第10回 : サマーフェスティバル1999の中国特集(サントリーホール)

夏恒例となったサントリーホールのサマーフェスティバルですが、そのなかで<音楽の現在〜海外の潮流〜>は今年、作曲家タン・ドゥンの企画協力を得て2夜の中国特集が実現しました。8月26日(木)が室内楽(小ホール)、28日(土)が管弦楽の演奏でした。
今回紹介されたのは、2夜を通じて11人の作曲家、12作品ということになります。まずは、両日のプログラムから。

8月26日(室内楽)は、
ジャ・ダカン(賈 達群):《言葉のない歌》〜打楽器ソロのための(1997)
ス・コン(蘇 聰):弦楽四重奏曲(1997) 日本初演
ハン・コン(韓 永):《光の壁》〜ニ胡、ピアノと打楽器のための(1998) 日本初演
シュウ・シュウヤ:《虚/実》〜様様な弦楽器とピアノ、ハープ、打楽器のための(1996/97) 日本初演
タン・ドゥン(譚 盾):ピパと弦楽四重奏曲のための協奏曲(1999) 部分初演
ク・シャオソン(瞿 小松):"寂(Ji)"No.7《静かな水》〜ヴァイオリン・ソロのための(1997)
チュウ・ロン(周 龍):《石窟傳奇》〜ニ胡と打楽器四重奏のための(1998) 日本初演

8月28日(管弦楽)は、
チェン・イ(陳 怡):《モメンタム(動勢)》(1998) 日本初演
ブライト・シェン(盛 中亮):《はがき》(1998) 日本初演
チェン・キガン(陳 其鋼):《五行(水・木・火・土・金)》(1999) 日本初演
チェン・ユアンリン(陳 遠林):序曲 ― ラプソディ(1999) 世界初演
タン・ドゥン(譚 盾):ウォーター・パーカッションとオーケストラのための協奏曲〜武満徹の追憶に(1999) 日本初演

11人の作曲家の多くは1950年代に生まれ、文化大革命で「下放」(都市から農山村に送られた措置)された経験をもった人たちもいます。また、欧米に留学して勉強を積んだことが共通しています。さらに現在欧米を拠点に活躍している人たちも多いです。
両日のコンサートとも、作曲されてからそれほど時間が経っていない新鮮な作品ばかりが紹介されました。日本初演が多い所以でもあります。また、少なくとも私にとっては「あの曲は興味深く聴けたけれど、こちらの曲はとても退屈した」ということがなかったのも驚異でした。

26日は実際に演奏が始まったのが午後7時2分か3分、終わったのが9時30分ころでした。長時間のコンサートでしたが、これでも終演時間が遅くなりすぎぬようにと、4楽章から成るタン・ドゥン作品の2つの楽章を割愛したほどだったのです。その配慮は嬉しかったのですが、皮肉なことにタン・ドゥンの作品はいろいろな工夫が凝らされていて集中して聴けたのです。特に中国の琵琶が弱音で奏でる箇所などは、聴き手の私が琵琶に吸い込まれそうになる気すらしたほどです。それだけに、近い将来、ぜひ完全な形で全曲を聴いてみたいと思いました。

28日の演奏を受け持ったのは東京都交響楽団とタン・ドゥン(指揮)。コンサート・マスターは3月まで都響に在籍したパン・インリン(潘寅林)が務めました。多くの作品で、力強い響きから柔らかな曲想に移るときなどに、共感を覚えることがありました。一番興味深く聴いたのはタン・ドゥンの作品です。ウォーター・パーカッションに初めて接しました。大きな洗面器のような形をした容器に水が張られて、そこに別の物体を突っ込んだり、板のようなものを乗せて音を出したりしているように見受けました。なんともユニークで印象に残りました。
この日の終演はやや早く、9時20分ころだったでしょうか。

好企画に拍手したいと思います。


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