第59回 : マグリット展 〜不思議空間へ〜 (ザ・ミュージアム)

渋谷のザ・ミュージアムで8月25日(日)までを会期として、この展覧会が開催されています。会期中無休で、毎週金・土曜日は21:00まで開館(入館は20:30まで)。入館料は一般1200円です。主催者によれば、本展は、1998年にルネ・マグリット(1898〜1967)の生誕100年を記念して大回顧展を開催した、ベルギー王立美術館の全面的な協力を得て開催したものだといいます。今回は、先の王立美術館が所蔵するコレクションを中心にして、日本初公開作品52点を含む、油彩、グワッシュなど総計約90点の作品で構成されています。

私自身のマグリット体験はといえば、昨年伊勢丹美術館で開かれた「ベルギーの巨匠5人展」で見た10点が記憶に新しいところですが、ほかに強烈に印象に残っている作品は、と自問しても思い浮かびません。今回見た90点をフルコースにたとえると、昨年の10点は前菜だけ食したようなものだと思いました。全部通して見終えた後、なんともいえない満足感を抱いたのでした。

会場の構成は、特に章立てやコーナー分けはせずに、だいたいのところ制作年代順に作品が展示されていました。

ここで参考までに、今回展示された作品ばかりとは限りませんが、マグリットの画像を集めたHPを挙げておきましょう。

   CFGA - Rene Magritte

私が興味を惹かれた作品を順不同でいくつか挙げてみることにします。

   @《アルンハイムの領地》(1962年 油彩/キャンバス ベルギー王立美術館)
   A《白紙委任状》(1965年 油彩/キャンバス ワシントン・ナショナル・ギャラリー)
   B《光の帝国》(1961年 油彩/キャンバス 個人蔵)

@は他のヴァージョンもありますが、眼前に広がる山の姿が鳥のそれに似ているのです。画面の下方には鳥の卵もあったりして、さすがにこういう時は「意味」を少しばかり考え込んでしまいます。
Aは先のHPにある<Magritte 2>の最下段にある《The Blanc Check》です。この作品の中には、馬に乗った女性が森の樹木の間を通り抜けて進んでいくところが描かれています。しかし、だまし絵のように、馬の体や馬上の女性が樹木に隠れたり、その逆に馬や女性の奥にあるべき樹木などの位置関係が、意識的にあべこべに描かれている、そんな作品です。マグリットは「目に見えるものが見えないこともある」「馬上の女性は樹木を隠し、樹木は馬上の女性を隠す。だが、私たちの思考は、見えるものと見えないものの両方を認める」と描いているそうです。
B目からうろこが落ちるとはこの作品を見て思ったことでした。空は日中のそれ、家の周りには街灯などが灯り夜の景色。現実にはなくとも、イメージの世界では自由にこんなことができるのですね。しかも、不思議な魅力が漂っていました。

ここでは3つの作品を挙げるにとどめますが、実は、作品を一つ一つみるごとに自分の中にマグリットに対する興味が高まっていることに気付いていました。できれば会期中にもう一度足を運びたい企画展です。
【2002年7月21日】


トップページへ
展覧会の絵へ
前のページへ
次のページへ