第9回 : 夏の夜の「サロメ」(オーチャードホール)

1999年8月20日、今月初めてコンサートに足を運びました。会場はオーチャードホール、東京フィルハーモニー交響楽団 オペラコンチェルタンテ・シリーズ 第18回で、リヒャルト・シュトラウスの「サロメ」が取り上げられました。

まず主なキャストから。
マグヌス・キーレ(ヘロデ)、西明美(ヘロディアス)、緑川まり(サロメ)、福島明也(ヨカナーン)、吉田浩之(ナラポート)、東京フィルハーモニー交響楽団、大野和士(指揮)といった面々で、サロメのダンスの箇所は、側嶋久記子がダンサーとして登場しました。

私は、原作を大学時代に岩波文庫の訳で読み、変な作品だなと感じた覚えがあります。しかし、その最後のあたりの箇所、サロメがヨカナーンの首に「キスするよ」というあたりは、ビアズリーの挿絵とも相俟って強烈に記憶にインプットされました。

今回の公演も、やはりハイライトは第1幕第4場。ヘロデとサロメのやりとりから、サロメのダンス。その後ヨカナーンの首を所望するシーン。ここでのヘロデとサロメのやりとりは緊張を極めたものでした。ヨカナーンの首を前に始まるサロメの独白とキス。これがまた、鬼気迫るものでした。ちなみにサロメは顔から衣装まで(髪の毛は別として)、全体が白で統一されているのですが、照明がサロメ一人を浮かび上がらせ、どろどろとした内容に逆らうかのように、視覚的にもそのコントラストを強調するのです。背筋が寒くなるといったら少し大げさですが、夏に「サロメ」を持ってきた意図も、ひょっとしてこんなところにあるのかなと想像してしまいました。そして最後のヘロデの命令で幕。
緑川まりさんの健闘が、とても光った一夜でした。

ちなみに、来年4月11日から17日まで、新国立劇場で「サロメ」のオペラ公演があるようですね。

「牡丹燈籠」は夏の出し物ですが、「サロメ」も違う意味でぞっとさせる内容をもつオペラです。両方に行って、ちょっと得した気分になりました。
【1999年8月21日記】



トップページへ
通いコン・・・サート
前のページへ
次のページへ