくなりました。もちろん、オーケストラも素晴らしかったです\(^o^)/ 

踊り終わったサロメが求めたものは、皿に乗せたヨハナーンの首!! それだけはだめだ、他のものなら何でもやる、というヘロデ王と、ヨハナーンの首と何度も繰り返すサロメのやりとりが続きます。
ヘロデ王は、どこかで予言者ヨハナーンが聖者かもしれないという畏れをもっているのが分かります。俗物のヘロデ王に、大人の分別が顔をのぞかせ、反対にサロメは、いわばご都合主義の大人の分別などいっこうにお構いなしです。確かに常軌は逸しているでしょうが、妙に一途なのです。この両者のやりとりは、どこまで行っても平行線。こうしてヘロデ王が折れるまでの間が、とても緊迫したやりとりになっていて、私にはこの日一番印象に残った箇所でした。

やがて、ヨハナーンの首が銀の皿に載せられてサロメの前に運ばれてきます。ここから先のサロメは、一生懸命歌ったり演技したりしているのですが、踊り → ヘロデ王とのやりとりを経て、ようやく手にいれたヨハナーンの首(変な言い方ですですけれど!!)なのですから、ただ一生懸命というのではなくて、もっと恍惚とした雰囲気が出ても良かったのではないでしょうか? ああ、やっとサロメが恍惚としてきたなと思った瞬間、ヘロデ王が「あの女(=サロメ)を殺せ!」と命じ、オペラの幕が降りました・・・

初めて実演を見ましたが、これは、やはり実演に接したいオペラです。
【2000年4月17日記】


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