休日の山歩き 18 八ヶ岳 Yatsugatake
[八ヶ岳] 美濃戸から南八ヶ岳周回
阿弥陀岳(2805m)、赤岳(2899m)、横岳(2829m)、硫黄岳(2760m)
2009年8月15日(土)、16日(日)
横岳山頂から赤岳、阿弥陀岳 トップページ
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横岳山頂から赤岳(左)、阿弥陀岳(右)を望む。その後ろに権現岳。
背後に南アルプスの北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳が遠望される。
右下に行者小屋。

【夏本番、八ヶ岳へ】
関東甲信地方の梅雨明け後も、全国的に不順な天気が続いたが、8月中旬になりようやく夏らしい天気になってきたので、お盆休みの時期に八ヶ岳を目指すことにした。今回は、蓼科に職場の同僚の別荘があるので、そこに前泊させてもらうことにした。
金曜日の午後、車で東京を出発して中央道に入る。お盆の帰省渋滞は午前中が中心だったようで、下り車線は混雑もなく、反対車線が複数箇所で渋滞しているのを尻目に見ながら順調に走行して、諏訪南ICで下りて八ヶ岳山麓を北に走り抜ける。高原の空気は東京より爽やかだ。天気は晴れだが、八ヶ岳の山並みの上の方に雲がかかっている。送られた地図を頼りに、白樺湖と大門峠を越え、目指す別荘に無事たどり着き、同僚と奥様に迎えられ、お酒を酌み交わしながら楽しい一晩を過ごした。

【美濃戸口から行者小屋へ】
翌土曜日の朝、天気は雲がやや多い。同僚が私の車の助手席に乗り、奥様の車が続き、登山口である美濃戸口まで案内してくれた。美濃戸口駐車場の料金徴収係の男性に、この先の美濃戸まで車で行けるかと聞いたら、道が悪いから車高の低い車や良い車は行かない方が良いと笑いながら答えた。午前9時20分、ちょうど路線バスが到着する中、同僚・奥様と別れ、八ヶ岳に向けて歩き始めた。道は川を渡った後は平坦になり、確かに凸凹もあるが、普通の乗用車も慎重な運転で行き来している。
今回の登山の計画は、行者小屋にテントを張り、時間があれば今日中に赤岳と阿弥陀岳を周回して行者小屋に戻り、明日再び赤岳に登り、横岳、硫黄岳を周回して行者小屋に戻り、テントを撤収して下山することだ。バックパックは食料や水3Lなどで約17kgだ。美濃戸にある3軒の営業施設の最初の、やまのこ村で一息入れた。駐車場はほぼ車で埋まり、水は無料、トイレは有料だ。次に川に掛かる木の橋を渡り、車止めの先の美濃戸山荘で北沢・南沢の分岐になり、午前10時半、南沢に入り、登山道になる。樹林帯の急坂を何度か休みながら登る。大汗をかき、汗拭きタオルを何度も絞った。上り下りの登山者は、子供連れの家族を含め、各年齢層に亘っているようだ。途中、右側や前方に山が見える場所があったが、雲に覆われよく見えない。河原と林を繰り返し、午後1時前、ようやく行者小屋に着いた。美濃戸からここまで2時間20分かかり、コースタイムの2時間を超えている。

やまのこ村 美濃戸山荘 行者小屋
やまのこ村 美濃戸山荘 行者小屋

【行者小屋で幕営】
小屋で幕営の申込みをし、水は無料、トイレは浄化槽導入に伴い有料だが、幕営料1000円にトイレ使用料を含む、という説明を受けた。小屋の前のテーブルでは多くの人が憩っており、テント場は半分くらいの入りで、家族用テントを張っている子供連れの男性と挨拶して、沢に近い場所に1人用テントを張り、朝食以来初めてになる食事として菓子パンを口に押し込んだ。今日と明日は、このテントをベースにして、身軽になって八ヶ岳を周回する計画だ。荷物は、折り畳み式のサブパックを開いたものに、水、行動食、雨具、貴重品などを詰め込んだ。朝の出発が遅かったのと、行者小屋までの登りに時間がかかったことから、今日中の赤岳登山は無理だが、阿弥陀岳往復ならできそうだと見当を付けた。

