第14回 : 流亞風弦楽四重奏團を聴く(こまばエミナース)

1911年生まれの作曲家、安部幸明さんが米寿を迎えられました。「流亞風弦楽四重奏團――日本の作曲家による室内楽連續演奏會-2」は、10月3日、こまばエミナースで安部さんの作品を特集しました。プログラムは
弦楽四重奏曲第1番(1935年)
弦楽四重奏曲第15番(1992年)
チェロまたはヴァイオリンのための「夢」/J.C.バルトレット作曲 安部幸明編曲
9楽器のための嬉遊曲(1954年)
という4曲(1曲だけ編曲ものが入っていました)でした。

話を進める前に、演奏団体について一言。流亞風弦楽四重奏團のメンバーは、齋藤真知亜、大林修子(vn)、井野邉大輔(va)、藤森亮一(vc)という、いずれもN響に在籍する4人の方々で、今年の3月、山田耕筰の室内楽作品でこの連続演奏会をスタートさせました。
今回は9楽器のための作品があり、4人のほかに斎藤美香(ピアノ)、細川順三(フルート)、森枝繭子(オーボエ)、加藤明久(クラリネット)、森田格(ファゴット)といった皆さんが参加されました。

安部さんの作風は、ご自身の弁によれば、調性があり、3楽章あるいは4楽章から成るソナタ形式の曲を作ることを好んだそうです。そしてアレグロを書くのを最も好み、歌曲が少ないのもこれに由来してるかもしれないと述べていらっしゃいます(『安部幸明』クリティーク80編著 音楽の世界社 1997)。また、弦楽四重奏曲を現在までに15曲残していることも特筆に価するでしょう(ベートーヴェンみたいでしょ)。

弦楽四重奏曲第1番は、4楽章の作品でした。第1楽章・アレグロ、第2楽章・メヌエット風、第3楽章・歌謡形式(アンダンテ)、第4楽章・プレストという構成なのですが、後にメヌエットの代りにスケルツォにするようになったそうです。第15番は57年後に書かれた作品で、こちらは3楽章、ベルリン弦楽四重奏団が初演しています。どちらも若々しいエネルギーをもった曲だと思いました。
休憩を挟んで,演奏された「夢」は、若いころ印象に強く残った曲だったそうで、57年の空白期間を経てこの曲のテープを入手し、編曲なさったとのこと。ロマンティックな小品でした。
最後の「9楽器のための嬉遊曲」は、弦楽四重奏、ピアノ、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットという編成でした。何より華やかで、楽しい雰囲気をもった作品でした。この曲をコンサートの最後に置いたのも、ひょっとしたら米寿を、少し大きめの編成の明るい曲でお祝いしたい気持ちの現れだったのかもしれません。

流亞風弦楽四重奏團には、安部幸明さんの弦楽四重奏曲をすべて演奏して欲しいと思っています。
【1999年10月4日記】


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