第6回 : 新交響楽団定期演奏会(サントリーホール)

去る7月11日、サントリーホールへでかけました。
会場へ入るとプログラムを渡されました。その表紙には"芥川也寸志 没後10年"と大きく書かれ、にこやかにタクトを振る芥川也寸志さんの写真が目に飛び込んできます。ああ、もう10年経つんだ、と思ってしまいました。
演奏曲目は、すべて芥川也寸志作品で、

◇ 交響三章 ― トリニタ・シンフォニカ(1948)
◇ 交響管絃楽のための音楽(1950)
◇ 絃楽のための三楽章 ― トリプティーク(1953)
◇ 交響曲第1番(1955)
◇ エローラ交響曲(1957/58)

以上のとおり、作曲年代順に演奏されました(指揮 飯守泰次郎)。
新交響楽団の演奏は、自分たちはこの曲をこう演奏したいんだと明確にわかる演奏で、感服しながら聴いていました。

『交響三章』は急−緩−急の三楽章からなり、第2楽章が生まれたばかりの長女に贈られたと思われるニントレッラ(子守唄)。『絃楽のための三楽章 ― トリプティーク』も急−緩−急の三楽章からなり、第2楽章がやはり娘のための子守唄。子守唄を贈られるなんて羨ましい限りです。ゆったりとしたこれらの子守唄には、じっくり耳を傾けて聴いていました。
『交響管絃楽のための音楽』は2つの楽章からなり、プロコフィエフやショスタコーヴィチらの影響も見られる作品でした。いま聴くと特別に新しい感じは受けませんが、1950年当時という年代を頭に置いて考えると、戦後まもない時期の若い作曲家たちが、それ以前には触れることもできなかった新鮮な刺激を受けながら作品を生み出していった、そういう一曲に違いないと思いました。
『交響曲第1番』ともなると、第1楽章のアンダンテや第3楽章などに聴き取れるように、やや重い感じが作品の中に入ってきます。
『エローラ交響曲』は独特の趣をもっています。1957年にインドのエローラ石窟院の第16窟のカイラーサナータ寺院を訪れて受けた衝撃が、この作品を生み出すきっかけとなったようです。

余談ですが子守唄の楽章を聴きながら、ふと『アダージョ』を集めて作ったカラヤンのCDを思い浮かべました。仮に日本人のオーケストラ作品から緩徐楽章やゆっくりした曲を集めてCDなどを作ったらどんなものができるのだろうか? ということを考えてしまったのです。もう一つ思ったのは、そういえばカラヤンも没後10年になるんだなということ。

さいきん、一年が経つのが早く感じるようになりました…
【1999年7月18日記】


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