休日の山歩き 29 富山 Tomisan ・ 伊予ヶ岳 Iyogatake
[房総] 富山(350m)、伊予ヶ岳(337m)
2010年11月3日(水)
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伊予ヶ岳山頂から富山を望む

【房総の山へ】
秋が一気に深まり、ようやく房総の低山歩きにも適した季節になったので、富山(とみさん)と伊予ヶ岳に行く計画を立てた。南房総市富山(とみやま)町の適当な場所に駐車し、富山と伊予ヶ岳に登り、駐車場所まで帰る。片道にバスを利用することも考えられるが、午前8時台に伊予ヶ岳に向かう便か、午後3時台に伊予ヶ岳から帰る便しかなさそうだ(休日ダイヤの場合)。
祝日の朝、予報どおり天気は良い。午前7時過ぎに車で木更津を出発、館山自動車道の君津から先は片側1車線の高速道路だが順調に走り、45分ほどで目的地の「道の駅・富楽里(furari)とみやま」に到着した。まだ駐車する車はまばらだ。

地図

【道の駅富楽里を発ち、富山中学から富山を目指す】
ここから、まず富山を目指す。この道の駅が接している県道を挟んで、富山は南側に、伊予ヶ岳は北側にある。8時20分に道の駅を出発、県道から南に入り、富山(とみやま)中学校を経て富山に行く予定だったが、すぐに、水飲み用のボトル(水筒の水を小分けするもの)を車に忘れたのに気付き、道の駅に反対側から戻ることも考えたが遠回りになったので、自販機でボトル飲料を買うことにし、結局、南側の県道(富山の南側を通る)に出て、東に向かうことになった。この県道の富山中学入口には、無料の駐車場があり、富山登山にも利用できるようになっている。

道の駅・富楽里とみやま 伏姫籠穴 入口 八角形の舞台と洞穴
道の駅・富楽里とみやま 伏姫籠穴 入口 八角形の舞台と洞穴(中央の木の右奥)

【八犬伝ゆかりの地】
ボトル飲料を買い、中学校前から富山に向かうと、まず、南総里見八犬伝にまつわる伏姫籠穴(ふせひめろうけつ)があるので、立ち寄った。立派な門をくぐり、杉木立の中の急な階段を上ると、八角形の木の舞台と石の洞穴(ほらあな)がある。洞穴の中までは入れないが解説があり、「里見義実の娘・伏姫が愛犬八房と山中にこもっていると、体内に八つ子を身ごもったとのお告げがあり、里見家の家臣が姫を救出に来た際に伏姫と八房は死んでしまうが、八つの珠が飛び散り、八犬士となって正義の活躍をする」と。また、「江戸時代の滝沢馬琴の長編小説・南総里見八犬伝の創作上の人物にまつわる伏姫籠穴が、現にあり、いつ誰が造ったのかは謎である」といった解説もある。全体に施設や解説も真新しく綺麗に整備されており、何とも不思議な場所だ。

【富山山頂で】
再び林道を歩き、堰堤工事の先で林道が終点になり、木立の中を丸太の階段などで登る。急な登り20分ほどで稜線上に上がり、そこは富山の南峰と北峰の鞍部だ。まず南峰に行ってみると、福満寺からの登山道と出合い、石の階段で山頂(342m)へ上がると、お堂と電波塔があるが、木立で展望がない。鞍部に戻り北峰の方に進むと、あずま屋から西側が展望できるようになっており「里見八犬士終焉の地」とこれまた創作か現実か謎の表示がある。またここには、東側から車道が登ってきている。さらに進むと古いお社の先が北峰の展望広場になっており、皇太子ご一家の記念植樹と木製の展望台がある。登山者や家族連れが憩っている。
展望台に登ると、先ほどの電波塔のある南峰が太陽の逆光の中にあるほか、360度の大展望だ。正面の西には町並みと岩井海岸、その先に東京湾が広がる。その右に鋸山があり、さらに右は北の鹿野山。鋸山の左あたりに海を隔てて丹沢や富士山があるはずだが、よく見えない。一方、正面の左には館山湾が広がり、沖にうっすらと大島が見える。
下山にかかり、展望広場入口の東側に木立に隠れて、富山山頂(349.5m)の標識と三角点があるのに危うく気付いた。車道出合にある「富山双耳峰見取図」という案内図にも山頂標識は示されておらず、ひどい扱いではないかと思った。

富山南峰 お堂と電波塔 鞍部付近 西側を展望するあずま屋 富山北峰 展望台と記念植樹の碑
富山南峰 お堂と電波塔(左後ろ) 鞍部付近 西側を展望するあずま屋 富山北峰 展望台と記念植樹の碑
富山北峰の展望台から南峰を望む
富山北峰の展望台から南峰を望む。
地平線より上に出ており、南峰の方が高い
かのように見えるが、木が茂っている分の
高さが加わっている。電波塔の基部の下の
地面が山の本当の高さだ。
富山町の町並み 岩井海岸 東京湾
富山町の町並み 岩井海岸 東京湾
北西から北の方向を望む 富山山頂の標識と三角点
北西から北の方向を望む 富山山頂の標識と三角点

