第5回 : NHK交響楽団(東京オペラシティコンサートホール)

7月1日、東京オペラシティコンサートホールで行なわれた「TIME−日本のオーケストラの時」に、NHK交響楽団が登場しました(指揮:アラン・ギルバート)。
会場に着いて自分の席をみつけると、お隣りには最近までM音大の図書館に永くお勤めだった大先輩、Jさんがいらっしゃいます。なんという偶然かと嬉しくなりました。

さて、当日の演プログラムは
◇ ハイドン:交響曲第90番 ハ長調
◇ 西村朗:アルトサクソフォン協奏曲《エシ・イン・アニマ(魂の内なる存在)》
(東京オペラシティ文化財団委嘱作品・世界初演)
◇ コープランド:静かな都会
◇ メシアン:ミのための詩(オーケストラ版日本初演)

ハイドンの交響曲第90番は、第4楽章に楽しい仕掛けをもっていて、曲が終わったと思って聴衆が拍手を始めると、指揮者が客席のほうをチラリと見やり、また棒を振り始めるのです。当然、オーケストラは再び演奏を始め、今度は本当に終わったと思って拍手が起こると、またもや指揮者が客席のほうをチラリと見やってにやりとし、再び棒を振り始めます。完全に曲が終わってから、Jさんが一言「ハイドンのユーモアかな?」とおっしゃいました。ええ、私もそう思いました。

西村作品は、作曲者がプログラムに寄せた文章によれば「曲は、あるひとつの世界ないしは事象への音響のゲイト(門)が開くように始まる」とあります。この部分は、冒頭のオーケストラの短い演奏のことかと思われます。これに続いてアルトサクソフォンが静かに独奏を始め、全体としては、ゆったりとした感じの曲でした。なんと言ってもソロの須川展也に聴きほれました。この曲については、実は5月19日の「馬込勇ファゴット四大協奏曲の夕」で、こんなやりとりがありました。池辺晋一郎さんからサクソフォンの協奏曲は、いつできるのか? と質問を受けた西村さんが「あさって[=5月21日]の予定」とお答えになりました。写譜を終えてのことかかどうかは、ちょっとわかりませんでしたが、1ヵ月以上演奏者に練習の時間があるのは、作品の把握を深める意味から、とてもいいことだと思いますし、見事な演奏がそのことを証明していたように思えます。

休憩をはさんで、コープランドの『静かな都会』。1940年に書かれた、トランペットとイングリッシュ・ホルンの独奏を伴う弦楽オーケストラのための作品で、39年に書かれた劇音楽が原型だそうです。タイトルのとおり、静かで、少々孤独な趣をもった作品でした。

さいごはメシアンです。プログラムに書いてある"オーケストラ版"というのは伴奏のことです(独唱:浜田理恵)。1936年にピアノ伴奏版の歌曲集『ミのための詩』を書き、翌年、作曲者自身の手によってオーケストラ伴奏用に編曲されたそうです。フランス語がわからない私には、時折聞こえてくる単語(たとえばmaison とか Esprit とか )がポツリポツリという状態でしたから、宗教的な内容をもっているという内容まではわかりませんでした。残念。
【1999年7月5日】


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