第10回 : ハーバード大学コレクション展(ザ・ミュージアム)

この夏、東急のBunkamuraメンバーズクラブに入会しました。一般会員とザ・ミュージアムオプショナルメンバーの2種類が用意されているのですが、私は後者を選びました。ここ数年、ザ・ミュージアムに行く機会が年4回前後になっていましたから、元は取れる計算になります。手続きを済ませると仮の会員証と書類一式、くわえて現在行なわれている展覧会の招待券をもらいました。

その足でザ・ミュージアムに直行し「ハーバード大学コレクション展」を見ました。この展覧会には"モダンアートの100年"というサブタイトルが付けられています。展示された作品は印象派から現代まで、約70作家の110点ほどです。会期は1999年9月26日(日)までで会期中は無休です。

作品はほぼ年代順に展示されていたように思います。
モネ、ドガ、セザンヌ、ルノワールあたりが、ざっと100年前の作品群です。見に行く私たちへのサービスかなとも考えたのですが、そうとばかりは言えないようです。たとえば、ルノワールの『帽子屋にて』(1878年)。3人の女性が画面に描かれているのですが、右端の一人は顔がはっきりと描かれていないばかりか、むしろ刷毛でグシャグシャと上下に塗りつぶされたような形跡がありますし、中央にいる女性の左肩のあたりはカンヴァスそのものでしょうか、白い丸になっています。考えてみると、なんと大胆なという思いに駆られます。単純に、印象派は目に優しい絵画だというようなイメージを持っていた私は、むしろそれ以前のアカデミーの絵画を破壊する一面を思い起こし、さらに妥協をせずに一人一人の画家が個性を伸ばしていったこの時代の画家たちの偉大さを、あらためて思い知らされた気がしました。

年代的には、ピカソ、カンディンスキー、ノルデ、ミロ、ココシュカ、クレーなどが次に続きます。これらの名を見てもわかるでしょうが、20世紀初頭からあとの美術を引っ張ったビッグネームが続きます。さらにエルンスト、レジェ、ボナール、ブラック、マティスなども名を連ねます。そしてマーク・ロスコ、ファイニンガー、ウォーホル、ラウシェンバーグ、ヨーゼフ・ボイスなどが登場します。

今回の展覧会を見ると、この100年の変遷といっても、なにかゆっくりと動いて今日に至ったような気さえします(実際は、そんなことはないのでしょうが)。たぶん、印象派が果たした20世紀への橋渡しの役目がインプットされるように、作品が選ばれ解説が付けられたように思われること。もう一つ、今世紀の前半までの有名な作家たちの作品群が全体の相当の比率を占めていたようで、そのあたりの流れをゆっくりと見られたように思えるのです。でも逆にいうと、戦後の作品とそれ以前の作品とのつながりや断絶が少々わかりにくく感じましたが、これは私だけの問題かもしれません。

今回印象に残った一枚の絵は、カンディンスキーの『おかしな音』(1929年)でした。
【1999年8月25日記】


トップページへ
展覧会の絵へ
前のページへ
次のページへ