第120回 : CD「山田一雄室内楽作品集」(2001年9月20日)

去る8月13日に、ミッテンヴァルト・レーベルから『山田一雄(1912−1991)室内楽作品集』というCDが出ました。山田一雄さんは、10年前の8月13日に亡くなりましたから、その命日をまっての発売だったのでしょう。洋楽史の空白を埋めるこのレーベルの録音としては、昨年の山田耕筰に引き続いてのものとなりました。さっそく内容をご紹介しましょう。

山田一雄室内楽作品集  (MITTENWALD MTWD99006)
収録曲:

 1. ヴァイオリン・ソナタ Op.15(1940)
       [遠藤香奈子(vn)] 遠藤和歌子(pf)
 2. 無伴奏チェロ・ソナタ Op.10(1939)
       大友肇(vc)
 3. 弦楽四重奏曲第1番(1936)
       クァルテット・エクセルシオ
 4. 弦楽四重奏曲 「彼の随感から」(1935)
       @《海》   双紙正哉(vn) 大友肇(vc) (二重録音)
       A《唄》   クァルテット・エクセルシオ
       B《行進曲》  クァルテット・エクセルシオ メンバー + 山崎実(cb)
 5. 弦楽四重奏曲 「三つの古典的な断章」(1934)
       クァルテット・エクセルシオ
 6. ピアノ曲「闘争−短詩」(1931)
 7. ピアノ曲 日記「樹と性欲」(1934)
       井田久美子(pf)

価格: ¥2858(税抜き)

大雑把に見ると、このCDは作曲年の逆年代順に作品が収録されている観があります。どの作品も、伸びやかに演奏されており、清々しい気分で聴けました。《ヴァイオリン・ソナタ》《無伴奏チェロ・ソナタ》《弦楽四重奏曲第1番》ともに3楽章からなり、いずれも第2楽章がAdagio(個人的趣味ですが、弦楽四重奏曲第1番のそれは、とてもきれいでした)。これまで実演で接しえた声楽曲の《祖師谷より》や管弦楽曲の《交響的木曽》などと比べて、より抽象度の高い音楽を目指そうとしているかのようです。いずれにしても、これらの作品はすべて初録音だそうで、資料的価値も充分ありそうです。ただ、後半に収録された1934年以前の作品は、多少習作といった趣も残り、資料としてもっていて時々思い出したときに聴くかな、という感じでした。

本CDの解説によれば山田の「本格的な創作活動は、おおよそのところ1934年(昭和9年)から敗戦直前の1944年(昭和19年)の間に集中」していると書かれています。余談ですが、1992年9月に開催された「奏楽堂秋の特別展 − 日本の作曲家シリーズ2 − 山田一雄展」の配布資料、日本近代音楽館編『山田一雄年譜』を見ると、先の10年間を中心として、その前後も含め相当数の作品を残しています。まだ知られざる名曲や佳曲があるかもしれない気がしてなりません。


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