第29回 : ジョルジュ・ルオー展(出光美術館)

東京の出光美術館で、8月19日(土)〜9月24日(日)までの会期で「ジョルジュ・ルオー展」が開かれています(毎週月曜休館)。入館料も一般500円 \(^o^)/ いいですね。ちなみに検索サイトで「出光美術館」を探してみたら、なんと東京、大阪、門司の三箇所にあるのですね(所在等についての情報は、こちらへ)。くれぐれも行き先を間違わないでくださいね(〜♪有楽町で逢いましょう♪〜)←わかってくださる方、感謝m(__)m

今回の展覧会は、出光美術館が所蔵しているルオー作品で構成されています。油彩、版画などあわせて約100点ほどになります。そのうち、版画集『ミセレーレ』やその他一部の作品は、会期の前半・後半で展示替えがあるようです。大雑把に言えば年代順に作品が並んでいますが、展示室に入る直前の展示スペースに、連作『受難』から、「出品目録」にない8点の絵画が選ばれて展示されています。

ルオーの個展を見るのは今回で4回目になりますが、正直に言うと、私にとっては苦手な作家の一人です。
初めて見たのは1970年代の前半、大学時代で、たしか銀座のどこかの画廊に行きました。ある美術史の先生が「マティスは滅びてもルオーは残る」から(この発言の真意は、私は残念ながら理解できていません)、見ておくようにということだったと思います。その時は、暗〜い画面だったなという記憶が辛うじて残っています。2回目は1998年3月に小田急美術館で行なわれた「ルオー展」、3回目は同年12月に安田火災東郷青児美術館で行なわれた「ルオー回顧展」。この年は2回見たわけですが、娼婦やサーカスのピエロなどを書いた作品を多く展示した、小田急美術館の方が、私には強烈でした。個展意外では、東京駅近くのブリヂストン美術館に常設展示されている『郊外のキリスト』というのが、数回見ているせいか、ふっと頭に浮かびます(「どんな絵?」という方、こちらへどうぞ)。

さて、今回の「ジョルジュ・ルオー展」の話に進みましょう(お待たせしました m(__)m)。
「曲馬団の娘」(1905年頃)「娼婦(習作)」(1906年頃))「白い靴下の道化師」(1912年)などの初期の絵画も展示されています。次に1920年代から1930年代前半の中期の油彩画は、今回じっくり見ましたが、画面から透きとおった、明るい色彩が見て取れます。解説を読んでみると、この時期のマティスは、絵具を削り取るスクレイパーという道具を使っていたのです。そして薄く削り取られた絵具層が、いく層にも積み重なっているのが特徴だというのです。なるほど、この技法は一つの工程から次の工程に進むまでのあいだに1週間ほどカンヴァスを放置しておくようで、完成までに相当の時間を要するのですね。私は今回、これらの作品をもっとも楽しみました。

客観的にみれば、今回の目玉といえるのは、連作『受難』より24点を選んで展示された絵画と、同じく連作『ミセレーレ』から12〜13点ほど選ばれた版画の両者でしょう。1935年の『受難』以後、ルオーは制作をせかされるようになり、以前のように時間をたっぷりかけることができなくなりました。そこで、絵具を重ねて塗って、カンヴァスが立体的に盛り上がる感じになり、明るい色彩からくすんだ色彩に変っていったようです。さらに(というか、こちらの方が時間的には先なのかもしれません)、助言者の一人が、いつまでも娼婦や道化師を取り上げて描くことをたしなめたらしいです。ルオー自身も考えるところがあったらしく、宗教的題材を取り上げたこれらの連作に力を注いだようです。こちらを「凄い!」と言ってご覧になる方も多いだろうなと想像しました。私にとっては、作品に付けられているタイトルと画面をうまく結びつけることができませんから、その分、難解に感じてしまうわけです(-_-;)

私にとっては、中期の絵画から、ルオーの明るい色彩という一面を見出すことができた、いい展覧会でした。
【2000年8月27日記】

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