【阿弥陀岳への往復】
私より後に1人用テントを隣に張った若い男性と挨拶し、その人も阿弥陀岳に追いかけるということで、午後1時50分頃、阿弥陀岳に向けて1人出発した。沢沿いに歩いてすぐ、文三郎道との分岐を右に取り、急坂を登る。右に阿弥陀岳の斜面、左に谷を隔てて赤岳の稜線が覆い被さってくるのを見るうち、その稜線の一角、中岳と阿弥陀岳のコルに登り着いた。ここから阿弥陀岳の岩場の登りにかかる。梯子と鎖があり、その上は、四つん這いになり、すなわち三点確保で、浮き石でないか一つ一つ確かめながら、どうにかこうにか登った。高度を上げるにつれ行者小屋もよく見下ろせる。この間、2、3組の登山者と行き違った。ようやく3時過ぎに登り着いた阿弥陀岳山頂は、意外に広く、石仏などがある。360度の素晴らしい展望のはずだが、ややガスがかかっている。赤岳や横岳の山頂付近はガスで見えないが、その間の稜線はよく見える。阿弥陀岳から西に尾根が続いているが、その先の八ヶ岳山麓はよく見えない。
山頂を暫しの時間独占した後、下りにかかったが、岩場は登り以上に険しく歩きにくい。下方を見ながらやや右寄りのルートを選ぶと、足下で石が浮き、それが落石になって深い谷底まで転がっていった。そこには登山道がなく人はいないはずだが、ルートを外れると落石が起こりやすいのだ。途中で、先ほどのテント場の若い男性が登ってきたので、下りの方が怖いから気を付けて、と話しながら分かれた。阿弥陀岳のコルから山頂までのコースタイムは、登り25分、下り20分となっているが、実際にはもっとかかるのではないか(他のガイドブックでは、それぞれ40分、30分となっている)。この男性以外にはもはや誰とも会わず、4時20分頃、行者小屋に戻った。

阿弥陀岳 阿弥陀岳山頂 阿弥陀岳のコル
阿弥陀岳をコルから見上げる 阿弥陀岳山頂 阿弥陀岳のコル 左に行者小屋
阿弥陀岳山頂から赤岳
阿弥陀岳山頂から望む赤岳、横岳、硫黄岳方面

【行者小屋でテント泊】
テントで、汗だくの衣服を着替えてさっぱりし、ゆっくり夕食の支度をし、5時半頃、ビールと共に3分茹でパスタなどを食べていると、雨が降り出した。この頃になっても隣のテントの男性が帰ってこないので、心配になったが、6時頃、元気に帰ってきた。阿弥陀岳の下りにひどく時間がかかったとのこと。見れば大きいパックを背負っている。トレーニングのためそうしたとのことだが、先ほどの険しい岩場の下りで、腹を上にしての三点確保では、バックパックが邪魔になるだろう。
なお、行者小屋のトイレは、プラスチック製の簡易個室トイレを並べたもので、やや臭いがきついが、世話になった。小屋の屋根には太陽電池パネルが敷かれている。
その後、テント場では、早々と寝息を立てる所もあり、賑やかな家族テントもいつしか静まり、学生風の男性2人が遅くまで話し込んでいた。私は芋焼酎を飲みながら翌日のコースを確認したりして、午後8時には寝たが、その後も1時間毎に目が覚めた。雨は断続的に夜半過ぎまで降り続いた。寝袋の中はシャツでもさほど寒くなかったが、最後は防寒着を着込んだ。
翌朝、雨はほぼ止んでいて、稜線上の赤岳天望荘に灯りが点っているのが印象的だ。周りのテントにほとんど動きがないが、4時になったので起床し、ヘッドランプをつけ支度を始めた。朝食はラーメンとコーヒーだ。

