第56回 : ミロ展(大丸ミュージアム・東京)

去る5月2日にスタートしたばかりの「ミロ展」に出かけてきました。会期は5月21日(火)までで、会期中無休です。入場料は一般900円。

本展は、1975年に出版されたミロの挿絵本『太陽の賛歌(Cantic del sol)』に収められた版画をはじめ、油彩、アクリル、彫刻など約80点の作品群が展示されています。それらの作品を見ていくと、1960年代後半から1970年代後半にかけてのもので占められていました。ミロは、私の好きな画家の一人です。抽象的な絵画の中に、どこか微笑んでしまうようなユーモアをたっぷりとたたえた作品が多いように思いますから。そうした作品に接したくてでかけたのですが、見終わってみると「何か」が違いました。そう、いまひとつ納得いかないのです。普段は感覚的に見て、「好きだ」「嫌いだ」と言ってしまう私ですが、今回は会場を去る前に本を1冊求め、その理由を考えてみることにしました。その図書とは『MIRO ミロ』(新潮美術文庫 48 1974 93p)です。

まずは今回の展覧会です。最初の方で《太陽の賛歌》(1975年)を見ました。たった4種のハッキリした色を使って、極端にシンプルな構図をもったこの作品には驚きました。横長の長方形の<地>に黒と青、太陽と思しき”丸”は楕円形に似て、やや横に引き伸ばされて赤と橙の系統の色といえばいいでしょうか。これだけシンプルだと、私は、少なくとも見た瞬間には拒絶反応を示してしまいます。やはり、どこかに何の形かを見て分かりたいという気持ちが働いているのかもしれません。

他の作品はどうだったか? というと《太陽の賛歌》ほどではないのですが、「女」「鳥」「星」「月」などが描かれるとき、やはりえらく単純化されています。それは、以前ミロを見て面白いと感じたとき以上に、という意味においてです。もう一つ、たとえば<地>の色ですが、私は、よりソフトな色に惹かれていたのだと思います。むろん、ソフトな色使いの作品もあるのですが、イメージして出かけたよりは少なかったという事情もあるのでしょう。

実際、購入した図書で作品を見ていくと、私が言ったイメージが、少なくとも自分自身では当て嵌まっていると思えるのです(この図書は1974年出版で、今回の展覧会で扱っている時期の作品はほとんど掲載されていません)。しかしその一方で、時間が少し経過して、いまこうして感想をまとめて書く段になって、改めて《太陽の賛歌》(1975年)の絵葉書を眺めてみると、太陽のかたちなど実に味があって興味深いです。シンプルで抽象度の高い作品を見るときは、いつも以上にゆっくりと時間をかけて見る必要があるということでしょうか。

補足しておきますが、ミロに関連して、1960年代後半から1970年代の作品を集めているサイトを見つけました(← こちらです)。こちらを見る限りは、やはり私の好みのミロなのですが・・・。

はてさて、困ったもんです(考え過ぎないようにしなきゃ)。
【2002年5月4日】


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