【富山から伊予ヶ岳に歩く】
富山からの下山路は、山頂稜線まで達している先ほどの車道で、何と乗用車が1台ここまで上がってきて停まっていた。またここには伊予ヶ岳への方向を示す道標もある。木立の間の車道を下ると、伊予ヶ岳をはじめとする前方の展望が開け、みかん園があり、ちょうどたわわにみかんがなっており、みかん狩り客が出入りしている。この下ってきた道が下の道と出合う部分では、伊予ヶ岳へは北の方向を指示しているが、これに逆らって南へ歩き出すと、程なくまた伊予ヶ岳への方向指示があり、それに従って、農地の間を歩く。
途中、前方に伊予ヶ岳、後方に富山が同時に望める贅沢な地点が数箇所あった。両山とも双耳峰で、伊予ヶ岳の南峰(右側)には岩がそびえ立っている。この道は左右が下る稜線のような形状になって登っており、そのピークに正寿院という寺があり、あとは急に下って県道に出合う。県道を東に進むと、伊予ヶ岳が大きく聳え、山頂に立つ人も確認できるようになる。

富山からの下山路 みかん園 みかん園下に下山 伊予ヶ岳を目指す
富山からの下山路 みかん園と伊予ヶ岳 みかん園下に下山 伊予ヶ岳を目指す
後方に富山 前方に伊予ヶ岳 平群天神社の鳥居
後方に富山(左)、前方に伊予ヶ岳(右)を望みながら歩く  平群天神社の鳥居

【平群天神社から伊予ヶ岳を目指す】
平群(へぐり)小学校を過ぎ、交差点の先に天神社の鳥居があり、伊予ヶ岳の登山口だ。解説板には、「伊予ヶ岳は、山容が高く険しく奇岩がそびえ立つ、南房総の名山で、山名の由来は四国の石鎚山」とのこと。神社の境内には駐車スペースもあり登山にも利用できるようだ。登山道に入ると、偽木製の階段と柵の急坂が続く。さすがに人気のある山で、幼い子連れの家族を含め歩く人が多い。富山への分岐と表示された分岐点を過ぎると、肩の部分に展望台とテーブルがあり、また東から嶺岡中央林道が上ってきている。この先から道が険しくなり、岩場やロープの連続で山頂の南峰に着く。

天神社境内 伊予ヶ岳 南峰 伊予ヶ岳 南峰
天神社境内 上方に伊予ヶ岳の岩峰 伊予ヶ岳山頂 南峰へ 伊予ヶ岳の南峰

【伊予ヶ岳山頂で】
南峰には休憩用テーブルがあり、家族連れなどが憩っている。下から見えたそびえ立つ岩がここの最高点で、安全柵の先端は1人しか立てないが、対座する富山から、直下の町並みや道路まで、すばらしい展望だ(このページ冒頭の写真)。南峰からさらに進むと、小ピークを挟んで、伊予ヶ岳の最高点(336.6m)の北峰に着く。こちらも狭い山頂で、4人位しか立てないが、やはりすばらしい360度の大展望だ。三角点があるほか何もなく、標高を併記した山頂標識と展望案内図も南峰にあるだけだ。混み合っていた山頂北峰だがしばらく静かになったので、こちらで弁当を食べた。

南峰から北峰を望む 北峰から南峰を望む 県道沿いから伊予ヶ岳を見上げる
南峰から北峰を望む 狭い山頂に立つ数人 北峰から南峰を望む テーブルで憩う数人 県道沿いから伊予ヶ岳を見上げる

【伊予ヶ岳から下山】
山頂からの展望を楽しんだ後、下山は、先ほどの分岐点を富山の方向に下りる。まるで富山まで山道続きであるかのような表示だが、そうではない。わずかの下りで県道に出合う。往路の富山からの出合地点より北(西)側で、ここから県道を西に向かって帰る。時刻はちょうど2時で、3時台のバスを待つより歩く方が早い。1時間の単調な歩きで、道の駅に戻った。

【帰路】
天気に恵まれ、両山とも短時間の登りで好展望が得られる楽しい山歩きだった。帰路は海沿いの国道127号を走った。車の流れは良く、君津で4車線になる辺りで渋滞したが、木更津まで1時間10分で帰った。

【富山と伊予ヶ岳を歩くコース取りについて】
富山には福満寺から入る登山路(遊歩道とのこと)があるが、今回は歩かなかった。富山と伊予ヶ岳を結ぶ道は今回歩いたコースが最短だと思う。伊予ヶ岳からの帰りは、午後3時台のバスがタイミングよく利用できれば、岩井駅方面まで楽に帰れる。逆に、朝8時台又は10時台のバスを利用し先に伊予ヶ岳に登ると、このコースでは富山への登りは車も通る林道を歩くことになり、面白くない。(バス時刻は休日の場合)
今回、両方の山で出会った登山者もおり、富山から伊予ヶ岳へは車で移動したようだ。両山とも短い登山コースなので、往復のほか周回コースで登山口の駐車場に戻ることも可能だと思う。

【行程】
7時過ぎ木更津発⇒館山道(木更津南IC→鋸南富山IC)⇒8:05道の駅富楽里とみやま着

登山口へ     31分 8:22道の駅富楽里→8:53県道258号・富山中学入口
富山登山   2時間27分 8:53県道258号・富山中学入口→9:07伏姫籠穴9:26→9:44林道終点→10:01鞍部→10:05富山南峰10:10→10:21富山北峰展望広場・富山山頂10:56→11:02車道→11:20みかん園
富山→伊予ヶ岳  約3km     43分 11:20みかん園→11:45正寿院→11:52県道89号東へ→12:03平群天神社鳥居
伊予ヶ岳登山  1時間59分 12:03平群天神社鳥居→12:08同境内→12:33展望台→12:43伊予ヶ岳山頂(南峰・北峰間8分)13:32→13:38展望台→13:50富山分岐→14:02県道89号
下山口から  約5km  1時間 14:02県道89号西へ→15:02道の駅富楽里
計   6時間40分  

15:40道の駅富楽里とみやま発⇒国道127号⇒16:50木更津着

【参考資料】
関東の山あるき100選(昭文社1998年)

2010/11/7整理 11/14修正

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