第45回 : 近代日本美術史・再読 Part 1(神奈川県立近代美術館)

神奈川県立近代美術館先日、初めて神奈川県立近代美術館に行ってきました。鎌倉駅から歩くのですね。行ってみると、意外にこじんまりしているのですね。なにせ、近代日本美術をテーマにした展覧会に足を運ぶと、この美術館から作品を借り出していることが多い印象をもっていましたので、もう少し規模の大きな美術館なのかなと想像していたのです。美術館活動は、必ずしも館の大きさで決まるわけではない、ということでしょうか。はじめにガツンと一発、自分の軽率さを思い知らされたような気がしました・・・。

今回行った展覧会は、標題にあるとおり「Part 1」。当然「Part 2」もあれば、姉妹編として「近代日本版画史・再読」も同館別館で、後日開催されます。そのあたりを含めて、まずは会期等をご案内しましょう。会期は、次のとおりです。
    近代日本美術史・再読 Part 1    2001年9月11日(火)〜11月25日(日)
    近代日本美術史・再読 Part 2    2001年11月29日(木)〜2002年1月27日(日)
    近代日本版画史・再読         2001年11月29日(木)〜2002年1月27日(日)

休館日は毎週月曜日(ただし12月24日と来年1月14日は開館)と12月25日、12月29日〜1月3日と1月15日です。入場料は「美術史・再読」が一般500円、「版画史」は一般250円となっています。なお、上の写真は本館で別館は少し離れた所にあります。

会場に入って美術館のあいさつを読んでみると、ここは「古くて小さな美術館」ですが「2年後には、葉山の海辺に新しい美術館を新設します。新旧一体となって、21世紀の美術館活動を広範におこなえる見込みがたちました」と書いてあります。うーん、素晴らしいですね。「この近い将来に備えて、収蔵品の最良の展示を工夫するこころみの、その第一歩」のつもりで、この展覧会を企画したというのです。「再読」というコトバは、読書にたとえた言い方で、あるいは「再会」と言い換えても悪くないでしょう。同じ作品を、別のときに2度、3度と見ることによって、それ以前には気づかない点が見えてくることがあります。そうした発見を、見る側に期待してのネーミングであるようです。今回のPart 1は、明治・大正・昭和戦前戦中期の油絵と日本画、画家でいえば高橋由一から松本俊介までの約90点が展示されています。

萬鉄五郎の《裸婦》(1913年)、古賀春江の《窓外の化粧》(1930年)、松本俊介の《立てる像》(1942年)など、これまで何回となく見てきた作品の前に立つと、なぜかほっとした気持ちになれるのですから不思議です。どれも個性は違いますが、好きな作品なのでしょう。古賀の作品は「川端康成氏寄贈」と書かれていましたが、初めて知りました。よその館に貸し出した時は「神奈川県立近代美術館蔵」と表示されるのが精一杯でしょうから仕方ありませんけどね。ほかにも、別の美術館に貸し出されたときに見た作品が、いくつかありました。また鎌倉まで来たせいか、高橋由一の《江の島図》(1876−1877年)、黒田清輝の《逗子五景》(1898年頃)といった土地を描いた作品の前では、少し長い時間立ち止まって見てしまいました。

年代順に展示する方法がとられていましたが、それ以外には、これといったひねりは利かせていません。そう、主催者あいさつの中には「作品1点ずつの魅力に静かにひたっていただくのもよく、作品の描かれた時代を見つめなおしていただくのもよく」とあって、見方は私たちに任されているのでした。入場料も手ごろですから、近くに行ったときにでも寄ってみてはいかがでしょうか?
【2001年9月26日】


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