第62回 : 近藤竜男 ― ニューヨーク東京1955〜2001(練馬区立美術館)

毎年この美術館で開催されているシリーズで「ねりまの美術」というのがあります。練馬区にゆかりの作家をとりあげるのですが、このシリーズに出かけたのは、たしか初めてだと思います。・・・とまあ、これはどうでもよい話ですが、8月24日(土)からスタートしている本展は、10月14日(月・祝)までが会期。休館日は毎週月曜日(9月23日、10月14日は開館し、翌火曜日が休館となります)。観覧料は一飯が500円也です。そういえば練馬区立美術館では、さいきんいくつかの変更がありました。その一つは開館時間です。従来、午前9時から午後5時までだったところが、午前10時から午後6時までと変更になりました。もう一つは休館日で、従来毎週火曜日だった(これって結構めずらしかったのです)のが、よくあるパターンで毎週月曜日になりました。くわしくは練馬区立美術館のHPをご覧ください。

観覧料(とこの美術館ではいいます)を払うと、本展の「ひとくちメモ」なるものを渡されましたが、とりあえずバッグの中に仕舞いこんで展示室をひとつひとつ見て回りました。作品の横に解説文がついているわけでもなく、音声ガイドが用意されているわけでもありませんから、気になる作品の前では自分でじっくり見るほかありません。

1933年生まれの近藤竜男の若いころ(具体的には東京芸大在学中から1961年に渡米する以前)の作品が「展示室1」で見られます。すでに抽象的な作品をつぎつぎと世に問うていたことがわかります。カンヴァスに油彩で描きつけるというのもありますが、石膏をカンヴァスに塗ったり、さらによく見ると金属が貼り付けられていたりしていて、近寄ったり離れたりして睨めっこしてきました。《作品U》(1960年)[← これって、私の記憶違いでなければ同名異作といったらよいのか、2つの作品があったと思います]の一つは、何やら飛行物体か鳥の影に似たかたちが見て取れました。やや横長のカンヴァスの中央より少し上にあり、ちょっと傾いて描かれているので、なおそう見えたのかもしれません。どこかに動いていきそうなイメージを与えられました。

2階に移動し「展示室2」へ。ニューヨークへ渡った後の作品が展示されています。渡米後はアルバイトで生計を立てながら絵を制作していたようです。制作に当てる時間的制約もあったのでしょう、小さめのカンヴァスをいくつか(時にはいくつも)繋ぎ合わせたような作品もありました(ただ、ちょっと関心をもてる段階までいけませんでしたけれど)。むしろ、大きな縦長の画面の真ん中に縦一本の線が張られ、そこに繭玉のような形をしたモノがぶら下がっている作品がいくつかありました。その絵画の中心より下方の箇所には、もうひとつ画面に直接繭玉のような絵が描かれています。遠くから見ると「これは何だ?」と気になり、近づいてしまいました。ただインパクトの強さからいうと、今一歩でしょうか。

「展示室3」に入り、左手に身体をひねった瞬間「あっ!」と思いました。この作家は、やがて四角い画面に対角線をひく構図をもった作品を数多く産み出すようになっていったようです。この展示室にはそれらが多く展示され、身体をひねって見えたものは、これらの作品が複数。一瞬、対角線がデザインされた絵画を鏡に映して見せられているかのような錯覚に陥ったのでした。で、そこはすぐに現実に戻ったわけですが、そうはいってもこうした眺めは私にとって初めて体験するもので、とても心地よかったのです。

「対角線」の作品に概ね共通していたと思えることは、画面の地の色と対角線は同系色で、地の色はグラデュエーションによる変化がみられ、同時に対角線もグラデュエーションが施されているように思えることでした。ところが、あとで「ひとくちメモ」を読んでビックリしたのは、対角線の色は背景の色の変化によって、色が変わるように見えているのだと知ったときでした。また、ひとつひとつを仔細に見ていくと、対角線が一本の直線で描かれているもの、複数の直線で描かれているもの、楕円形で描かれているのもとさまざまでした。これらの中から敢えて一つだけ選ぶとするならば、1978年制作の《Three Diagonal Stripes Blue Painting 78-2》。一生懸命見入ってしまいました。
【2002年9月17日】


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