行者小屋テント場 文三郎道 文三郎道 赤岳
行者小屋テント場 文三郎道の階段 中岳と阿弥陀岳 文三郎道より 赤岳への岩場

【早朝、赤岳へ】
今日の計画は、文三郎道から赤岳に登り、横岳、硫黄岳を周回して、赤岳鉱泉を経て行者小屋に戻り、テントを撤収して下山することだ。荷物は昨日と同じサブパックに、水は1.5Lにした。隣の若い男性も支度を始めており、やはり同じコースで計画しているが、テントを撤収して背負い、赤岳鉱泉から直接下山するとのことだ。当方の支度が完了し、ヘッドランプも要らない明るさになったので、午前5時15分、またどこかで再会することを期待しつつ分かれ、昨日と同じ方向へ出発した。すぐの分岐で左の文三郎道を取り、金網製の急な階段の道を登る。階段は味気ない気もするが、金網が前後と繋がってない所もあり、一歩一歩確かめながら登る。上空の雲が薄まり青空が広がってきた。昨日と違い山頂付近にガスがなくすっきり見えている。一気に高度を稼ぎ、中岳から赤岳へと登る稜線の一角に登り着いた。
ここから、開けた稜線を赤岳に向け登り始めるが、上から多くの登山者が下りてくる。私と同じ方向の登山者はまだ少なく珍しかったためか、行者小屋から来たのかとか、今日の予定はとか聞かれたりした。南側に南アルプスが見えてきた。急な岩場になり、人が益々増えてきて、双方向で譲り合いながら通るようになり、朝日を直接受ける縦走路に出て、午前7時前、赤岳山頂に着いた。南峰は狭い岩の頂点に三角点と赤嶽神社の祠があり、360度の展望が開け、南は権現岳の先に南アルプスの北岳、甲斐駒、仙丈が並び、その左に富士山が見える。西には阿弥陀岳が圧巻だ。下に行者小屋も見えるが、この時間はまだ朝日が当たっていない。赤岳頂上小屋のある北峰に移ると、これから歩く横岳や硫黄岳の稜線が手に取るようだ。山頂は既に多くの人で賑わっており、幼い子供を伴った家族連れもいる。

赤岳南峰 赤岳南峰 赤岳南峰
赤岳南峰 赤岳南峰 赤嶽神社 赤岳北峰から南峰を望む
赤岳頂上小屋 赤岳天望荘 赤岳天望荘
赤岳頂上小屋 横岳と赤岳天望荘 赤岳と赤岳天望荘

【横岳へ】
山頂の絶景に名残は尽きないが、この先の峰々も呼んでいるので前進することにし、双方向の人が行き交う稜線上の道に踏み出す。急な岩場を下り、赤岳天望荘から麓を見下ろすと行者小屋も朝日の中にあり、私のテントも確認できた。その先は平坦な道になり、地蔵仏のある地蔵の頭では、多くの人が地蔵尾根を登ってくるのが見えた。この辺りから、可憐なコマクサが道端に現れるようになった。
横岳のいくつもの岩峰を越えて歩く。この間、私と前後して歩いている、父親と高校生位の息子と思われる2人連れは、今朝はキレット小屋から縦走してきたとのことで、中央アルプスの山々や、余りよく見えないが北アルプスの山並みについて教えてくれた。横岳主峰(地図では奥ノ院となっており、現地の標識は単に横岳)では、ちょうど岩登りの男女3人が登頂したところで、下から岩の壁を登ってきて、あとは普通に尾根を歩いて帰るとのことだった。横岳山頂からの展望も素晴らしい(このページ冒頭の写真)。横岳の先の険しい岩場を下るとあとはなだらかな稜線歩きで、丸いピークの台座ノ頭は左を巻いて通るが、ここにコマクサの群落があり、赤茶けた石ころの斜面を埋め尽くすように咲いていた。

地蔵の頭 地蔵の頭付近 横岳山頂
地蔵の頭 地蔵の頭を過ぎ、赤岳を望む 横岳山頂
硫黄岳 硫黄岳山荘
硫黄岳を望む 稜線右に硫黄岳山荘 硫黄岳山荘

【硫黄岳へ】
前方の硫黄岳の左側の火口を見下ろしながら硫黄岳山荘に着くと、先ほどのキレット小屋の親子がちょうど出発するところで、親切にしてくれて、今日は赤岳鉱泉から下山するとのことだった。山荘の気持ちのよい広場で休憩することにし、菓子パンでエネルギー補給した。虫がまとわりつく。高山の風雨に耐えている虫だけに払っても離れないので、食べ物と一緒に虫を食べないように気を付けていたが、水筒の広い口から中に入ってしまい、虫を救うために水0.5Lを捨てた。この小屋は水とトイレは有料で、綺麗なトイレだ。
硫黄岳に向かう緩いザレた登り道にはケルンが数個積まれていた。霧が濃いときには道しるべになるのだろう。硫黄岳に着くと、運動場のように広い石ころの山頂で、右側に荒々しい火口が切られていた。

