第70回 : フリーダ・カーロとその時代展(ザ・ミュージアム)

今回ご紹介する展覧会は、入館料が一般(当日)で1,200円で、休館日はありません。 でも、会期終了がなんと9月7日(日)に迫っているのです! 本展は「メキシコの女性シュルレアリストたち」というサブタイトルをもち、20世紀のメキシコで活躍した5人の画家と2人の写真家をとりあげ、それぞれの作品を展示しています。画家の作品は約80点、写真家のそれが約50点となっていました。

とりあげられた作家たちをご紹介しておきましょう。

  マリア・イスキルド(1902〜1953) 画家
  フリーダ・カーロ(1907〜1954)   画家
  レメディオス・バロ(1908〜1963)  画家
  レオノーラ・キャリントン(1917〜)  画家
  アリス・ラオン(1904〜1987)    画家
  ローラ・アルバレス・ブラボ(1905〜1993)  写真家
  カティ・オルナ(1912〜2000)    写真家


会場の構成も上に上げた作家の順、つまり、まず画家と写真家を分けて、その中は生まれた年の早い人の順に作品を紹介してあります。20世紀のメキシコでは、10年代に革命があり、社会的に不安定な時期が20年代はじめころまで続いたようです。しかし、落ち着きが出てくると、外国からの芸術家や知識人をも惹きつける場所へとなっていきました。そして今回の展覧会に見られるようにシュールな領域を扱う作品が生みだされるようになっていったというわけですね。

イスキルドやカーロはメキシコ的な強烈な色彩のイメージの作品を描きました。メキシコ以外の土地からやってきた画家としては、キャリントンが1941年にイギリスから、バロが42年にスペインから(亡命)やってきました。またアリス・ラオンはシュルレアリストの夫とオーストラリアからやってきて、ここで画家になりました。メキシコ以外の土地からやってきた画家たちのほうが、ややリファインされた画面になっていたと思います。

写真家ブラボは、きわだったシュルレアリストではないように見受けられますが、カーロを撮ったいい写真を何枚も残しています。一方、同じ写真家のオルナは、かなりシュールな写真を残しています。

本展は、6歳でポリオを患い、18歳で事故にあって瀕死の重傷を負ったフリーダ・カーロが、その経歴を反映した作品が展示されていることもあってか、目立った存在といえます。でも、作家それぞれの個性がありますから、虚心坦懐に見ていくのがいいと思います。以下に印象に残った作品をいくつか挙げておくことにします。

マリア・イスキエルドの《嘆きの聖母の祭壇》(1947年、油彩/カンヴァス)や《嘆きの聖母》
(1947年、油彩/カンヴァス)などを見ていると、ハプスブルク家はなるほどメキシコも支配したのだったなと思ってしまいました。フリーダ・カーロの《宇宙、大地(メキシコ)、ディエゴ、私、ショロトル神の愛の抱擁》(1949年、油彩/メゾナイト)はメキシコの神のもとにカーロが夫のディエゴをまるで子供のように抱き、太陽と月が輝いているといった(説明は、これでも不完全です。ごめんなさい)きわめてシュールな作品です。アリス・ラオンの《フリーダ・カーロのバラード》(1956年、油彩/カンヴァス)は、青の背景にグリーン系統に白っぽい色がまじった面白いかたちが浮かび上がっています。ただし仔細に見ようとすると、けっこう細かい絵があってたいへんだろうと思います。独特の雰囲気をもった作品です。ほかの作家にも、興味深く見られる作品がありますから、今週末(6日と7日)、時間と関心がおありのようなら、ご覧になるといいと思います。
【2003年9月4日】


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