第97回: 北斎展(東京国立博物館 平成館)

北斎展は10月下旬から行われていましたが、その会期の最終日は今年の12月4日(日)です。「その日」は、もうだいぶ近づいてきました。私自身が本展に行ったのが会期の後半に入ってからだったものですから、この時期のご紹介となりました。休館日は月曜日、観覧料金は大人当日1500円です。料金について補足すると、私は日経新聞社が用意した本展のホームページ(こちらです→ http://www.hokusaiten.jp/index_jp.html )につなぎました。そこには、自分の携帯電話に北斎の名画をダウンロードできるしかけがあり、その1枚を携帯の待ち受け画面としました。それを会場で入場券を購入するときに係員に見せて100円割引してもらったのです。2人で行かれる皆さんは「当日2回券」なるものを購入すると2600円、かなりお得になります。ただし、この展覧会はとても人気が高いので、土曜日の午後に行った私は入場券を買うまでに約15分、敷地内に入って平成館に入場するまでにさらに35分ほど待ちました。もちろん、平成館の室内も。土日に行かれる場合は、かなりの混雑を覚悟しておいた方が良いでしょう。

展覧会の構成は、

第1期 「春朗(しゅんろう)期」 20歳〜
  北斎の画壇デビュー以降、初期の作品群
第2期 「宗理(そうり)期」   36歳頃〜
  琳派の「俵屋宗理」を襲名した時期
第3期 「葛飾北斎期」 46歳頃〜
  読本挿絵の第一人者となった時期
第4期 「戴斗(たいと)期」 51歳頃〜
  『北斎漫画』誕生の時期
第5期 「為一(いいつ)期」 61歳頃〜
  『冨嶽三十六景』誕生
  風景、花鳥、古典や怪談を描いた版画を続々発表した時期
第6期 「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)期」 75歳頃〜
  最晩年、老いてなお創意勉励を怠らない肉筆画家

というものでした。なにしろ70年に及ぼうかという画家人生を送った北斎は、上の構成から見ても想像がつくように、一つの表現にとどまることなく新たなステージへと上り詰めていく姿が見てとれました。集められた作品は、日本国内はもとより、大英博物館、ベルギー王立美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館ほか多数の欧米の美術館から出品されています。作品の種類は肉筆画・版画・版本の各分野から選ばれた約500点ですが、展示替えがありますので、一度に見られる作品数はおよそ300点くらいではないかと思います。

会場内が混雑していたことは、すでに述べたとおりです。第1期「春朗(しゅんろう)期」は、その混んだ流れに乗ってスイスイと見てしまいました。第2期「宗理(そうり)期」では、昨年の「RIMPA展」で似た絵柄の作品を見たことがあったため解説を読み、この時期は俵屋宗理を名乗っていたんだ、と納得しました。でも、その展覧会のイメージだけにとどまっていないところが北斎らしいところというべきか、時代劇など見ているとときどき出てくるあの夜鷹を描いた作品をみつけたりもしました(《夜鷹図》)。このセクションは美人図がけっこうあったと記憶しています。第3期「葛飾北斎期」は、第1期ほどではないにせよ、自然な流れで見てしまいました。

第4期「戴斗(たいと)期」では、いよいよ『北斎漫画』が登場します。このセクションは展示されている点数そのものは多くないのですが、背伸びしたり、人の列の隙間からのぞき込んだりして、できるだけ丁寧に見たつもりです。ただ、『北斎漫画』は14編まであるのでしょうか、それぞれ1頁しか展示できません。もっと知りたければ復刻版が比較的容易に入手できるようですので、そちらを見なくてはなりません。いつかは、そうしてみたいと思いながら、このセクションを見終えました。第5期「「為一(いいつ)期」では、有名な『富岳三十六景』が登場します。そのうち、《凱風快晴》は刷りの異なるいくつかのヴァージョンを見ることができて楽しめました。このセクションでは、もうひとつ『百物語』を描いた作品群を興味津々で見ました。あの世から迷い出た《さらやしき》とか《お岩さん》など、恐いという前に、そこにたっぷり込められたユーモアに思わず笑みがこぼれようというもの。第6期「「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)期」は、老いてなお旺盛な創作のエネルギーが湧いてくる(残っているなどという生やさしいものではありませんでした)北斎にあらためて感嘆しながら見てきました。

もっと空いている時間帯に行けたらなお良かったのですが、こればかりは仕方ありません。でも、行って良かった展覧会でした。
【2005年11月27日】


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