ケルン 硫黄岳山頂 赤岩の頭
ケルン 硫黄岳山頂 赤岩の頭
赤岩の頭から 赤岳鉱泉
赤岩の頭から赤岳、阿弥陀岳方面を望む 赤岳鉱泉

【赤岳鉱泉を経て行者小屋へ】
硫黄岳の先は、先ほどから見えている左側の火口に沿って下ると赤岩の頭で、小高いその頂点から、阿弥陀岳、赤岳、横岳といった峰々を見収め、赤岳からここまで4時間の山頂稜線歩きを終えて、ジグザグの下りにかかる。樹林帯の中をなおもジグザグに下り、川を渡る頃に、大同心などに入る登山道の表示が3箇所ほどあった。先ほどの岩登りの人たちもここら辺から入ったのだろうか。その先で赤岳鉱泉に着き、一息入れた。行者小屋の水をちょうどここで飲み終わったので、無料の水をいただいた。
ここから行者小屋までの最後の周回区間だが、2つの小屋は同じ位の高さかと思っていたのに実は行者小屋の方が標高で140m高くなっていて、途中の中山乗越まで一本道の急坂を登らされた。途中、左手を見上げると横岳の険しい岩峰があり、12時半過ぎ、行者小屋に着いた。素晴らしい八ヶ岳周回を成し遂げたよい気分だが、下山という最後の仕事が待っている。相変わらずテーブルには多くの人がいるが、もはや人と話すこともなく、まばらになったテント場でテントを撤収し、下山の支度を整えた。

行者小屋 行者小屋
行者小屋の背後に横岳、硫黄岳 行者小屋から赤岳を見上げる

【美濃戸口へ下山】
小屋の様子を見収めて、午後1時半過ぎ、重い荷を背負い、美濃戸を目指して下山を開始。すぐに、前の人につられて少し道をそれ、ヘリポートの手前まで沢沿いを歩いてしまったが、そのせいで、沢の水が茶色っぽく臭いがするのに気づいた。行者小屋のトイレの成分が流れ込んでるのだろうか、私の勘違いならよいのだが、と思った。
幼い子供連れの家族などと前後しながら河原や林や急な下りを歩き、美濃戸山荘で汗を拭き、4時10分過ぎ、美濃戸口の駐車場に着いた。駐車の車もまばらだ。車中で汗だくの服を着替えてさっぱりし、ちょうど来た路線バスと前後して4時35分、東京に向け出発。諏訪南ICから中央道に入り、お盆の大渋滞を覚悟したが都県境のトンネルの渋滞は普段の週末と同じかそれ以下で済み、午後9時、自宅に着いた。

コマクサ チシマギキョウ ゴゼンタチバナ アキノキリンソウ
コマクサ チシマギキョウ ゴゼンタチバナ アキノキリンソウ
ミヤマダイコンソウ タカネツメクサとタカネシオガマ ヤマホタルブクロ イブキジャコウソウ
ミヤマダイコンソウ タカネツメクサとタカネシオガマ ヤマホタルブクロ イブキジャコウソウ
【行程】
8/14金
14時都内発⇒中央道(国立府中IC〜諏訪南IC)⇒17時八ヶ岳山麓⇒17時半蓼科別荘地着

8/15土
蓼科別荘地発⇒9:10頃美濃戸口駐車場

9:20美濃戸口→10:00美濃戸・やまのこ村10:28→10:33美濃戸山荘→12:54行者小屋(テント設営)13:49→13:54文三郎道分岐→14:33中岳・阿弥陀のコル14:39→15:05阿弥陀岳山頂15:22→15:44コル→16:15文三郎道分岐→16:22行者小屋(テント泊)

8/16日
行者小屋5:16→5:23文三郎道分岐→6:14稜線出合い6:17→6:55赤岳山頂7:18→7:48赤岳天望荘→7:55地蔵の頭→8:53杣添(そまぞえ)尾根分岐と三叉峰8:57→9:11横岳山頂(奥ノ院)9:18→9:55硫黄岳山荘10:17→10:39硫黄岳山頂10:52→11:05赤岩の頭11:12→12:02赤岳鉱泉12:07→12:37行者小屋(テント撤収)13:38→15:25美濃戸山荘15:35→16:18美濃戸口

16:35美濃戸口駐車場発⇒中央道(諏訪南IC〜八王子IC)⇒21:05自宅着

【高低差及び歩行時間】
8/15土
美濃戸口1480m→行者小屋2350m←→阿弥陀岳2805m
=+1325m−455m(重荷+870m、軽荷±455m)
7時間02分(重荷3時間34分、テント設営55分、軽荷2時間33分)

8/16日
行者小屋2350m→赤岳2899m→赤岳鉱泉2210m→行者小屋2350m→美濃戸口1480m
=+549m−689m+140m−870m
=+549m−1419m(軽荷±549m、重荷−870m)
11時間02分(軽荷7時間21分、テント撤収1時間01分、重荷2時間40分)
地図 八ヶ岳
【参考資料】
山と高原地図「八ヶ岳」(2009年版)、関東の山あるき100選(昭文社1998年)、関東日帰りの山ベスト100(実業之日本社2007年)

2009/8/28整理、8/30修正

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