第176回 : 奏楽堂特別展 明治の作曲家たち(2003年11月21日)

台東区芸術文化財団と日本近代音楽館の主催、東京藝術大学附属図書館の後援で、奏楽堂特別展として10月28日から行なわれている「明治の作曲家たち 〜 音楽の花ひらく頃」に行ってきました。会場は、もちろん旧東京音楽学校奏楽堂です。会期は11月30日(日)までですが、毎日、朝から夕方までオープンしているとは限りませんのでご注意ください(あとで日程表を載せましょう)。

この企画を知ったとき、「明治の作曲家たち」と複数なので、いったい何人登場するんだろうか、どだい私自身何人数え上げられるんだろうかと自問自答してみると、数人しか出てこなかったのです。なんとも情けない思いをしました。しかしチラシの表面に20人の音楽家と思しき人びとの顔写真があり、裏面にはその人たちの名前と読み方、それに生没年が記されていました。なんとも凝っているではないですか。それによると20人、実際会場に足を運んでみると、もう少し多くて、ざっと25人の作曲家たちに関わる展示物が一堂に集められていました。さて、その作曲家たちとは・・・

林廣守 四竈訥治 芝葛鎭 小山作之助 山田源一郎
伊澤修二 永井健子 幸田延 上眞行 納所辨次郎
田村虎蔵 シャルル・ルルー フランツ・エッケルト 鈴木米次郎 岡野貞一
瀬戸口藤吉 瀧 廉太郎 奥好義 多梅稚 小松耕輔
三善和氣 北村季晴 東儀鐡笛 山田耕筰

「そういえばそうだった」という名前もあれば、「初めまして」という名もありました。じっくり見て記憶に残った展示をいくつかご紹介しておきましょう。

多くの唱歌や唱歌集の楽譜が展示されていました。それらのうちのいくつかは、今日まで知られているものです。たとえば、《春の小川》《夏は来ぬ》《お正月》など。その一方、明治時代は日清、日露の戦争を経験もしたわけで、《婦人従軍歌》(1894年)《明治軍歌》(1894年)《戦友》(1905年)などなどが目にとまりました。「ここは御国を何百里」で有名な《戦友》は三善和氣の作曲ですね。この曲が特に有名なのですが、ほかに《出征》《露営》《負傷》などの曲も書いているのを知りました。

幸田延の《ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調》と《同 ニ短調》の自筆譜も複製が展示されていました。今年没後100年をむかえた瀧廉太郎は、お馴染みの《花》をはじめ、《Menuetto》と《憾》という2曲のピアノ曲の楽譜もありました。《荒城の月》については、オリジナルから山田耕筰が手を入れた楽譜まで数種が展示されていて、その移り変りが如実に示されていました。

話は横道にそれますが、昨年拙HPで国会図書館の「近代デジタル・アーカイヴズ」をとりあげた折に、私が検索した事例として北村季晴の《オトギ歌劇ドンブラコ:桃太郎》を取り上げました( こちら へどうぞ)。その現物もありましたし、長野県出身の人たちがよく歌う《信濃の国》が北村の作曲であることを、ここで初めて知りました。「都の西北早稲田の森に」と歌い出す《早稲田大学校歌》も1907年の作曲で明治時代の作品です。行く前は企画のタイトルから具体的なイメージが掴めなかった私でしたが、見終わってみると、断片的に知っていたことがらがより体系的な理解に深まって、頭の中が整理できたり、いくつかの発見があったりもして、有意義なものとなりました。

さて、もう一つ朗報があります。せっかく、このようにまとめられた展示なのですが、明治時代の作曲家群像の一端を、あとで活字でじっくり噛みしめたいと思いませんか? 実は、この展示会に登場してくる音楽家たちのプロフィール集が、日本近代音楽館のスタッフによって執筆され、まもなく刊行されます。私は会場で予約をしてきました。詳細は、日本近代音楽館(電話 03-3224-1584 )にお尋ねになると良いでしょう。

さて、冒頭で会期中の開館時間に注意していただきたい旨を記しましたので、その点を明記して、この稿を終わりにしましょう。

11月22日 閉館
11月23日 全日オープン(9:30〜16:30)
11月24日 月/祝 全日オープン(9:30〜16:30)
11月25日 閉館
11月26日 全日オープン(9:30〜16:30)
11月27日 全日オープン(9:30〜16:30)
11月28日 午前オープン(9:30〜11:30)
11月29日 午前オープン(9:30〜11:30)
11月30日 全日オープン(9:30〜16:30)



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