第21回 : 東京佼成ウィンドオーケストラ第65回定期演奏会(東京芸術劇場大ホール)

1999年12月11日、実に久しぶりに東京佼成ウィンドオーケストラを聴きに行きました(指揮:岩城宏之)。私は吹奏楽のコンサートに、正直なところほとんど行っていません。そのわけは、プログラムを飾る多くの曲がクラシックの名曲をアレンジしたものだからだと思います。

では今回のプログラムはというと、
『久遠』(1999) 星吉昭(作曲)、伊藤康英(編曲)、浪宏友(作詞)
『英雄の時代』(1998) 長生淳(作曲)
『ソング・アンド・ダンス』(1995) 鈴木英史(作曲)
『トーンプレロマス55』(1955) 黛敏郎(作曲)
『打楽器とウィンド・オーケストラのための協奏曲』(1965) 黛敏郎(作曲)
このように、吹奏楽のオリジナル作品、それも日本人作曲家の作品で固めたコンサートだったのです。オーケストラの定期演奏会でこうしたプログラムを組んだときなどは、客足がグッと減ることが多いものですが、会場を見渡すと意外と(失礼!)席は埋まっています。

1曲目の『久遠』は立正佼成会の開祖、庭野日敬氏の生涯への讃歌という性格を有し、佼成合唱団が加わっての演奏でした。会に関係する皆さんにとっては、この曲が演奏されること自体がひとつの事件ともいえる重みをもっていたらしいのですが、関係のない私にとっては、どうも・・・
『英雄の時代』はコンサート・マスター、須川展也氏を独奏者に迎えての演奏でした。須川さんの独奏は、たっぷり歌うのが特徴で聴いていて心地よいですね。休憩をはさんだのちの『ソング・アンド・ダンス』は第1曲「プレリュード、アンティフォナル・コールT」−第2曲「ソング・アンド・ダンス」−第3曲「ポストリュード、アンティフォナル・コールU」という3部分からなる活気に満ちた作品でした。作曲者の長生さんは1964年、鈴木さんは1965年の生まれといいますから、まだ30台半ばの方たちです。これからも、個性のある吹奏楽のオリジナル作品に手を染めてほしいものです。
さいごの2曲は黛敏郎の作品です。『トーンプレロマス55』はミュージカル・ソウを伴う曲(独奏:萩原誠)で、トランペットがビッグバンド風の音の出し方をしたり、ティンパニを手でたたいたりする個所があったり、サイレンの音まで混じったりしています。とてもヴァイタリティにあふれた作品でした。さいごは、先の作品から数えて10年後に作曲された『打楽器とウィンド・オーケストラのための協奏曲』です。協奏曲という割には、打楽器とウィンド・オーケストラの響きがバランスよく聴こえてきてました。

さて、この日会場で配布された冊子のプログラムに載っていた岩城・須川対談が面白く読めました。詳しく紹介する余裕はないのですが、岩城さんはコンポーザー=イン=レジデンス制度をとってメジャーな作曲家の作品をもっと増やそうと提言なさっています。須川さんもオケの内部で前向きなコンセンサスを形成していきたいと答えています。大いに期待したいと思います。
【1999年12月14日記】


トップページへ
通いコン・・・サート
前のページへ
次のページへ