第7回 : 眠れなかった「ゴルトベルク変奏曲」(所沢ミューズ・キューブホール)

昼間、立川で仕事をしている私は、7月21日の午後、都内で大雨が降り、武蔵野線や南武線が止まったなどということは知りませんでした。それでも、仕事を終えたあとの電車で雨が降ってきたなと気づき、航空公園駅から会場の近くまで初めてバスを利用したのでした(運賃は100円!!)。

この日は、「バッハの宇宙 〜時を越える旅〜」の第3回、"バッハ大儲け? 眠れなくなる変奏曲"という演奏会で、武久源造さんのチェンバロ独奏です。曲は、もちろん「ゴルトベルク変奏曲」。なんでも当初予定されていた7月16日のチケットがあっという間に完売で、この日に追加公演が決まったということで、こちらも早々に完売になったそうですから、人気のほどが知れます。私は、ラッキーだったわけですね。

ホールに着くと、開場時間の前からけっこう長い人の列です。中に入ると、2台のチェンバロがステージにあります。1台はきれいに彩色を施したもの(フレミッシュ・タイプ)、もう1台は作りかけかなと思うくらい対照的なもの(ドイツ・タイプ)で、それぞれ楽器製作者のコンセプトが明瞭に出たものだと、あとのトークで聞きました。

定刻の午後7時を少し回ったころ、まず礒山雅先生がステージに登場しました。曲の概略などをお話になったあと、演奏者の武久源造さんが登場し、話に加わります。
武久さんは、いきなり埼玉県の名産品はハープシコードだと仰り会場を沸かせます。しかも2台のチェンバロを使って、変奏曲を3曲ずつ交互に弾き分けるのだというのですから二度びっくりしました。私は、てっきり音色の違いを、ちょっと紹介する程度かななどと想像していたものですから。
さらに武久さんは「今日は眠らせません」とも仰る。
この曲は、気持ち良く眠れるんじゃないかなと密かに期待してきた私は、それならば意地でも眠らせていただこうかと思ったほどでした。

途中、15分の休憩をはさんで全曲が演奏されましたが、私は前半で少しだけうとうとしかけただけ。けっきょく、しっかり聴いて帰ってきました。2台のチェンバロを用いて音色の差異を聴かせる趣向も成功していて、もし1台のチェンバロで全曲を演奏していたならば、私は心地よく眠りについていたろうに違いないと考えました。
第15変奏で区切りをつけて休憩をはさみ、華やかな第16変奏から後半をはじめた工夫も良かったと思います。

余談ですが、休憩時間には中学時代にさんざんご苦労をかけた担任のT先生をみつけて、ごあいさつ。久しぶりに話に花をさかせませした。
T先生は、ご自分もお住まいの西武線沿線にいいホールができたこと、さらに今回のように低料金で良い企画が行なわれていること、毎回トークが面白くためになることを挙げられて、今後予定されている分も含めて毎回足を運ぶのだと、楽しそうに仰っていました。

さて、眠りそこなった私は損したのでしょうか、得をしたのでしょうか??
【1999年7月22日記】


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