第5回 : パリ市近代美術館展(安田火災東郷青児美術館)

7月5日、安田火災海上東郷青児美術館で行なわれている「パリ市近代美術館展」へ行きました。この美術館の名は印象派前後の企画展を催すときに、ときおり見かけたことがありました。そこからコレクションが80点ほど来ると知って楽しみにしていました(会期は8月15日<日>まで。月曜日休館)。
会場に着いたのが午後4時過ぎ、閉館間際の1時間弱を例によって音声ガイドを聞きながら見て回りました。

会場の展示は次のようにコーナー分けされていました。

第一章:ピカソとフォーブ 20世紀初頭におけるモダニズムの諸相 [13点]
第二章:キュービズムの多面性[16点]
第三章:両大戦間の非具象美術[3点]
第四章:清流に属さない巨匠たち[18点]
第五章:エコール・ド・パリ[18点]
第六章:アンフォルメルと叙情的抽象に対峙するレアリズム[8点]

第一章から第二章までで約30点、フォーブからキュービズムまでの作品が要領よく展示されています。第三章を挟んで、第四章と第五章が続きます。あとの2章は、昨年の1月に大丸ミュージアムで開催された「モディリアーニとその時代」展を思い出させました。ちなみにその展覧会は、モディリアーニ、ユトリロ、その母親のヴァラドン、スーチン、キスリング、ドラン、ヴランマンクなどの作品がバランスよく展示されていたのです。今回も完全に同様というわけではないのですが、やはりうまく展示されています。第六章は戦後の作品になりますから、趣が異なってきます。フランシス・グリュベの具象の作品『赤いチョッキの裸婦』などは、どう言ったらいいかか、作品からブルジョア的な雰囲気を廃して、深読みすれば人間の生き方と美術のあり方を結びつけて模索しているかのようにも見えました。

印象に残った絵をいくつか挙げてみましょう。

◆パブロ・ピカソ『招魂(カサヘマスの埋葬)』(1901年頃)。青の時代の一作。縦長の画面の下半分に、一人の人間を囲んで8人の人間が泣いている(ように見えます)。死を悼んでいるのですね。画面の上半分には、裸体の人間や馬などが描かれていて、下半分とは対照的に見えます。不思議な落ち着きをもった絵でした。
ロベール・ドローネー『エッフェル塔』(1926年)。これも縦長の作品で、エッフェル塔の斜め上から地上を見下ろす構図になっています。色使いは、黄色、オレンジ、緑が使われ、キュービズムといいながらもカクカクと角張った四画形の組み合わせではありません。もっと柔らかな曲線が使われていて、四角形をひきたたせているようにすら見えます。
ラウル・デュフィ『バラ色の人生』(1931年)。完成までに30年かかったという絵で、画面全体にいろいろなピンクが支配しています。絵葉書を見ると「このピンクは違う! もっと温かみがあって上品なピンクなのに」と言いたくなります。たまにこんな作品に会えるのも悪くないと思いました。



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